見出し画像

エレファントカシマシの歴史 Vol.18 『行こうぜ、最高の時を刻み付ける旅へ』

東芝EMI期最後のアルバムにして大人のロックアルバム『町を見下ろす丘』については下記のリンクから。

ユニバーサルに移籍し第一弾のアルバム『STARTING OVER』はまさに豪華絢爛。前回の『町を見下ろす丘』では風通りの良いゆったりとしたアルバムであったが今回は正に祝福のパレードに相応しい本セクションやストリングスチーム更にはエレファントカシマシを語る上では欠かせない人物、蔦谷好位置も本作から参加する。当時のエレファントカシマシの目には一体何が見えていたのだろう。ポップでロックでそれでいてエレカシ節炸裂の今作。レコード会社を移籍し絶対に売れてやるぞ、絶対に一番になってやぞ、という野心と情熱がこのアルバムからビンビンに伝わってくる。エレファントカシマシと言えばこの一曲『俺たちの明日』も本アルバム収録である。アルバムは前作から約二年ぶりの2008年1月30日発売。シングル『俺たちの明日/さよならパーティー』は2007年11月21日、『笑顔の未来へ/風に吹かれて(New Recording Version)』は2008年1月1日発売。

画像1

1.今はここが真ん中さ!

いきなりテンポの良い楽曲である。まるでマイケル・ジャクソンの『Beat it』やクイーンの『Another one bites a dust』の様に小気味良い曲になっている。しかし歌詞は宮本にしか作れない『東京の空』の様に滑稽さを感じさせながらもストレートに心に染み入る。それぞれれの演奏が光り輝いている。

2.笑顔の未来へ

シングル曲にしてエレファントカシマシ新境地。『愛と夢』の収録曲に雰囲気は似ているが歌詞も曲調も新しい。ポップでキャッチーながらも『月と太陽』『涙のテロリスト』等、宮本独自の詩世界が広がっている。メンバーが必死に、しかしながら楽しそうに演奏している姿が目に浮かぶ。

3.こうして部屋で寝転んでるとまるで死ぬのを待ってるみたい

前曲とは一転してダウナーな曲である。『俺の道』の様み宮本は自部屋で鬱屈とした毎日を送っている。愛する人に、愛した人に捧げている歌。『嬉しいことも悲しいことも誰もいない一人のこの部屋じゃ馬鹿馬鹿しいや』という歌詞は恋愛の後に訪れる虚無感を巧みに表現している。『武蔵野』と同じコード進行でありながら百八十度曲調が違うのが凄い。

4.リッスントゥザミュージック

大名曲。失恋の歌。三枚目のアルバム『浮世の夢』に収録されている『(序曲)夢のちまた』では上野の不忍池が登場した。時を隔てた今作は吉祥寺、三鷹の『井の頭公園』が登場した。エレファントカシマシのご当地感はただの場所の宣伝ではなくまるで鴎外の『青年』の様に、または漱石の『三四郎』の様にその場所を出す質前世を感じる。ベンチに腰掛ける二人の背中を目前に多い浮かべ共に心傷し涙することができる。最後の歌詞にならない宮本の慟哭が二人の心を見事なまでに表現している。

5.まぬけなJohnny

The Beatlesの歴史的な名盤『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』の『She's Leaving Home』の様に一つの物語が存在する楽曲である。Johnnyという主人公が同棲中の女に振られるというストーリーである。女に振られた直後の現実逃避または現実拒否という心理状態が巧みに表現されている。「とんでもねぇなエヴリデイ」言葉も宮本の声も絶品である。

6.さよならパーティー

これもまた大名曲である。初めてこの曲の題名を読んだ時はギャグか?と思ったのが正直な感想であるが聴いた時は流石に涙が流れた。宮本の溢れんばかりの才能を水kら飼い殺しているのでは?という自己疑問から生じた素の宮本が現れている曲である。『何度も何度も繰り返して来た さよなら 俺の未来へと続く道』という宮本のかすれかけた声は優しくも勇気づけられる。

7.starting over

こちらの題名は表題とは違い全て小文字である。車のドアを閉める音、そして打ち込みのドラムから始まる。まるで真夏の道路をひたすら車で走っている様な情景が浮かんでくる。『あのメロディ あの祈り』まるで今まで走って来たエレファントカシマシの歴史の流れをもう一度振り返っている様である。そして『もう二度と戻りゃしねぇ』という歌詞は『starting over』という題に相応しい新たな始まりを感じさせる。ライブでの宮本と石くんのギター対決は見ものである。

8.翳りゆく部屋

初カバー曲。松任谷由美の大名曲を宮本が真剣勝負で歌っている。女性が作り歌った曲であるが宮本にフィットしている。本家、エレカシと甲乙付け難い。エレカシ節が炸裂しながらも本家の良さを何一つ崩していない。敬愛を感じる。『赤いスイートピー』と言い『喝采』と言い女性の曲たるものを宮本という男の中の男が歌ってここまでフィットするのは一重に歌の上手さである。

9.冬の朝

宮本ギター一本の弾き語り。実に久しぶりである。一番最後のギター一本弾き語りが『明日に向かって走れ-月夜の歌-』の『月夜の散歩』以来である。この曲がまた染み入る。『冬の夜』の続編が『寒き夜』であるならば本曲もそれら楽曲の続編ではないだろうか。ともかく東京の四谷やら本郷通りが私の脳裏には浮かんでくる。とても良い曲である。

10.俺たちの明日

言わずも知れた大名曲。日本人で知らない人はいないのでは?というほどの曲。いや、大袈裟ではなく知らない人間はいないだろう。この曲は一体何人の人間が勇気づけられ力を分け与えられたであろうか。人生の本質、やさしさ、幸福、について歌っている。エレカシの歴史を知っていると尚この曲で涙する。石君、トミ、セイちゃんそして宮次の肩を組んで歩き、笑い合う姿が浮かんでくる。『忘れないぜそうさ今も同じ星を見ている』という歌詞は当時5歳であった私の心にも響いていた。

11.FLYER

約束の歌。爽やかなハードロック。コードの進行が激しい本楽曲は『パワー・イン・ザ・ワールド』や『ハロー人生!』の様であるがそれらの楽曲とはまた違った良さが出ている。魂で歌っている。バンドサウンドとしても絶品である。

新たなエレファントカシマシの物語はこうして幕を上げる。上り下があろうと彼等は決して諦めずにそして努力を怠らずに毎日が真剣勝負だからこそ何度も何度も輝けた。その成果がユニバーサル期のエレファントカシマシには顕著に現れている。

画像2

さて次回はこれまた名盤『昇れる太陽』です。是非、お楽しみに。




この記事が参加している募集

私のイチオシ

是非、ご支援のほどよろしく👍良い記事書きます。