マガジンのカバー画像

記憶の中の波間にゆれる

50
書いた詩を まとめています。
運営しているクリエイター

#文学フリマ

深海魚

あまりにも 唐突で
わたしは 戸惑って

わたしを守ってくれるものを
所在なげに 捜している

重力に逆らった重い言葉を
深海では
それは きっと 日々の果てに あるものと
#詩 #詩を書く#詩作

片方だけ

朝霧の
湿っぽい空気に
黄色いぺたんこのパンプスを
片方 捜して

とても大切なものなの

片方の靴では
あなたの元に行けないわ

朝霧に
湿っぽい空気に
深呼吸して

黄色いぺたんこのパンプスを
片方 捜して

わたしは

いつまでも 待っている
#詩 #詩を書く#詩作

ある地点より

しめきった安宿の窓に洩れる

日の光りに

生の無意味さと

死の自然さと

生きているという不思議を
#詩 #詩作

無題

打ち捨てられた 空き缶みたいに
ぺたんこになった

気持ちを思うと
もう 容赦ないくらいの

あなたは
どこにも いない

泣いたりなどしない

打ち捨てられた 空き缶みたいに

それでも
生きなければならない
生きなければならない
生きなければならない

果実

あなたは あなたのしわがれた手で
夏みかんをむいた

ベタベタするから
むくのがキライ、と

わたしが 言ったから

あなたは なんでもしてくれる
わたしが 望むことを

夏みかんに 蜂蜜をかけて食べると おいしいよって
わたしは あなたのしわがれた手を撫でながらいう

あなたを 失ったら
わたしは きっと 悲しい

夏みかんが 好きだから
あなたのしわがれた手が 好きだから

#

もっとみる

理不尽

猥雑さと

それに反する 愉快さと

丁寧にいきること
#詩 #詩作#詩を書く#ポエム

あまのじゃく

あんなに 望んでいたのに
いつしか
アラを見つけてつつくみたいな
うがった 大人になりました

でもきっと
でもきっと

わたしは 今のほうが好き

力は 抜けていたほうがいい
ちょっとくらい 毒があってもいい
#詩 #詩を書く#ポエム

くちなしの花

あ、くちなしの花のにおい、と
祖母が言った

有るのか無いのかわからないような
ほそい釣り糸のような
そんな香り

この日から
くちなしの香りは
祖母の香りになった

このまま 錦市場に行って
お魚を買って帰ろう

くちなしの花の香りは
じんわりと 汗ばんだ肌に まとわりつく

今年も 京都の夏は とてもあつい
#詩 #詩を書く#タイムラグ#ポエム

若人

過ぎた時間を
自分の記憶以外の方法で
形にして残せないのは
とても残念なことだ

わたしは
ぜんぶ残したい

本当は
一生懸命だったんだ
その刹那

納得していたかどうかはわからない

もどかしくて

時間がないんだと
思っていた

こんなにも時間を持て余してしまうことなど
ただの一度もあろうはずがないと信じた

記憶以外の何かがあればいいのに

自分の記憶が
歪曲されてしまわないように

時間を

もっとみる

真夜中に目が覚めると碌なことがない

しらんだ夜に

きっとこれは
人混みのために委ねられた
安心した光りと

異質で
どこか 同じ

いましがた
もう逢うことはない

あなたにだけ教えたい

さわがしい花火みたいな
真夏の満月
#詩 #詩を書く#詩集#ポエム

天神祭

暗いみなもに
おぼろい明かりが 

祭囃子のかけごえとは
うらはらに

なんだか ひどく 切なかったりする

見つめているのは わたしたちだけではない

今夜ここにいるわたしたちの
誰も見てないだろう
真夏の満月が
わたしの頭の上にいる

きっと見ている

こんな祭りの夜の様
#詩 #詩を書く#詩作#ポエム

無題

窓を開けたら
少しだけ欠けた月が
紺碧に溶けていた

ああ、優しいな、と思った

ときおりぬける
暑い夏の
生ぬるい風が

わたしの足をさらう

旅の途中で出逢った
走馬灯のような 人たちが

きっときっと
満ち足りた気持ちで一日を終えていると
信じたい

わたしは

紺碧に溶けた
少しだけ欠けた月に

目を閉じて
願いをかける
#詩 #詩を書く#詩作#ポエム

シスコの少年

芝生の庭を横切って
玄関のポーチに腰掛けた
ジーンズのすそのほつれを気にしながら

世界が
ひだまりの色に染まる時
在ることが

あなたの髪の色と
とても似ていて

僕は ちいさくため息をつく

きっとそこに在るのに
探し物がなんなのか僕は知らない

あなたは 笑うだろうか
若い僕の 憂鬱の理由

恵まれているのよ
悩みがあるなんて、と

あなたは いうだろう

世界に無関心

もっとみる

記憶

どれもこれも
いい加減で

呆れ返るほどあからさまに愛したり
辟易する

もう二度とごめんだ

優しすぎる
子供すぎる
わがまますぎる

だけど
どうしても切れない
だれのことも愛さないあなたとの細い糸

いいえ
切る気がないのは
まぎれもない

わたしひとりだ
#詩作 #詩を書く#詩#ポエム