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記憶の中の波間にゆれる

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#詩作

深海魚

あまりにも 唐突で
わたしは 戸惑って

わたしを守ってくれるものを
所在なげに 捜している

重力に逆らった重い言葉を
深海では
それは きっと 日々の果てに あるものと
#詩 #詩を書く#詩作

片方だけ

朝霧の
湿っぽい空気に
黄色いぺたんこのパンプスを
片方 捜して

とても大切なものなの

片方の靴では
あなたの元に行けないわ

朝霧に
湿っぽい空気に
深呼吸して

黄色いぺたんこのパンプスを
片方 捜して

わたしは

いつまでも 待っている
#詩 #詩を書く#詩作

ある地点より

しめきった安宿の窓に洩れる

日の光りに

生の無意味さと

死の自然さと

生きているという不思議を
#詩 #詩作

無題

打ち捨てられた 空き缶みたいに
ぺたんこになった

気持ちを思うと
もう 容赦ないくらいの

あなたは
どこにも いない

泣いたりなどしない

打ち捨てられた 空き缶みたいに

それでも
生きなければならない
生きなければならない
生きなければならない

欠けているとしても それはそれが現実なのだった

なくなったって
はかりしれない 宇宙は
膨張し続けている

欠けた お茶碗みたい

あなたが いなくなって
もう どのくらいたったかしら

ゆうべ あなたの夢を見た

毎日 時間は 経っていて
そのうち
わたしも いなくなるけど

なくなったって
はかりしれない 宇宙は
膨張し続けている

宇宙が 生きている
#詩 #詩を書く#詩作#ポエム

果実

あなたは あなたのしわがれた手で
夏みかんをむいた

ベタベタするから
むくのがキライ、と

わたしが 言ったから

あなたは なんでもしてくれる
わたしが 望むことを

夏みかんに 蜂蜜をかけて食べると おいしいよって
わたしは あなたのしわがれた手を撫でながらいう

あなたを 失ったら
わたしは きっと 悲しい

夏みかんが 好きだから
あなたのしわがれた手が 好きだから

#

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夜風にあたる

ふと 昔の恋人に
今すぐ逢いたいと思った

とても遠い場所にいるのに

海を越えて

昔の恋人の 縁もゆかりもない場所で
わたしは 暮らしているというのに

そばには あなたが いるというのに
そばには ゆるぎない幸せが いるというのに

どうして泣きたくなるのだろう

昔の恋人なんて
顔さえ 忘れてしまったというのに
#詩 #詩を書く#詩作#ポエム

理不尽

猥雑さと

それに反する 愉快さと

丁寧にいきること
#詩 #詩作#詩を書く#ポエム

生きる

旅を続けることで
孤独は
深くなるばかりだ

旅をやめたいと思う

だけど
きっとやめることをしない

旅は
自身が終わるその日まで
ずっと つづく

言い訳をしても
狡猾であっても
楽観的であっても

孤独は
そばにいつもいる

旅を やめることをしない
#詩 #詩を書く#詩作#ポエム

Tシャツと花火

きりりと 冷たい夜風に
わざと Tシャツで
表にでて

夏のあいだに
できなかった花火に火をつけるあなた

伏し目がちに 言葉を辿るとき

今こそ
私たちは別れるべきなんだと

思い込んで躍起になる

やり残したことは
きっと 花火だけではない

私たちは
あやふやな言葉ばかりを
味方につけて

少年だった頃の事を
しきりに 話す

なんにも 知らない時を
懐かしんで

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潮の香りを纏った夕方のうすい月を わたしは見ている

海なんて 全然近くないのに
どうしてだか
潮の香りがした

身体の芯の部分に
降りてきた
夕方のうすい三日月

潮の香りをまとったそれは
わたしを
幾分か 動揺させる

どこにも行ってないのに
ずっとここにいるはずなのに

わたしは
異国の空を見ている

身体の芯の部分に
降りてきた
夕方のうすい三日月を見ている
#詩 #詩を書く#詩作#ポエム

若人

過ぎた時間を
自分の記憶以外の方法で
形にして残せないのは
とても残念なことだ

わたしは
ぜんぶ残したい

本当は
一生懸命だったんだ
その刹那

納得していたかどうかはわからない

もどかしくて

時間がないんだと
思っていた

こんなにも時間を持て余してしまうことなど
ただの一度もあろうはずがないと信じた

記憶以外の何かがあればいいのに

自分の記憶が
歪曲されてしまわないように

時間を

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天神祭

暗いみなもに
おぼろい明かりが 

祭囃子のかけごえとは
うらはらに

なんだか ひどく 切なかったりする

見つめているのは わたしたちだけではない

今夜ここにいるわたしたちの
誰も見てないだろう
真夏の満月が
わたしの頭の上にいる

きっと見ている

こんな祭りの夜の様
#詩 #詩を書く#詩作#ポエム

無題

窓を開けたら
少しだけ欠けた月が
紺碧に溶けていた

ああ、優しいな、と思った

ときおりぬける
暑い夏の
生ぬるい風が

わたしの足をさらう

旅の途中で出逢った
走馬灯のような 人たちが

きっときっと
満ち足りた気持ちで一日を終えていると
信じたい

わたしは

紺碧に溶けた
少しだけ欠けた月に

目を閉じて
願いをかける
#詩 #詩を書く#詩作#ポエム