見出し画像

フランク・オー・ゲーリーのマネジメント論

こんにちは。santas代表の宮崎です。
今回は、ハーバード・ビジネス・レビュー2023年7月号に掲載された『建築家フランク・ゲーリーのプロジェクトマネジメント』を拝読して、建築業界に限らず、様々な分野で応用できそうな内容でしたので紹介します。


フランク・オー・ゲーリーとは?

フランク・オー・ゲーリーとは、カナダ出身の建築家で、現在はロサンゼルスを拠点にして世界中で活躍する建築家です。彼の作品は波型鉄板や金網、合板などの工業用素材を使って、複雑で独創的な形態を表現することで知られていて、ビルバオのグッゲンハイム美術館が有名です。
独創的な建築家かと思われがちですが、彼が率いるGehry Partners, LLPは、デザインだけではなく高度なモデリング技術を要した100人以上の専門家が在籍していて、建築業界ではコンピューターモデリングをいち早く取り入れた事務所としても知られています。

記事の概要

本記事では、過去のプロジェクトの経験を踏まえて、プロジェクトマネジメントを行う上での『4つの教訓』を紹介しています。その教訓とは以下の通りです。

  1. 責任を果たすには権限を持たなければならない

  2. 常に「なぜか」を問うべし

  3. シミュレートし、反復し、検証せよ

  4. ゆっくりと考え、素早く動く

ゲーリーは4つの教訓を活かし、プロジェクト・マネジメントに取り組んでいるとのことです。

気付き1:クライアントの要望を徹底的に聞くこと

ゲーリーは抽象的なスケッチと独創的な建物をデザインすることから、アーティスティックな建築家だと思われがちですが、建築業界では多くの専門家がデザインと施工性・コストのバランスを詳細に検討していることは知られていました。しかし、クライアントの要望を徹底的に聞き、本当に達成したいゴールを明確にした上でプロジェクトを進めることは、あまり知られていなかったのではないでしょうか。ゲーリーが『聞くスキル』を身に着けたのは1960年代、結婚生活に問題を抱えてグループセラピーのコースに参加した時だという逸話はとても興味深いですが、ゴールを明確にした上でデザインを始めることが、あの斬新なデザインを実験することが出来る土壌になっているのだろうと思いました。

気付き2:ゴール達成のために組成される『アーティストの組織』

ゲーリーはチームメンバーや外部パートナーへの敬意も重視していると書かれており、その代表的なキーワードが『アーティストの組織』だと思いました。『アーティストの組織』とは、Gehry Partnersが実践しているマネジメント手法で、アーティストの様に以下を重視する姿勢が謳われています。

  • 創造的で自由な発想を重視する

  • 自分の作品に責任を持つ

  • 自分の作品に情熱を持つ

ゲーリーを中心としたチームメンバー全員が、パーパスとも言える組織のあるべき姿を共有することが、デザインー施工まで一貫したクオリティを担保する基準になっているのではないかと思いました。

まとめ

今回は、フランク・オー・ゲーリーのプロジェクトマネジメント論に関する論考を拝読して、私自身が得られた気付きと共に紹介しました。きっと、建築業界に限らず、様々な分野でのマネジメントに活用頂けたら幸いです。

■筆者
宮﨑 敦史 / Atsushi Miyazaki
慶應義塾大学大学院修了後、Speac、日建設計、Arupを経て2022年にsantas Inc.を設立。「クリエイティブ」「マネジメント」をコアスキルとして、主に建築・都市における企画、設計、プロジェクトマネジメント業務に従事。さらに、コミュニティ・エンゲージメント活動、環境建築に関する書籍の出版など、幅広く活動中。様々な専門家と協働し、社会に新しい価値を生み出すことを信念としている。

https://santas-inc.jp/

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?