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邦画の過去名作を履修したいけど参考になる情報がなさすぎたので自分でオールタイム・ランキング的なものを作った話

邦画は名作を探すのが難しい

前回のお話はこちら。以下、前回の序文の写しです。

私は映画ファンを自認するほどは映画を観ているわけではないのですが(今はどちらかというとドラマの方がハマっています)、それでも名作は観ていきたいなという気持ちは人並みにはあります。

そこで映画を探すことになるわけですが、最も困るのが邦画です。ある程度リアルタイムで話題になったな〜とか記憶がある時期はともかく、過去の名作を探す手段がなさすぎていつも困ります。

前回の序文終わり。

邦画入門用のオールタイム・ベストを作りたい

前回、洋画の例として紹介したのが IMDb というレビューサイトのオールタイム・レビュー数ランキングです。つまり、インターネット上で観たことがある人が多い作品順のランキングとなります。

知名度順みたいになるかと思いきや(実際に知名度順なわけですが)、案外よい感じにライトな作品と批評受けのよい雰囲気の作品がバランスよく混在しています。そもそも IMDb がレビューサイトなので、コア映画ファンが使用しているというのがあるのかもしれません。

このようなランキングの邦画版(アニメを含まない邦実写映画)オールタイム・ランキングを作ることが本ポストの目的です。

邦画の名作は「受け継がれていない」。

しかし、邦画でこういったランキングを作ることは難しいのです。前回のポストで紹介したとおり邦画は「名作が受け継がれていない」という深刻な問題があるようで、国内最大手のレビューサイト Filmarks のレビュー数を眺めてもサービス開始後と開始前に深すぎる断絶が見られます。詳しくは前回のポストをご覧ください。

そこで「邦画においては過去の名作は受け継がれていない」という前提にたってランキングを作成することにしました。

Filmarks プレミアムアカウントになろう!

今回も前回に引き続き Filmarks さんのレビュー数を参考にしています。検索にあたって有料版のプレミアムサービスを利用しています。

検索結果をそのまま書くようなことはしませんが、一応有料版の機能を使用して知り得た情報を加工して共有しますが Filmarks さん許してください。Filmarks さんでいろいろ遊んで映画のレビュー数などを眺めると非常に面白いので、ぜひみなさんもプレミアムアカウントになってみてください(罪滅ぼしの宣伝)。

時代ごとの知名度基準を調整して邦画オールタイム・ランキングを作ろう

邦画においては単純にレビュー数順にしてしまうと現代の作品が強すぎることがわかったので、レビュー数に以下のような補正をかけてランキングを作ることにしました。

① 時代区分を設ける
② 時代区分内で上位100位の作品のレビュー数を基準=1とする
③ 各作品のレビュー数を基準値に対する数値=ポイントに変換し、そのポイント順にオールタイム・ランキングとする

考え方としては年代ごとに上位○作品を挙げる形に似ています。ただ、そのまま年代ごとの上位作品を挙げてもあまり面白くないのと「○年代でいうどれくらい有名な作品なの」というのを感覚的にわかるようにしたいという狙いがあります。あくまで「時代による知名度の違いを考慮しつつ、横断して一つのオールタイム・ランキングにしたい」というのが目的です。

ルールだけ書いてもわかりにくいので、実際に作成の過程をお見せしたいと思います。

時代区分

まずは時代区分1ですが、前回のポストで見てきた通り Filmarks のレビュー数はリアルタイムの上映中のレビュー数が大きな割合を占めます。そのため、上映期間を考慮し Filmarks というサービスが開始された2012年の1年前、2011年以降を一つの区分とすることにしました。

現在、当然(?)ながら邦画で最もレビュー数が多い= Filmarks ユーザーに最も観られた作品は、この「2011年以降」の時代区分の作品でズバリ「カメラを止めるな!」です。

先述した Filmarks のプレミアムサービスでは「製作国」「制作年」「Mark!数」で絞り込んで作品を検索することができます。この機能を用いて各時代区分の上位100作品を抽出します。(ただし、アニメと実写を絞り込むことはできないので、アニメと実写については検索後手作業で仕分けしていきます。これが地味に大変)

「2011年以降」という時代区分の100位の邦画のレビュー数を調べたところ、「50,031」でした。つまり、2011年以降の作品については「50,031」を「1」としてポイント化していきます。「カメラを止めるな!」レビュー数は計測時点で「226,219」でしたので、ポイントは「4.5 pt」となります。

時代区分1がちょうど2011年以降だったこともあり、時代区分2は2000-2010年の11年間としました。同じように2000-2010年の上位100位の作品のレビュー数は「20,707」でした。よいですね〜。半分以下まで減っています。受け継がれていなさがなんとなく伝わるでしょうか。

邦画において90年代以前は全て等しく古典

2000年代の基準値を調べ、よい感じに機能しそうです。続いて1990年代に進みましょう!と、Filmarks で絞り込んでみると…。

1990年代の上位100位の作品のレビュー数は…
3,000

断崖絶壁でした。マリアナ海溝も真っ青。

今回の上位100位の作品を基準とする方法は、有名な作品が100作品ないと基準値が著しく低い値になってしまいます。1980年代や1970年代に入ったところで、10年単位では機能しなくなることは予想できましたが、1990年代でもこれだけ落ち込むとは予想外でした。

そのため、一度絞り込みの基準を「1999年以前全て」としたところ、上位100位作品のレビュー数はあまり変わらない「4,179」でした。邦画においては1990年代以前は等しく古典ということですね。

数値としてはなかなか衝撃的な結果でしたが、ただ感覚としてはわかるものもありました。私はちょうど大学生くらいに iPhone=スマートフォンが出た世代で、いわゆる Filmarks などのWebではないアプリサービスのメインボリューム第1世代といえます。

私がリアルタイムで経験しているヒット映画はジブリやドラえもんなどのファミリーアニメ映画を除いておよそ2000年代以降で、それ以前の作品については本企画の理由である邦画は全く過去の名作がわからない現象が発生していました。

たしかに私にとっては邦画は洋画のように「90年代、80年代、と、だんだん馴染みがなくなる…」というグラデーションは存在せず「リアルタイムで経験していない1990年代以前は全て等しく古典」という感覚は理解できます。

というわけで、時代区分を細かく分けることは諦め、今回は「2011年〜現在」「2000年〜2010年」「〜1999年」の3時代区分でランキングを作成することにしました。

邦画オールタイム・ランキング100

早速、作成したランキングです!

いかがでしょうか? 実際に順位が出たときの感想としては、想像以上に「それっぽい」ランキングとなり私としては非常に満足しました。笑

先述したとおり、時代区分補正なしの単純な Filmarks レビュー数では「カメラを止めるな!」が1位なので、それが14位に入っているところが補正度合いを測れる形になります。順位はポイント(pt)順となっており、実際のレビュー数は「○ pt │ ○」と右側に記載してあります。

総評

1位の作品は恥ずかしながら私は全く知らない作品で、通っぽくてえぇやんとなりました(とんでもない作品だったらどうしよう)。ちなみに本ポストのサムネイルはそのまま1位だとネタバレになっちゃうので2位の告白にしました。

また上位は妥当に知名度の高い作品となり、個人的にはレビュー数を基にしているので批評受けは全くせず映画コアファンによるオールタイム・ベストには絶対に現れないだろう(偏見あり)踊る大捜査線や20世紀少年、NANAあたりも入っているのが嬉しいです。一方で、狙い通り黒澤明監督作品群もいい感じに上位に食い込む結果になりました。

2000年代は私は唯一リアルタイムで知っている時代なので(2010年くらい以降はテレビを観なくなったのでどの映画が流行ったとかあまり知らない)、なんとなく当時流行った作品や評価されたが順当に入っているのかわかります。単純に知名度の高い作品と批評受けのよい作品の塩梅が、なかなかよい感じになったのではないでしょうか。

ということは90年代以前もそれなりに当時の有名作品も入っているはずです。実際に黒澤明作品や「犬神家の一族」のようなザ名作だけでなく「時をかける少女」「ぼくらの七日間戦争」「打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?」「学校の怪談」あたりの映画好きに評価されているタイプとはまた違ったタイプっぽそうな作品も入っています。よい感じ。

ランキングを眺めた限りの不具合としては、やはり時代区分の境目である2010年作品や特に差が激しい1990年代後半の作品は有利になっている印象ですね。ここは時代区分を細かくすることでバランスを調整できるかもしれません。とはいえ、1990年代の上位100位が3000台なので傾向として90年代の作品が00年代と同じように観られているということはないはずですが…。

補正の都合上2011年以降の作品は割りを食っているわけですが、それでも全体としては上位100作品中21作品がランクインしました。また、2021年公開の「花束みたいな恋をした」もランクインしています。

時代区分の割合としては以下のようになりました。
① 2011年〜:21作品
② 2000年〜2010年:40作品
③ 〜1999年:39作品
結果としては、やや00年代の作品が有利になってしまった印象です。2011年〜2023年と13年分あるので、90年代後半の作品の有利さも含めて5年刻みに基準を設定するなどすればさらに精度の高いランキングになるかもしれません。

とはいえ100位が邦画史上トップクラスに知名度の高いあの「バトル・ロワイアル」なので、00年代のランクインしている作品は全てバトル・ロワイアルより上と考えるとこれでも良いのかもしれませんが…。それともバトル・ロワイアルが案外全然観られていないのか…。

しかしながら、結果としては個人的に概ね満足できる結果となりました! ざっくりとオールタイムで邦画の観るべき作品が見えてきた気がします。順番に観ていったら、とても楽しそう。

最後までお読みいただきありがとうございました!

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