究極のラブソング 例えばこれがその答え　（宮本浩次 『P.S. I love you』について）

2020年7月24日0時00分きっかりに宮本浩次の新曲『P.S. I love you』が公開された。私は彼の大ファンであるからティザーが公開した時から心して待っていた。まずは公開されたMVを見て貰いたい。監督は星野源『アイデア』や乃木坂46『帰り道は遠回りしたくなる』のMVを監督した関和亮監督である。

凡そ54歳の男が創ったとは思えない純粋なラブソングである。表現を濁すことなく"愛してる”そして"I love you"である。軽い歌詞だな、と思うのは全くお門違いの感想である。そう思う人ほどこの記事を最後まで読んで欲しい。

思い返してみれば宮本はずっと究極のラブソングを創りたいと言っていた。私はこの曲『P.S. I love you』で宮本が言う"究極"に達したと考える。そして宮本がかつて己に出した最大の問いにこの曲は答えている。

ああ 愛してるぜきみを P.S. I love you

宮本の愛の対象とは一体なんであろうか。私は個人ではなくこの"世界全体"に対して言っているとこの曲をもってして確信した。

例えば若き日の夢が 悲しみと交差するとき
その時から人のナミダが 希望を語りはじめるのさ
悲しみの歴史それが 人の歴史だとしても
ああ やっぱ何度でも立ちあがる人の姿は どこかまぶしい　

一番Aメロ歌詞。宮本の思想の変化が窺える。

いずれは死ぬる身の 懐かしい遊びよ 日々のくらしに背中をつつかれて それでも生きようか 死ぬまでは...  （晩秋の一夜）

昔の侍は 自ら命を断つことで 自らを生かす道を 自ら知ってたという　（昔の侍）

歴史 男の生涯にとって死に様こそが生き様だ　（歴史）

上記に引用した歌詞の通り宮本は死を決して希求したり推奨する様な男ではないがどこか死というものにロマンを感じそれを原動力にしていた様に感じる。今回の曲では絶望や悲しみから立ち上がる人を"まぶしい"と表現している。この様な表現は初めてではないだろうか。憶測に過ぎないが『ガイアの夜明け』の主題歌である『夜明けのうた』を創る際に困難から立ち上がる人々の姿に感銘を受けたのではないだろうか。

雨の日傘をさすように 歩いてゆこう
ゆこう ゆこう 大人の本気で さあ 立ち上がろう　

Bメロの歌詞である。"雨の日〜"は比喩であろう。涙に濡れぬ様に歩んで行こう、涙に濡れても立ち上がろう、という意味であろうか。

I love you　I love you 悲しみの向こう
立ち上がれ がんばろぜ バカらしくも愛しき ああこの世界
I love you　I love you いつまでも輝きもとめて
ああ 愛してるぜ日々を P.S. I love you 　

サビの歌詞。宮本はバカらしく愛しきこの世界を愛することが本当の意味で出来たのであろう。

俺は君を愛してるの？ それとも愛に憧れているの？ もはやどうでもいいや 俺の全てでこの世を愛していこう　（Do you remember?）

誤解を恐れず書くのであれば、宮本にとって”きみ”を愛しているか、愛していないかなどどうでもいいのである。大事なのはこの世を愛することである。それが結局"きみ”を愛することにつながるから。

愛って何だかわかった日が きっと新たな誕生日
出会いと別れ ああ 人生を経て 宝物を手に入れたのさ
悲しみの歴史それが 人の歴史だとしても
ああ ひとつぶのナミダのその向こうに きみの笑顔を見つけた 

二番のAメロ。"新たな誕生日"そして”宝物を手に入れたのさ"この歌詞がこの曲の中で最も興味深かった。

夢から醒めた日が新たな誕生日 生まれたままの姿さ　（必ずつかまえろ）

『Do you remember?』の歌詞にもつながるが宝物を手に入れ、故に宝さがしを終え宮本はこの世を愛する事が出来たのであろう。『必ずつかまえろ』は2004年にリリースされたアルバム『扉』の収録曲である。言うなれば16年越しの伏線回収である。

晴れた日 自然に足どり軽くなるように
ゆこう ゆこう 大人の旅路は着の身着のままがいい　

”大人の旅路は着の身着のままがいい”何とも格好良い表現である。今持ってい己が全てであることを認めてまんま行く、という宮本の意思を垣間見る事ができる。

愛してる 愛してる 悲しみの向こう
立ち上がれ がんばろぜ はかなくもうるわしき ああこの世界
I love you　I love you いつの日も喜びもとめて
ああ 愛してるぜ日々を P.S. I love you　

二度目のサビ。この世は短夜の夢の様である。故に儚く美しい。

愛してる 愛してる 悲しみの向こう
立ち上がれ がんばろぜ バカらしくも愛しき ああこの世界
I love you　I love you いつまでも輝きもとめて
ああ 愛してるぜきみを P.S. I love you
P.S. I love you　　I love you　

ラストの歌詞。P.S. I love you そう言って曲が終わる。

私はこの記事の冒頭で宮本最大の問いにこの曲は答えている、と記した。宮本最大の問いそれは『悲しみの果て』である。

悲しみの果てに 何があるかなんて 俺は知らない 見たこともない　（悲しみの果て）

そう、悲しみの果てにはこの世を愛する事ができるのである。それが宮本のたどり着いた結論である。この世を愛するというのは"きみ”を愛するという事なのである。"きみ”とは誰か。それは家族でありエレカシメンバーでありめぐり合いし人々なのである。

宮本浩次がずっと追い求めていた生きる意味、それはこの世を愛する事であり"きみ”を愛することなのである。長年追い求めたどり着いた結論をこの『P.S. I love you』に込めたのである。

愛とは何か、その真実を真っ正面から答えた『P.S. I love you』は紛うことなく究極のラブソングである。