祖父との思い出 後編
帰りの車内は最悪の雰囲気でした。
運転席から伝わってくるトゲトゲしい感情が、後部座席に座っている私にもビンビンと伝わってきます。
(30年前は飲酒運転も今ほど厳しいものではなかったです。あしからず・・)
祖父の家から自宅までは車で5分ほどですが、非常に長く感じられました。祖父からもらったガラス細工を2つ抱えた私は、早く家についてくれとただただ祈るだけでした。
何度かの信号待ちを過ぎ、ようやく自宅に到着しました。
私はとにかくこの重苦しい車内から逃げ出そうと、車が停止するや否や、勢いよくドアを開けて飛び出したのでした。
その時・・・
「パリン!」
あれだけ必死に守ったトリックワイングラスを、落としてしまったのでした。
私は大泣きに泣いて、そのまま自室の布団に潜り込んで、ただただ泣き続けました。
父親は、あまりにもドジな私に怒る気も失せたのかもしれません。
ただ一言、
「執着して手に入れたモノなんて、結局身につかないんだ!」
そう、冷たく言い放ったのでした。
数日後・・追い打ちをかけるように、
『「相続争いを見た様で、とても悲しかった・・」と祖父が言っていたぞ』、
と父から聞かされたのでした。
あの事件があってから、私は泣くことはなくなりました。
同時に、すごく欲しいものや大切にしたいと思えるようなモノもなくなったように思います。
「所詮、いつかは壊れてしまうんだ・・」
私の人生哲学の一つが、その時に形作られたのでした。
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棺の中で横たわっている祖父の遺体を見ながらこのことを思い出していた私は、不意に大きな感情の波に襲われたのでした。
それは、あの日から抑え込んでいたさまざまな感情が一気に噴き出したようでした。
そして、妻や子供たち、大勢の親戚がいる中で、私は大号泣をしてしまったのでした。
事情を知らない親戚からは、
「おじいちゃんのことがとても大好きだったんだね・・」
などといいながら、慰めてくれました。
葬式で泣いていた時の私は、たしかに小学4年生に戻っていたと思います。
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