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先生

小学校の時、空手を習っていた。

その先生は小学校の先生でもあり、空手の師範でもあった。

今では信じられないかもしれないけど、私は両親が忙しかったため、その先生にかなり沢山の経験をさせてもらった。

休みの日にスキーに連れて行ってもらったこともあるし、空手の試合に大阪まで連れて行ってもらったこともある。

大阪での空手の試合の後、先生が大学時代に食べていたラーメン屋さんに連れて行ってもらったり、「ケンタッキー食べたことある?」と聞いてくれ、「無い」と答えると、買ってくれたこともあった。

今の私は、自分の子供じゃない子に対して、そこまで出来るだろうか?と思った時に、到底無理な事を先生はなさっていたのだと思うと、凄い人だと思うのだ。

先日先生の奥さんが亡くなってしまった。憔悴して小さくなってしまった先生の事が気になり、小さな頃訪ねた事がある自宅にどうしても行きたくなって行ってしまった。

じっとしているのが嫌いな先生は、庭にいて、先生は子供や孫に囲まれて庭仕事をしていた。

私が行くと、先生は少しびっくりしたようだったけど、すぐに昔の様な笑顔になって、犬走りに腰かけて何十年ぶりかにゆっくりと話をした。

定年後は、奥さんと自転車に乗ろうと思って準備していたのだとゆう。

胸が締め付けられた。こんなに利他の精神のある人が、頑張りに頑張り抜いた末のささやかな楽しみすら叶わなかったのかと思うと、涙が出そうになった。

心の底から、役に立ちたいなと思ってしまった。

どうゆうふうにすれば役に立てるのか、分からなすぎて自分の無力さにイライラした。

帰り際、先生は「元気が出たよ、ありがとう」と言って、笑っていた。

先生はチーズが好きだと言っていたから、今度はチーズを持って行こうと思う。


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