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会計専門職からマネーフォワードのデータアナリストになった話

自己紹介

はじめまして、マネーフォワードの分析推進室及び経理本部兼務の佐野です。

会計監査、税務、管理業務などアカウンティングファームやスタートアップを経てマネーフォワードに入社して2年経ちました。
計数管理やデータアナリティクスをしていると華やかな経歴を想像するかもしれません。しかしながらマネーフォワードに入るまでは、中小企業の資金繰り計画を徹夜でおこなったり、営業の新規開拓などの業務を行っておりました。

そんなデータアナリストでもなかった私がなぜ転職して、2年間マネーフォワードでどのような業務を行ってきたかご紹介し、「データアナリスト」に興味を持つきっかけになってくれたらなと思います。

前職の会計専門職の話

国外のアカウンティングファームの就職

私は日本の公認会計士の試験に2012年に合格した後に、東南アジアのアカウンティングファームに就職しました。
なぜいきなり海外に出たかですが、生存戦略という側面が強いからでした。

私が試験に合格した時代、世は会計士就職の氷河期でした。
とにもかくにも監査法人やコンサルティングファームの採用にはひっかからず、意識だけは高かった私は打ちひしがれておりました。
同じく共に会計士試験の勉強をしていた仲間たちが晴れて監査法人などに就職して活躍しているのを見て、焦りを感じておりました。

ただ、人とのご縁には恵まれていて、会計士の先輩方から様々なアドバイスをいただきました。

日本企業が東南アジアに多く進出しており、対東南アジアのM&Aや、成長マーケットでの進出支援などたくさんのニーズがあることを知りました。このまま国内の会計士採用マーケットが回復するのを待つのもジリ貧だと思い、年齢的な高さを考慮し、当時募集のあったマレーシアのアカウンティングファームに行くことを決意しました。

東南アジアにいってみると、想像以上に発展していることに驚きました。そして、聞いたとおり様々な仕事を経験させていただきました。
会計監査だけでなく、M&A、国際税務、不正会計調査などの仕事を経験させていただきました。

また、ベトナムのグループファームから日本デスクを立ち上げたいという話がありました。またとない機会だと思い、日本人が誰もいないベトナム国内出資100%のファームに行きました。
こちらでも、会計監査や経理代行などの営業からデリバリーまでを行う経験をさせてもらい、「会計事務所ってこんな感じに経営しているんだ」と肌で感じました。
言語や文化の違いを感じつつ、楽しみながら生き残ることができました。


データアナリストへ転職した経緯について

そんな会計系の業務を行っていた私ですが、データアナリストに転職しようと思ったきっかけは以下2点でした。

  • 経営で生き残る上での示唆を出したい

  • ローカルの会計専門家に勝てない

アカウンティングファームのときに、企業の中に常駐しつつ財務や税務に関する課題解決を行うニーズを感じていました。そのため、アカウンティングファーム卒業後に税理士の友人と一緒に企業常駐型の財務アドバイザリーを行うサービスを行いました。
ぼちぼち仕事をとれ始め、税務や月次決算の早期化してクイックwinを作り、その後管理会計を用いてPDCAを回す仕組み作りを行うといった業務を行いました。

数年経ち、税務などの規制業務についてベトナムなどのローカルの専門家(ベトナム人の会計士など)には勝てないなと思いました。当たり前ですが自国の事情や規制は誰よりもキャッチアップが多く事例を豊富にもっています。このため、彼らと競合するよりも協力関係を作り自分は管理会計・ファイナンスなどで示唆をだすことでバリューを出せたらと思い始めました。

また、管理会計は大まかな課題を発見するのに非常に優れているものの、クリティカルな課題や現場のアクションプランにおとす場合に詳細にみえていないなと感じはじめました。感覚的に言うと、会計数値のその先にある営業・マーケティングや製品の利用度などに関して靄がかかった状態のまま船を漕いでいる状態でした。このため現場の方と話しているとやや距離感があり、言われたことをそのまま受け入れている自分がいました。

会計もマーケティングも営業活動もすべて地続きのはずなのになぁと感じ始めました。具体的にいうと、会計情報と現場の情報を結びつけて分析するとより示唆のある分析ができるのではと仮説がありました。

そのようななか、たまたま会計×エンジニアリングのコミュニティで同じような思想を持ったデータ基盤整備や活用を行っているマネーフォワードの分析推進室の活動が目に止まりました。

実際に話を聞いてみると、分析推進室が経営企画からスピンアウトした組織ということもあり、データアナリストやデータエンジニアの方々が管理会計基盤の整備や活用をおこなっていることがわかりました。
管理会計だけでなく各種アナリティクスをするという方向性が一致していることもあり、マネーフォワードでデータアナリストをやっていきたいと決断しました。

マネーフォワードのデータアナリストの話

Day0~Day30

最初の1ヶ月は、ツールの扱いに苦労してました。

BigQuery、Airflow、Looker、GitHub…と横文字というか英語名の分析ツールが分析推進室のSlackで飛び交っておりました。

特に、分析推進室のインターン生が事業部の方とコミュニケーションしながらETL、データマート作成、ダッシュボード構築をしており面くらった記憶があります。お恥ずかしいですが、おそらく当時の私がチームで一番エンジニアリングに関するリテラシーが低かったと思います。

しかしながら、オンボーディングを丁寧に行ってくれたり私自身のスキルに見合ったタスクをアサインしていただき徐々に分析ツールに慣れていきました。タスクの中でデータマートを作成することがあり、可視化しやすい構造を意識することが重要です。この場合でも、前職でPythonを使用した経験や分析コンペに出た経験を活かすことができました。

今では、SQLビギナーのための実践的な社内向け問題集や各種分析ツールのドキュメントや自前の研修動画なども充実させており、よりスムーズなオンボーディングができるような仕組み作りも行っております。

またドメイン知識についてですが、もともとバックオフィス業務をやっていたこともあり、ある程度顧客の悩みは想像することができました。小さな会社でしたが前職でも仕訳をいれて決算や管理会計レポートを作成したり、勤怠や給与計算ツールをいれて計算を行ったりしていました。このため、顧客の製品利用動態を可視化するタスク等に関しては興味深く仕事をすすめていた記憶があります。

~Day180

1ヶ月が過ぎたあたりで、より大きなタスクを任せてもらえるようになりました。
分析推進室の背景として、経営企画のスピンアウトということで経営レイヤーの意思決定に資する分析活動を行っております。前職からの強みを活かすということで、私は以下のような管理会計領域を担当しました。

  • SaaS特有のKPIのレポート作成

  • 月次の管理会計データの集計

分析職というと「SaaS特有のKPIレポート作成」のように示唆を出したり、増減要因を分析をすることで施策の効果を検討することが私の中で一般的なイメージでした。

一方で、「月次の管理会計データの集計」の方法が新鮮でした。通常の集計方法だとエクセルなどを使った方法が考えられるのですが、BigQueryやAirflowを使って、売上系データマートを自動、または、半自動的に更新しておりました。最初はお手軽に更新できるんだなぁという第一印象がありました。作業しているうちに、更新順序を標準化していたり増減や値のテストを自動化していたりAirflowで安定した更新をしているのだと理解しました。ここでも以前使用していた会計監査や経理のときに使用していたテストの内容を、このAirflowに組み込むことで安定的な運用へ活かすことができました。

また、内部報告で使用されるこの管理会計が外部報告で使用されるIRや財務報告で使用される財務会計(厳密にいうと制度会計)と異なると、多くのコミュニケーションロスが発生します。内外のコミュニケーションがスムーズにするために、マネーフォワードでは財管一致を志向しております。具体的に財管一致は、参照するデータソースを信頼できるものに統一していくことや、定義のズレを認識して中間テーブルなどの加工ロジックを見直すことでした。ここでも、SSOT: Single Source of Truth(信頼できる唯一の情報源)をやっているんだなぁと感じることが多かったです。

一方で当時の財管不一致の金額はまだまだ小さくできると感じておりました。財務会計の知識には自信があったため、経理担当と協働しつつ、私自身も経理本部の兼務もさせていただきながらマネーフォワードの売上の調査を進めました。基本的には財務会計の計上方法のヒアリングや集計資料を読み解きながら、一方で管理会計のSQLコードとにらめっこする日々が続きました。この時期にSQLの理解が急速に進んだ記憶があります。結果的に半年間で財管不一致額は許容範囲内に収めることができました。

~Day365

入社から半年が過ぎ、私自身分析ツールの使い方やマネーフォワードのテーブル構造に関する理解も進んでおりました。そして、マネーフォワードではより多くのプロダクトが開発されると同時に複数の利益責任を持つ事業部が設立され始めました。そこで下記のような課題が浮かびました。

  • 本部によってKPIの集計定義にズレが生じ始める

  • 本部によって財務モデリングの最終フォーマットが異なる

  • P/LだけでなくKPIでも計画や実績との比較をしたい

このような課題を克服し、実績だけなく計画サイドもFractalな構造にしていくのは非常に有意義なことだと感じ着手しようと思いました。

中央集権的に定義やフォーマットを整理していこうと考え、経営企画や各本部長と協力しながら課題に取り組んで行きました。
全体的な定義を統一しつつも、各本部でも使えるものを作るとなるとかなり骨の折れる作業でした。

しかしながら、幸いBigQueryで管理会計の実績集計をするにあたり、売上に関して解像度の高い情報を提供することができていました。よってKPIなどの変数から構成する財務モデリングを作る際は、前職だと色々な各部署にお願いして1ヶ月ほど経って出る情報が、BigQueryだと数秒で算出することが出来ました。

また、本部長など全体的に協力的で背中を押してもらえる文化で、KPIの定義や財務モデリングも統一できるようになりました。

~現在まで

入社から1年が過ぎて、マネーフォワードの組織自体が更に拡大していくのを体感しました。

データの民主化(意思決定する人がハードルなくデータにアクセスできる状態を継続的に実現していること)をより意識しつつ、データアーキテクチャの見直し、統計・機械学習を活用した取り組みなど行ってきました。私自身も経営向け以外の分析を進め、マーケティングチーム向けにGoogle Analyticsのデータを活用したり、カスタマーサクセスチーム向けにデータの整備や分析を行うようになりました。分析推進室は全社横断部署です。このため事業部からの多様な依頼があり、前職の専門以外の領域のデータを幅広く活用する機会があります。今なおデータ分析職は奥が深く、守備範囲が広いと感じております。

入社2年が経つあたりから、User Focusで顧客に価値を届けるために、もっと現場に近いところでデータドリブンな意思決定を進めてみたいという気持ちが大きくなりました。以前よりデータ基盤を整備する体制が強化され、メンバーも続々と強い方が入社し活躍している時期でした。

今までの業務はメンバーに引き継ぎ、分析人材の事業部への輩出(以下、人材輩出)という以前からあった分析推進室の構想を実現するのに良い機会だと思いチャレンジすることにしました。

人材輩出とは経営サイドの分析観点を掴んでおり、データ基盤の思想・構成も理解したメンバーが事業側のミッションを持つことで事業インパクトを高め、データ活用の民主化を推し進めることを意味しております。下記が主な目的は以下です。

  • 全社最適視点の事業部の中でのデータ分析の仕組み作り
     横断部署である分析推進室では管理会計KPIの算出やダッシュボード構築のサポートを通じて全社的なデータ活用を進めてきました。その過程においてデータ基盤整備を行うことにより、マネーフォワードのデータの理解や組織拡大に応じたデータマネジメント、意思決定の精度・速度を向上させる分析の理解が深まります。組織が拡大しデータ活用のニーズがますます高まる中、事業部に所属することでさらなる全社最適な枠組みでの分析の民主化を図っていきます。

  • ⁠スピーディなドメイン知識の習得
     また、事業部側の意思決定スピードが早く取り扱うプロダクトや業界の専門性が高くなっていることから、分析推進室という横断部署として動いている現状の課題感として、十分に文脈を理解した上での要件定義・分析・打ち手の提案が難しいことがありました。事業部に所属することでスピーディにドメイン知識の習得を行い、分析推進で培ったナレッジと掛け合わせることでデータドリブン経営を進めていきたいと思います。

  • 分析ナレッジの横展開
     上記でためた分析ナレッジを資産化し、他の事業部に展開していきたいと思います。

具体的には2022年9月から事業部に主務を移し、事業企画部の部長としてデータドリブンな経営を進めていきます。


おわりに

会計×データ分析の領域にご興味のある会計専門家の方、データアナリティクスという専門領域外へのチャレンジをお待ちしております!!


また、定期的にデータ活用やデータドリブンな文化醸成に関する様々な情報を「マネーフォワード・データ&AI」マガジンで発信しています。よかったらnoteをご覧ください&マガジンをフォローください!


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