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エレファントカシマシの歴史 Vol.21 『僕らは弱虫同士の同類だろ、どうだ兄弟、偽善の友よ』

前回の光と影が入り混じる愛のアルバム『悪魔のささやき〜そして、心に火を灯す旅〜』は下記のリンクからどうぞ。

1年8か月ぶりのエレファントカシマシの21枚目のアルバム『MASTARPIECE』は前回に引き続きこれまたバラエティに富んだアルバムのなっている。エレファントカシマシのテンションは著しく高い。『good morning』や『俺の道』の頃以上に洗練された”大人のノリ”のエレカシである。そしてアルバム一枚を通して様々なジャンルの音楽に挑戦している。このアルバムは『MASTARPIECE』と言う題名が付けられているが他の候補として『ホームラン王』『バビロニア大学』と言う題名が候補に挙げられたとか。『ホームラン王』はまだ理解できる。当時のインタビューで王貞治の一本足打法に関係があると、当時のインタビューで話していた。しかし『バビロニア大学』とは一体何なのであろうか。エレカシ特有の造語を作りたかったのかもしれない。いずれにせよ『バビロニア大学』と言う題が付けられても面白そうである。今回もプロデューサーとして蔦谷好位置氏が参加している。シングルは二枚、2011年11月16日『ワインディングロード/東京からまんまで宇宙』2012年4月25日発売。

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1.我が祈り

開幕早々壮絶なパンクロックである。多重録音されたギターとドラム、ベースが一斉に鳴り響き宮本のシャウトが長く響く。その声量に圧倒される。ささやくような歌声に戻りサビで一気に解放する。正に圧巻の一曲である。

2.Darling

可愛い恋愛ソング。宮本が優しく語り掛けるように歌っている。一人の女性に対しての優しい愛を歌っている。バッグのストリングスが歌詞にもあるような『しなやかな初夏の風』と言う美しい雰囲気を醸し出している。今までにないエレカシソングである。

3.大地のシンフォニー

大名曲。ロック行進曲。とても壮大な曲である。エレファントカシマシの旅路を歩んでいる様な感覚に陥りさらには各々何の変哲もない日常を肯定して次の場所へと背中を押してくれるような曲である。トミのドラムが小気味良い。このMVは宮本が都内を歩くだけであるが非常に絵になる。何時間でも見ていられる。

4.東京からまんまで宇宙

アップテンポのロック。宮本の声がよく出ている。題名はどこか滑稽であるがロックとして最高に格好良い。そしてバンドサウンドとしても計算し尽くしている。サビのサビのリズムの変化が何と言っても良い。二番サビの「どぁああ何とする」がこの上なく格好良い。

5.約束

大人のバラード。如何に宮本とが体験した何の変哲もなく容易に忘れ去ってしまう過去が大事な記憶なのかが分かる。宮本の慈愛の籠もったサビは感動ものである。

6.ココロをノックしてくれ

ドライブソング。イントロから歌唱部分に突入する時サラッと歌っているが一発であの高音を出すのは相当歌がうまくなくばできない。さすが宮本である。この曲はミドルテンポでありながら今すぐにでも走り出したくなるような曲である。「コンビニでサンドイッチでも買ってさ」と言う歌詞が現実感溢れていて僕らと隔たりがなく親近感を持って感情移入する事ができる。「時間がないんだ俺には」と言う歌詞はエレカシの走り続けてきた歴史を垣間見る事ができる。

7.穴があったら入りたい

大人のロックンロール。ポップさとは裏腹に人生の本質をさりげなく歌い上げている。「上手くやってるつもりだろうが全部バレてるぜ御同輩そりゃ表通りだけが人生じゃないだろうが」と言う真理をついた表現に感服するばかりである。度々宮本の中で神に祈りを捧げると言うニュアンスの歌詞が出てくるのだがこの曲で初めて神に祈りを捧ぐ宮本が出てきた。エレカシメンバーがふざけあっているMVも見ものである。

8.七色の虹の橋

弾き語りソング。散歩の歌ではなく愛した人と共に過ごした過去を回想する歌。美しい。宮本自身のコーラスとハモリが随所で聴こえてくる。古本屋で待ち合わせて未来を通しする宮本と退屈そうにする彼女。何とも切ない。そして時が経ちて一人せきにの宮本が思い出の地へと赴く。何とも儚い。そしてこの曲でこのアルバムの題名である『MASTARPIECE』と言う歌詞が出てくる。

9.ワインディングロード

エレファントカシマシ覚悟の歌。決して平坦ではない曲がりくねった道を進み続けて更にまだまだ歩みを続けようと言う決意が表現されている壮大な曲である。曲が終焉に向かって楽器が増え壮大になる。「遠い空の青さに鳥が泣いて街に漂う心とかぜそこらに埋もれた光は揺れ思い出に弾けて消えた」と言うCメロが歌詞、曲含めて絶品であり涙がでる。

10.世界伝統のマスター馬鹿

最高にロックでパンクな曲。意味のわからない題名であるが題名に以上に強烈でエモーショナルな楽曲である。演奏が複雑でありながらそれを感じさせないほど宮本がストレートに歌っている。

11.飛べない俺

大人になった宮本がふと失った何かに気付くと言う切ないバラードである。宮本の生きている人生とはいったい何か。そしてこれから何をして何を感じるのかと自らに問い続けける歌である。この曲を一番最後に持ってきたのには宮本としてまだまだ空へと翔けない俺だがただ頑張ろう、と言う決意の現れであろう。

こうしてバラエティ溢れる楽曲が収録された傑作『MASTARPIECE』は終焉する。どの曲を聞いても燻銀のロックバンドと言う表現が的確に当てはまるアルバムである。エレカシの音、宮本の詩、が余す事なく表現されている。

順調にアルバムのリリースを続けていたエレカシであったが次の『RAINBOW』がリリースされるまで3年半と言う長い時間を待たなくてはいけない。『エレファントカシマシ デビュー25周年記念 SPECIAL LIVE』と言う華々しい祝い事の裏には壮絶なドラマがあった。それはまた次回。


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