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名作邦画を見つけるのが難しすぎる問題について考える。Filmarksのレビュー傾向から「語り継がれる名作」を浮かび上がらせよう!という試み

邦画は名作を探すのが難しい

私は映画ファンを自認するほどは映画を観ているわけではないのですが(今はどちらかというとドラマの方がハマっています)、それでも名作は観ていきたいなという気持ちは人並みにはあります。

そこで映画を探すことになるわけですが、最も困るのが邦画です。ある程度リアルタイムで話題になったな〜とか記憶がある時期はともかく、過去の名作を探す手段がなさすぎていつも困ります。

例えば、2023年1月時点でGoogleで「オールタイム・ベスト 邦画」と検索すると、私の環境では1番目にヒットするのは「キネマ旬報 日本映画オールタイムベスト(2009年選出)」です。2009年選出なので当然、2010年以降の映画は登場しません。2010年以降の映画、何が名作かわからないじゃん。

2番目にヒットするのは同じくキネマ旬報の「オールタイム・ベスト100 日本映画編(1999年版)」です。さらに遡ってる…。おわりだ…。

洋画の場合

洋画であればご存知アカデミー賞があったり、IMDbというレビューサイトのレビュー数順(視聴者が多い)に眺めるだけで簡単に過去の名作群を知ることができます。以前に自分用も兼ねて作ってみたIMDbオールタイムレビュー数TOP100が以下です。

作成時に思った以上に順当に名作っぽい映画が並んだことを覚えています。レビュー数順なので知名度順になっちゃうかと思いきや渋い作品も多数上位にランクインしています。1位もインターネット界では妥当感があるとはいえ、典型的なファミリー映画というわけではないショーシャンクですしね。これを1位から順番に観ていない映画を観ていくだけでとても楽しそう。個人的にはレビュー数という指標は私が知りたい結果が表れることが多いので重宝しています。

例えば興行収入という指標は受け手(ユーザー)の評判というよりは当時の上映館数や宣伝費といった作り手の事情の方が与える影響が高いのであまり参考にならないことが多いと感じます。IMDbはインターネットのレビューサイトなので、当然公開から時間が経っている作品のレビュー数が伸び続けるかどうかは時代を超えて愛される必要があるわけです。

また平均評価点(☆4.5とか)に関しては、平均ですから当たり前ですがレビュー数は関係ありません。ですので、どちらかというと「その作品を好きそうな人(ファン)しか観ないような傾向が強い作品」が上位に来ることになりがちです。

ちなみにIMDbは制作年代や製作国で絞り込みも可能なので、同様な方法でピンポイントで気になる作品を探していくことができます。ようは、この邦画版のような一覧をどうにか作りたい!というのが本ポストの目的です。

日本の最大手映画レビューサイト「Filmarks」

IMDbのような映画レビューサイトというと、日本では「Filmarks」が最大手です。Yahoo!映画なども有名ですが、例えば上映中の人気映画で比較すると、以下のようにかなりの差があります。

THE FIRST SLAM DUNK
Filmarks … 50,259
Yahoo!映画 … 8,616
映画.com … 715

今回は基本的には日本国内の映画評の指標としてFilmarksさんを参考にしていきます。

Filmarks で「邦画には語り継がれる名作がない説」を検証する

それではFilmarksを用いてIMDbと同様に評価数ランキングを作ってみたいところですが……実はFilmarksは映画を評価数順にソートしたり絞り込む機能が無料アカウントにはついていません。プレミアムアカウントのみの機能となっています。

私は一応プレミアムアカウントなのですが、有料機能の結果をそのままここに羅列するのは忍びないので、少しぼやけた情報に留めさせてもらいます。ぜひ皆さんもプレミアムアカウントになって色々遊んでみてください。

Filmarks で10万レビュー超えの作品の制作年を比較する

私が調べた2022年12月時点では、Filmarksに10万レビュー(Mark!)を超える映画は224作品ありました。

その224作品をそれぞれ「洋画(海外実写映画)」「邦画(国内実写映画)」「洋アニメ(海外アニメ映画)」「邦アニメ(国内アニメ映画)」に分類し、それぞれどういった作品がランクインしているか検証しました。

今回まず注目したのは Filmarks というサービスが開始されたのは「2012年8月10日」という点です。つまり2012年以降の作品については劇場公開中のレビューが含まれるのに対し、それ以前の作品については純「語り継がれている」レビューとなります。

それでは早速各4分類の10万レビュー数超え作品の内訳を見ていきたいと思います。

洋画(海外実写映画)
10万レビュー超え:全149作品
2012年8月10日以前公開作品:79作品(53%
2012年8月11日以降公開作品:70作品(47%)

邦画(国内実写映画)
10万レビュー超え:全29作品
2012年8月9日以前公開作品:6作品(20%
2012年8月10日以降公開作品:23作品(80%)

邦アニメ(国内アニメ映画)
10万レビュー超え:全26作品
2012年8月9日以前公開作品:17作品(65%
2012年8月10日以降公開作品:10作品(35%)

洋アニメ(海外アニメ映画)
10万レビュー超え:全20作品
2012年8月9日以前公開作品:10作品(50%
2012年8月10日以降公開作品:10作品(50%)

ほぼ企画が出オチ状態ですが、邦画の名作を探す難しさが既に伝わったかと思います。2012年以前の方が少ないという傾向が4分類の中で邦画だけな上に、さらに比率も2:8と圧倒的に差が出てしまいました。

ちなみにこの「2012年8月9日以前公開」6作品のうち3作品は「2012年07月14日」「2012年04月28日」「2011年09月23日」公開の作品で2012年8月10日まで1年以内の作品であり、実質的にはリアルタイムのレビューでない作品は10%と言ったほうがよいかもしれません。

また、最も古い作品で2006年公開の「DEATH NOTE デスノート」となっており、90年代以前の作品は一作品も入っていません。他の区分では、洋画は29作品(19%)、邦アニメは9作品(34%)が90年代以前の作品となっています。

以下、2012年8月9日以前公開のレビュー数が10万を超える邦画6作品です。
・DEATH NOTE デスノート(2006)
・容疑者Xの献身(2008)
・告白(2010)
・モテキ(2011)
・テルマエ・ロマエ(2012)
・ヘルタースケルター(2012)

調べた結果、一瞬にして邦画の「語り継がれる名作」を探す旅が頓挫してしまいました…涙。とりあえず、上の6作品を観ることにします(いうてほぼ全部観たことあるけど)。

ご覧いただいた通り、邦画の名作を調べるのは本当に大変です。例えば邦画の名作と言われてパッと思い浮かぶ黒澤明作品や黄金期の角川映画ですが、Filmarksを眺めると全く受け継がれていないことがわかります。また北野武作品あたりもそうです。これは配信での観づらさなどが関係しているかもしれません。また洋画は比較的古い名作といっても80-90年代くらいなのに対して、黒澤明作品などはさらに古いことも関係しているかもしれません(私は角川映画は詳しくないのでそもそも厳密にいつが黄金期なのか知りませんすみません)。

このようにビッグデータ的・統計的な評判を参考にしようと思っても邦画は90年代以前の名作を探すことができないことがわかりました。現状は少数意見によるお勧め作品を参考にするくらいしか手段がありません。

では、何を参考にすればよいのでしょうか。日本アカデミー賞?雑誌?残念ながら私は映画の雑誌などは全く読んだ経験がないので、パッと何を/誰を参考にすればよいかわかりません。そもそも「オールタイムベスト」で検索してまともな記事が出てこないことが本企画の出発点なのですから。また、これは完全に個人的な好みですが、例えば洋画にしてもアカデミー賞を順番にみたり特定の批評家による選出記事よりも↑で紹介した画像のようなユーザーによる統計ランキングのようなものの方がリアルに面白い作品に出会えるという感覚が私にはあります(リアルタイムに随時更新されますしね)。

しかし、挫けず色々とFilmarksさんを研究して邦画の名作が浮かび上がるアルゴリズムを研究します!乞うご期待!もしくは、なにか他にFilmarks以外の定量的な形で邦画の名作を浮かび上がらせる手段に気づいた方は教えていただければ幸いです。

番外編①2012年以前の作品の「語り継がれる度」を可視化する

番外編です。むしろここからが本番かもしれません。

Filmarksさんで遊ぶと面白いことがわかったので、色々と眺めていました。洋画は特に10万レビュー作品が多いこともあり、次に「2012年(Filmarksサービス開始)以前公開の作品の語り継がれる度を可視化することはできないか」ということに興味が湧きました。

2012年以前公開の作品については、Filmarksサービス開始前ということもあり、全てのレビューが劇場公開時のレビューではないということになります。では、その中で熱量というか「語り継がれている」度に差をつけることはできないか、と考えました。

そこで注目したのは「総レビュー数のうちのコメントレビュー割合」です。Filmarks は Mark という鑑賞済みマークをつける際に、レビューコメントを書くか、もしくはただマークだけとするか選ぶことができます。

「そういえば子どもの頃に観たな〜」と視聴済みマークポチポチする場合は、おそらくはいちいちコメントを書かないのではないかと思います。コメントまで書くレビューは、改めてもう一度観たか、仮に記憶を頼りに書いていたとしても中々鮮明な記憶と作品への思い入れがあるレビューと言えるでしょう。

ちなみに実際に傾向としては、このコメント率は新しい作品の方が高い傾向にあり、古い作品ほど低くなっていきます。レビュー全体の中でリアルタイムに観たレビューの割合が増えるので当たり前ですね。90〜00年代の作品であれば10%程度が平均的です。つまり、コメント率が高い古い作品は、ある程度「映画ファンに評判の新しい視聴者が定期的に増えている作品」とみることができるのではないかという予測です。

それでは実際に、2011年以前の洋画の中からコメント率が高い20作品と逆にコメント率の10作品です。

コメント率トップ20作品

  1. トップガン

  2. メメント

  3. シャイニング

  4. トゥルーマン・ショー

  5. ファイト・クラブ

  6. ユージュアル・サスペクツ

  7. ニュー・シネマ・パラダイス

  8. トレインスポッティング

  9. ミスト

  10. セブン

  11. シャッター アイランド

  12. インセプション

  13. キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン

  14. ダークナイト

  15. (500)日のサマー

  16. グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち

  17. エスター

  18. ライフ・イズ・ビューティフル

  19. スタンド・バイ・ミー

  20. バタフライ・エフェクト


コメント率ワースト10作品

  1. パイレーツ・オブ・カリビアン(シリーズのため省略)

  2. ハリー・ポッター シリーズ(シリーズのため省略)

  3. ナイト ミュージアム

  4. アリス・イン・ワンダーランド

  5. ホーム・アローン

  6. アバター

  7. チャーリーとチョコレート工場

  8. Mr.&Mrs. スミス

  9. レオン

  10. メン・イン・ブラック

よいですね〜。なんとなく"わかる"感のある結果になりました。楽しい。レオンが意外とコメント率がワーストに入ったのが意外でしたね。

というわけで、今回は邦画の名作を探す旅&邦画は名作が受け継がれてない説を検証しました。結果としては惨敗です。現状は有識者のお勧めを聞くしかありません!諦めずに新たな方法を模索したいと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。

続編:アルゴリズムを調整したランキングを作ってみました


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