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断片の小説

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#純文学

花苗

足を洗い源氏名を捨てる女へ、ささやかな記念で贈った花苗の小鉢に、思いもしない花が咲いた。…

似顔絵

道端で似顔絵を売る男がいた。声をかけられて、予定まで時間を持て余していたから描いてもらっ…

手形

土曜の朝、彼女の娘を迎えに行く。彼女に代わって一日面倒を見る。娘の父親である男と別れて帰…

公園の蛸

遠くに住んでるほうのおじいちゃんは、指が4本しかないと、彼は囁いた。他の子どもたちは帰り…

道案内

老女に道を聞かれた。この国道を直進し、十字路を右に…と教えた。あなたぐらいの孫が事故で死…

タトゥー

初めてのタトゥーを彫りに出かけた彼女は、その帰り道に車に撥ねられて死んだ。通夜も葬式も参…

ひとちがい

食品売り場で、来週発売のウインナーの試食があった。未発売の商品の試食があるのか、と珍しく思って、未発売の商品の試食があるのですね、と言った。店員は、ぜひお試しください、と言った。私は食べた。 上りエレベーターで、乗客が私しかなかったところに、乗り合わせた男がいた。古い知り合いだと思い出し、ああ、どうも、と声をかけた。しかし、よく見ると知らない男だった。彼は、私の顔をちょっと見て、ああ、と会釈した。よく磨かれた革靴だった。雨が続きますね、と私は言った。そうですね、と彼は言った。

複雑骨折

夕飯の支度をしていると電話があった。友人からだった。事故で病院に運ばれ、このまま入院にな…

どこでもいい