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エレファントカシマシの歴史 Vol.13 『でも好きなんだろ?生きてる事がよ』

エレファントカシマいの13枚目のアルバム『DEAD OR ALIVE』は2002年12月26日に発売された。前のアルバム『ライフ』から約7ヶ月というリリースが非常に早かった。正確にはフルアルバムでは無くミニアルバムであるが公式に13thアルバムと表記してあるのでそれに従った。全て出し尽くした後に出た宮本の寂寥たる心情が顕著に現れている『ライフ』の記事は下記のリンクから。

このアルバムは僅か5曲しか収録されていない。『生活』の様に一曲が凄く長いのかと問われたらそうでも無く収録時間は全体で僅か25分程度である。然しながら一曲一曲が圧倒的な熱量を持って聴き手の我々にまるで純文学を読むが如く深く自らの生について考えさせられる内容である。『愛と夢』『good morning』『ライフ』は打ち込みを多用して宮本は楽曲を制作した。その背景にはバンド、エレファントカシマシの限界を感じていたからであろう。結成当時から抱いていた夢であるバンドとして成功する、という目標を達成してしまった為何をして良いか分からなかったのである。バンドの仲も過去最高に険悪だったと考える。有名な『LIFE TOUR』でのトミへのマイク投げがそれを裏付けている。その『LIFE TOUR』終了後、宮本はもう一度バンドに回帰するべく立ち上がった。もう一度石くんのギターをセイちゃんのベースをそしてトミのドラムの音が必要になったのである。新たな旅路の開幕を告げるアルバム、それが本作『DEAD OR ALIVE』なのだ。

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1.DEAD OR ALIVE

表題曲がトラックの最初に来ている。歪んだギター の轟音と共に始まる高音で力強い宮本の声は『男は行く』を彷彿とさせる。それぞれのパートの音が明瞭に聴き取れる。サビと二番をつなぐブリッジ部分の歌唱がエレカシ史上最大級に格好良い。エレファントカシマシの男たちの過去最高に強い覚悟を感ずる事ができる開幕曲にぴったりな楽曲である。

2.漂う人の性

開幕と同時に聴こえる宮本の声は美しく優しくポニーキャニオン期の声を彷彿とさせるがバッグのエレカシメンバーの音はゴリゴリのロックサウンドである。トミの力強い音は打ち込みの『good morning』の音以上にパワフルさがある。宮本のハモリもしっかりとステレオで聴こえる。最後部分には宮本の長めの語りが収録されている。宮本の語りはいつも重要なことを言っておりハッとさせられる。

3.クレッシェンド・デミネンド -陽気なる逃亡者たる君へ-

エレファントカシマシ史上最も長いタイトルを有するこの曲はド派手な題名に引けを取らない程力強い名曲であり現在までに至るエレファントカシマシの精神を代弁している様な内容を歌っている。縦横無尽な石くんのギターと冷静なセイちゃんのベースとトミのパワフルなドラム、そして宮本の破綻と成立の合間を縫った様な完璧な声質が相まって圧倒的な迫力と説得力がある。この曲は宮本自分自身に言い聞かせていながらも我々にも十分に同じ事が当てはまる。「陽気なる逃亡者」「陰気にして勇気ある生存者」という表現はただただ感服させられるばかりである。

4.何度でも立ち上がれ

非常にメッセージ性が強い曲であり複雑な演奏である。宮本が当時抱いていた様々な絶望や悲しみ、憂いや不安を吐露した楽曲である。然しながらただ吐露してるだけでは無く自ら光の射す方へと歩み行っている。「俺の明日はどこだ 俺の生活はここだ 何度でも立ち上がれよ 全ての感情を手なずけて」当たり前であるが故に口に出す事が難しい人生の結論を力強く歌っている。

5.未来の生命体

宮本の脳内を垣間見る事ができる。完璧な音楽を創造するために絶望の淵に自ら落ち行く。それだけでは無く現在の宮本はそんな自分自身すら客観視してさらに完璧なロックミュージックを模索する。そんな宮本自身の事が歌われている。「オレビルの角あたりに日本人の情緒を感じて嫌さ」という歌詞が出てくるのだがこれは宮本が好んでいた読んでいた永井荷風の影響を感じることができる。

こうしてエレファントカシマシバンド回帰作『DEAD OA ALIVE』が終わる。まるで古あっ流ばむを聴き終えた後の様な満足感と熱量である。このアルバム以後宮本は極端にメディアの出演を控える様になる。その理由はやはり自らの使命はロック歌手で帰る場所はエレファントカシマシしかないということを悟ったからであろう。そしてもう一度メンバー全員で本気でバンドと向かい合い最高のロックミュージックはいかなるもの中を模索し始める。エレカシメンバーも宮本の甚だしい情熱を感じ得、更に気を引き締め宮本浩次と向き合う様になる。その果てに完成したアルバムが噴火するマグマの様な雄々しさを持ち圧倒的なバンドサウンドを誇る次作『俺の道』である。そこでエレファントカシマシは更に磨かれたバンドサウンドを我々世間に提示する。

圧倒的な密度を誇る『俺の道』は如何なるアルバムなのか。それは次回、ご期待下さい。

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