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日本文学について

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日本人とは如何なる民族か。日本人とは如何なる精神を持っているのだろうか。日本文化とは如何なるものなのか。日本的なる人は如何なるものなのか。日本というものを知るには如何なる事を学べ…
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2021年1月の記事一覧

日本文学史 #11 第四の転換期 ②

日本文学史 #11 第四の転換期 ②

前回は幕末から明治初期までの日本文学の遍歴について説明した。第11回目である今回は小説が誰にでも書けるようになった時代について説明する。前回の記事は下記のリンクで読めます。

吉田松陰と一八三〇年の世代阿片戦争(一八四〇〜四二)から日米和親条約(一八五四)に至る時代に小青年期を過ごし明治維新(一八六八)を青壮年をして迎えたのは一八三〇年前後に生まれた日本人の一世代である。この世代の「エリート」は政

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日本文学史 #12 第四の転換期 ③

日本文学史 #12 第四の転換期 ③

前回は明治時代の西洋に対する思いを説明した。今回は明治時代の思想、文芸について説明する。前回の記事は下記のリンクから。

鈴木大節と柳田國男日本仏教を殊に禅宗と浄土真宗の伝統を明瞭な言葉で語り、日本文化にとってその意味を再評価したのは鈴木大拙(一八七〇〜一九六六)である。彼が生きていたほとんど一世紀にも及ぶ長い生涯は日本文化と西洋文化との対決の時期と重なっていたから前者にとっての仏教の意味の確認は

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日本文学史 #13 第四の転換期 ④

日本文学史 #13 第四の転換期 ④

前回は明治時代に活躍して後世に多大なる影響を与えた思想家と文豪について説明した。今回は日本幅広く浸透した文学形式の一つである「自然主義」とその周辺について説明する。前回の記事は下記のリンクより。

「自然主義」の小説家たち<一>一八七〇年代に地方で生まれ、東京に出て私立大学に学んだ文学者志望の青年の中からいわゆる「自然主義」の小説家たちが輩出した。島崎藤村(一八七二〜一九四三)と正宗白鳥(一八七九

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日本文学史 #14 工業化の時代

日本文学史 #14 工業化の時代

前回は明治後期に活躍した文学者について説明した。今回は更なる工業化が進んだ日本の情勢の中で暮らした人々の文学について説明する。前回の記事は下記のリンクより。

一八八五年の世代日本の工業化は日清戦争(一八九四〜九五)の後で大いに進んだ。その進み方が殊に早かったのは綿糸紡績を中心とする軽工業である。日露戦争(一九〇四〜〇五)の後、第一次世界大戦(一九一四〜一八)に至る時期にはそこに造船や鉄鋼のような

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日本文学史 #15 戦後の状況

日本文学史 #15 戦後の状況

前回は工業化、軍国化される日本の中で書かれた文学について説明した。今回は日本語終戦を迎えてその後に描かれた文学について説明する。前回の記事は下記のリンクから。

戦争体験について文学においての戦争体験というのは多くの場合戦場体験であった。その戦争体験を生涯にわたって文学的な仕事の基礎としてその意味で徹底した一貫性を示したのは大岡昇平(一九〇九〜八八)である。三〇年代から太平洋戦争にかけてスタンダー

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