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虚実日記7月

7月1日
バイトの帰り道。
家の近所からきんぴらごぼうが香ってくる。
家庭が鼻に宿る。近所から漂う香りとして
きんぴらごぼうって大正解○

7月2日
猫がいた。近づいた。逃げられた。
そうだった。
おれは猫とうまく触れ合えるほど大人じゃない。

7月3日
Yahoo!ニュース欄に気になる見出し。

「朝バナナやめる人続出
春日の減量法がすごい!」

「サラダチキンやめる人続出
春日の減量法がすごい!」

「散歩やめる人続出
春日の減量法がずるい!」

朝バナナやサラダチキン、散歩までをもやめさせてしまう減量法があるらしい。すごい、なんてすごさだ。Yahoo!ニュースにもなるわけだ。しかし、すごいは分かるが「ずるい」とはなんだろう。誰が誰に対して言っているのか。疑問に思う者は続出だ。

7月4日
念願のクリームソーダをめがけて千歳烏山へ。
馴染みのない土地だったこともあり道が分からなくなる。近くを通りかかったおばあさんに尋ねると手書きの地図まで描いて教えてくれた。私の足で7、8分くらいとのこと。ありがとうございますと礼をし向かう。20分かかった。なんなんだ。あのおばあさんは歩くのが異様に早い。何の知識だ。

7月5日
和田アキ子がじぶんのことをアコと呼ぶのに倣って
じぶんのことをコヘと呼ぶことにする。
今日は誕生日。

7月6日
今日は、友人が出演する舞台を観に行く。
家から劇場まで約1時間。開演は13時。昼食をとるか悩みどころ。結局、朝ご飯だけにすることに。劇場に着くや否や腹が鳴る。しまった。明らかな選択ミス、と思った瞬間に開演のアナウンス。幕が上がる。

7月7日
目を覚ますとおれの体調は跡形もないほどに崩壊していた。粉々。骨身に欠陥。
昨日ー
夕方から夜にかけてどこか身体に違和感を感じていた。冷えるような、重たいような、だるいような。
同時に、全くもってそんなことないような。違和感はあくまで違和感であり、体調が悪いんだか何だか分からない。釈然としないまま、ぼんやりと朧げに過ごした。悪寒だった。今考えれば、それは悪寒だった。寒気と倦怠感と発熱。日を跨ぐと、自信を持って命名できるほどの明白さで襲来してきた。おれは体調が悪い。おまけに熱を出している。そう!だから!今日は、頑なに、寝る!

7月8日
本日も発熱は続く。体調はすこぶる悪いから、気を使えるほど気力がないから、部屋の隅々、丁寧にまで雑多だ。声は出ないのだけれどぶっきらぼうで威勢がいい。おお。こんな威勢の良さを俺は持っていたのか、とそんな自分が誇らしい。胸を張って床に伏す。

7月9日
37.8℃
体調は少しずつよくなっているが身体が重い。あまりお腹も空かない。野菜を食べる。サラダ。緑くってる感がある。そういえば色ってなかなか食えないな。どうやったら食えるんだ。白とか黒とか食べてみたい。色欲はある。

7月10日
夢をみる。ドンがでてきた。レペゼン名乗れ。

7月11日
友だちのツイート。
「仲良い友達がじぶん以外の人と仲良くしているのがストレスなので仲良い友達全員ブロックしている」
おれはブロックされていない。

7月12日
フジテレビで放送されているバラエティ番組
「痛快テレビ スカッとジャパン」が終わるらしい
痛快だ。スカッとする。

7月13日
半年程前から筋トレを始めた。腕立てと腹筋に体幹トレーニング。最初は慣れず苦しかったものの、毎日やった成果、今では悠々こなせるようになった。少しずつ回数や時間を増やしたり、他にも様々じぶんなりに工夫を凝らして負荷を掛けている。筋肉がついていく。じぶんの身体を見るたび心弾み、以前よりおれの機嫌は良くなった。何よりじぶんの身体をじぶんのものだと実感している。身体、これ、おれ、て感じ。
しかし最近気がついた。筋肉がついていると思えるのは筋トレした直後だけではないかと。筋トレしたあとは決まって姿見つかい、上裸の身体をチェックする。ふむふむ、いい感じで筋肉ついてるぞーと満悦。だが違うとき、例えばシャワーを浴びるタイミングで鏡通して見てみるとそれはなんだ。これはなんだ。ひ弱な身体が映っているではないか。筋肉、ない!筋肉の鎧を纏った姿が脳裏に焼き付いているためにかえって脆弱に感じる。果たして筋肉とは使った直後に出てくるものなのか。シャイか。そんなことあるものか。少しでも長い時間お目にかかるため、また今日も筋トレをする。

7月14日
地元のホームセンターへ。中に入るなり、辺り一面覆い尽くさんばかりのカボチャの群れが目に飛び込んできた。ハロウィンだ。即座に察する。周りを見渡せばジャック・オー・ランタン。店員さんは揃い揃って仮装姿。ナース、魔女、ドラキュラ、ゾンビに海賊。これでもかというほどのハロウィンがおれを出迎えている。しかしちょっと待て、まだ世間は7月だ。先取りが突出している。
これからが夏本番ー
1年の中でのビッグイベントはまだこれからだというのに、この店はそれすら飛び越え、喧騒を渇望するパリピによるパリピのためのイベントに鼻息を荒くしているのか。ついには困惑果て、心配になってくる。もしかすると、季節の先取りではなくて単に季節を間違えているのかもしれない。トリックオアトリート。これも誰かのいたずらか。

7月15日
駅チカ老舗中華で昼食。ここの中華はほんとにほんとの町中華。安心安全、保証が味です。メニューはラーメン・チャーハン・餃子・チャンポンタンメンなどなどお馴染みのラインナップ。常勝軍団なーんの捻りもないのだこれでよし。今日はラーメンにしよう。物腰の柔らかいおばあさん店員に注文しばし待つ。周りを見渡すと白髪の目立つ年配のお客さんで席は埋まっている。地元に住んでなきゃ来ないよなー。地元にいてもなかなか来ないけど。みんな昔からの常連さんなんだろうか、と想像膨らむ。「お待たせしました〜」
ラーメンがやって来たヤァヤァヤァ‼︎
おやおや、ナルトまで入ってる。渦巻いてやがる。
食ってやろう。ナルト、今からお前を食ってやろう。箸を伸ばす。食べる。むしゃむしゃ。
…へー、ナルトってこんな味だったっけ。
ほぼ味ないぞ。食感を楽しむやつかこれは。知らなんだ。渦の意味はなんだ。ナルトの存在意義ってなんだ。味のアクセントにもならぬアクセント。見映えだろうか。渦巻き経由インスタ行き。
麺を啜る。うん、知ってる。これはラーメンだ。そうだそうだこれがラーメンでした。theラーメン。あ、
しまった。知ってるがゆえにひと口目からすでに飽きてる。大盛りにしてしまった、、

7月16日
友人から贈って貰った写真集を見る。
相澤義和「愛情生活」
突然の嘔吐。なぜ吐いたかはわからない。
只、吐き心地が悪かったことは確かだ。

7月17日
物事にあるやり方っぽいの、
あれ全部うそだと気づく。

7月18日
バイトの休憩中、気づけば恋愛のハナシになっている。付き合ってるやつはいないのか。いないなら俺紹介するぞ、と言われる。されたことないけど親戚とかにされるやつだ。断る。それでも先輩は引き下がらず続ける。というか紹介がすでに始まっている。オススメの子がいるとか言い出した。気が進まない。お勧めされたくない。「この子はね〜」彼女の良い所、ってのがスラスラでてくる。人の良い所っていうのはそんなに流暢に出てくるものなのかと困惑する。結局先輩には逆らえず、後日その女性と会うことになった。面倒だ。これでこのハナシは終わり。かと思ったら最後に無理くり写真まで見せられる。面倒パート2
会うっつってるのに。写真を見ると可愛いらしい女性が映っている。少しだけ見惚れる。しかし眺めるうち、女性の顔が自分に似ているような。遠い親戚ではないかという気がしてくる。

7月19日
漠然と不安な一日。
ナンも皿からはみ出ているし。

7月20日
小学校からの友人ふたりと暫くぶりに呑む。前回集まったのが一体いつなのか誰も思い出せないほどのご無沙汰っぷり。飛び交う「何年ぶりだろう」で場が持つ。会えばフリだし。小学校からの友人と会うと小学校の時の話になる。僕らは決まって休み時間を一緒に過ごしていた。ドッ「ジ」ボールなのかドッ「チ」ボールなのかわからなくなる。ジ?チ?いや待てよ、ヂか?と男3人やたら盛り上がる。どっちでもいい。

7月21日
今日は選挙の日だった。
朝イチで会場に向かい投票する。
恵方巻きの時くらい会場は静かだった。
南を向いて名前を書き切った。
願い、叶うといいな。

7月22日
特にすることもないので、とぼとぼとテレビを眺める。なんだかよくわからない老夫婦の映像でやたら感動する。波乱万丈な人生に感情移入。病気になったけど治ってよかったよかった。涙する。ああ、最近、涙腺緩くなってるなーと感じる。青汁のCMだった。いやになる。またこれか。恥ずかしい。ベタをやってしまった。青汁といえば最近、青汁王子がTwitter上でお金を配って話題になっている。たしかまえ捕まってたよな。青汁みたいに苦い思いしてたのに結局お金あるのか。CMみたいに波乱万丈な人生だ。

7月23日
バイトの休憩時間、YouTubeで新たにアップされていた「ロバート秋山のクリエイターズファイル」を見る。クリエイターズファイルを始めてからロバート秋山は普段の髪型どれも似合ってない気がしている。どんなカツラでも似合ってしまう代償だろうか。

7月24日
予定もなくやることがないのでTwitterを断続的にみる。開いては閉じ開いては閉じを繰り返す。数分で景色はさして変わらない。この手癖一体なんなん。いつから染み付いたんやろか。習慣と中毒の違いはなんだろう。

7月25日
今日もTwitterを。
消費の荒波。押し寄せるコンテンツの濁流。
最高だ。最高すぎる。愛だ。愛です。愛だね。
今、最高と愛はSNS屈指の猛者なのだなと感じる

7月26日
友人と政治の話で議論になった。
酒が入っていたこともあり、お互い感情的だった。
同じことを主張していたし、同じところに投票していたと思う。

7月27日
知人の荒波さんがビルの窓拭きバイトで転落。腰や腕を骨折したらしい。入院している病院に向かう。
病室にて荒波さんと再会。思っていたよりも元気そうだったが、大袈裟なくらいデカくて丈夫なコルセットを腰に巻いていて笑う。冗談かと思った。8メートルの高さから落下して腰と足の骨が粉砕したらしい。冗談じゃなかった。よく生きてた。えらいえらい。荒波さんはとにかく暇そうだった。接するのはおじいちゃんおばあちゃんばかりで、することも特にないらしい。やることと云えばツラくて苦しいリハビリくらい。いじわるしてすぐ帰ってやろうかとも思ったが可哀想なのでしばらく居座ることにする。病室は六人一部屋。次第に各患者さんの声が聞こえてくる。カーテンで仕切られた隣のベッドにはどうやら認知症?の患者さんが入院しているようす。訪れている家族相手にしきりに問答。クエスチョンの大渋滞を起こしている。聞いているだけで大変だとわかる。今はまだ他人事だけど、いずれ他人事でなくなるやつだ。果たしておれにできるだろうか。
「たまプラーザの吉田さんは元気かしら?」
隣のベッドで繰り返し繰り返し質問している。
荒波さんと話しながら何となく意識はひっぱられる。
「たまプラーザの吉田さんは元気かしら?」
サブリミナル的に挟み込まれる。妙に耳に残る。
「たまプラーザの吉田さんは元気かしら?」
たまプラーザの吉田さんは元気だろうか。

7月28日
本屋に行く。新書の売れ筋1位はミステリー本。
POPにデカデカと書かれた
「あなたは最後、絶対!裏切られる 」の文字。買う。読む。つまらなかった。しっかり裏切られた。

7月29日
知り合いの知り合いのTwitterにて。
「フォロワーが5000人を超えました!」
スクリーンショットと一緒にアップしている。
フォロワー数は5000人ぴったり。
ぴったりが故にやっぱりフォローを外してしまう。

7月30日
演劇のワークショップへ。参加者は4人。少人数かつ自分以外はみんな女性だ。演技や演劇のワークショップは女性が多い気がする。お芝居やりたい人は女性の方が割合多いのだろうか。(男性の数よりも)女性多数という風景は普段の生活ではあまり見かけないものだ。社会では、というか外は、男の方が多い / 多かったのだと実感する。電車とか特にね。
さて、いざワークショップが始まると、今までおれが経験したことのないタイプの台本や演出だったこともありだいぶ苦戦することになった。ワークショップを開催している主宰の方はひとりひとりに対して丁寧に向き合ってくれるが、誰も皆なかなか上手くいかない。言葉の意味は、頭では、わかるが実践できないのだ。何回も繰り返し試行する。難解だが、それ故に充実感もある。主宰の方がだんだん苦しそうに演出し始めた。かなり苦しそうだ。言い澱み、溺れているようにも見える。口元からはぷくぷくと気泡が浮いている。こちらとしてはこの間、言葉を聴くぐらいしか出来ることはない。見ているこちらも苦しくなる。
ガンバレー‼︎ガンバレー‼︎みんなでエールを送る。
ガンバレー‼︎ガンバレー‼︎あっという間に熱狂は広がり、気づけば人だかり。主宰の方も声援が力になったのか言葉が出てくるようになった。少しずつ、少しずつ。最後は力を振り絞り、なんとか彼は演出しきった。やったー‼︎ぼくらは抱き合い、歓喜した。
おれはこれが「仲間」なのだと知った。そして仲間と一緒に何かを成し遂げることの大切さを知った。
見れば遠く彼方、誰かが胴上げされている。
主宰はヘロヘロになりながら「これはめったにないこと。これはめったにないこと。」と言っていた。

7月31日
膨らます。夏が近いから。

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