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公園の蛸


遠くに住んでるほうのおじいちゃんは、指が4本しかないと、彼は囁いた。他の子どもたちは帰り、残っているのは私たちだけだった。公園の砂場にある、蛸の形をした大きな遊具の、頭部の空洞になっているなかだった。おじいちゃんが寝てる間に撮った、と彼は携帯電話の画面を私に向けた。人差し指がなかった。なぜか左脚ばかり蚊に噛まれて痒かった。
最初に住んだ地域にも、つぎに引っ越した先にも、公園があり、蛸があった。指の欠けた写真を見たのは、どちらの公園だったか思い出せない。
引っ越した先の公園は、幽霊が出るという噂があった。蛸の頭のなかで、死んだ赤ん坊を抱いた女が、赤ん坊の声で泣く。


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