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『下午のまち銭湯』⑭竹の湯(麻布十番)

銭湯は昼下がりに行くに限る

東京銭湯デッドスポットへ

東京の銭湯の分布地図を見てみると、銭湯が密集してるポイントがいくつかあることに気づく。上野浅草や蒲田など。逆に皇居の西側赤坂あたりを中心に銭湯が全然ない。スカイツリーの周りはたくさん銭湯があるのに東京タワーの周りには銭湯がない。

麻布十番にまち銭湯があるというのは以前から知っていた。六本木にある銭湯と紹介されることもある。いつかはとは思っていたが六本木に来てついでに銭湯という気分にもならず放置していた。だが、あらためて場所を見ると六本木というより田町や三田に近い感じ。田町、三田ならわりと銭湯と相性が良い街かもなと。

田町駅の近くに爆盛り、アブラギッシュで有名なラーメン屋があってそこに並ぶついでに行ってみようと出かけることに。

銭湯の開店が15:30なのでそこにあわせて14:30ちょっと前にラーメン屋に行ったのだけれどランチの時間を過ぎたけどやっぱり並んでいる。銭湯に入る前なのでニンニク入れなかった。

一生懸命食べてちゃんと完食。二か月分くらいのラーメンを食った気分。胃を休めつつ食後の運動もかねて銭湯まで歩く。しばらく歩くと東京タワーが見えてくる、しばらく整理整頓された東京の街並みを歩くと麻布地区に突入。

この場所に銭湯がある理由がなんとなくわかる。要するにここは住宅街なのである。行きかう人たちから生活感が感じられる。

くねくねと細い路地をいくつか曲がって目的の地「竹の湯」についた。

竹の湯

密集した住宅の中に収納されているといったかんじでマンション一階部分が銭湯になっている。通りに面した側がガラス張りになっていて中の様子が見える。銭湯の前にはたくさんの自転車が止まっている。

入店すると正面にすぐ下駄箱がある。鍵はシリンダー式になっていて何やらカードがついている。フロント番台で料金を支払い脱衣場へ向かう。

脱衣場は最近支流になってきたスポーツジム風のものでこのあたりは麻布十番にあったおしゃれなつくり。下駄箱のカギに着いたカードがロッカーキーになっているになっているのかと思いきやそういうわけでもなく、ロッカーは普通のカギがついていて内部にカードを入れるようになっている。カードと鍵の二重ロック方式。なるほど。一人で複数のロッカーを使うマナー違反を防止しているのだな。

浴場との仕切り扉の上には西洋の教会よろしくステンドグラスが設置されている。この辺は六本木のお膝元ということでちょっと先進的な遊び心といった感じ。

かららら~。扉を開けて中に入る。

こ、これは・・・

意外と普通

この竹の湯、永福町にある吉の湯とは姉妹店の関係にあるそうだ。吉の湯は街銭湯にしてはかなり大規模な銭湯だった。だから僕の中では勝手にその規模のものを想像していていたし、麻布という場所からしてデザイナーズ銭湯っぽいんだろうとかってに思い込んでいた。

永福町「吉の湯」

しかししかしその実態は、スタンダードな街銭湯。一般的な街銭湯の中でも割と小規模なサイズといっていい。

入ってすぐ右に水風呂立ちシャワーがあって、少し小道のような構造の先の左手にサウナの入り口がある。このサウナは有料。カランは両壁と中壁を挟んでの配置で17個と少なめ。あらかじめ椅子が設置されている。

桶は白無地のプラスチック丸桶。浴槽は正面に二つ配置されていて左側が主浴槽で広めの造り。右は深風呂になっている。

さてカランに移動しようかと思ったけれど、困った。空いてない。開店時間の15:30には間に合わなかったんだけどまだ開店から30分もたっていないのに満席大盛況。どうしようかな~と思ってもっとじっくり探してみると、浴槽側に一つ空きがあるのを見つけた。

カランに移動しお湯を出す。熱い。これは水で薄めなきゃ使えないな。カラン周りも壁も非常に綺麗でメンテナンスがしっかりしている。備え付けの石鹸類はないので、持参したものを使う。

身体を洗浄して浴槽に向かう。ペンキ画はないけれど正面壁に大きな船のモザイク画が描かれている。青と白基調の非常にさわやかなものだ。浴槽に目をやるとこれが一転。真っ黒。主浴槽も深風呂も両方ともだ。

ここのお湯は天然の黒湯を使用している。東京ど真ん中六本木で温泉なのである。なるほどこれが混雑する理由か。

主浴槽の方から。ジェットバスが二つ付いている。しゃぽんと足を入れる。温度は41度くらいになっていた。

黒湯は少し粘り気がある。トロッとした肌触りが気持ちいい。湯に入りながら浴場内を見渡す。マンション銭湯なので天井は高くないけど隣の女湯とは空間共有でカコーンと桶の音が聞こえてくる。

カランはあいかわらずの満席状態。錦糸町の黄金湯も昼から混んでいたけれど、サウナ利用の若者で混んでいるという感じじゃない。入浴の客が多い。年齢層は結構高め。でもこの時間の銭湯にいるリタイヤした高齢者って感じでもない。

活気がある。皆仕事人というか人によってはただならぬオーラを纏っている人もいる。このひとたちは近所に住んでる常連の人なのかなぁ?この辺で働く早退ビジネスマンなのか?夜から仕事の人なのかな?こうやって銭湯に来る人達を観察してあれこれ想像するのも楽しい。

入口から一人外国人が入ってきた。アーノルド・シュワルツェネッガーの骨格に厚切りジェイソンの顔面のこの男は、タオルを肩に引っ掛け足早にカランに。さっとかけ湯をして。浴槽へ向かってくる。そのさまが江戸っ子の仕草でちょっと笑えてしまう。厚切りジェイソンはぼくの横でジェットバスに入ると本当に熱心にジェットバスを堪能していた。背中のあらゆる場所にジェットを当てながら顔が真剣で。国際メトロポリス六本木の神髄をみた。

深風呂のほうに行ってみる。こっちは熱湯風呂になっている。温度は44℃なので熱すぎて入れないという温度でもない。ゆっくりじんわり黒湯を楽しむ。温泉の効能か熱い湯のせいなのか体が一気に火照ってきた。

水風呂に移動。なんとなんと水風呂も黒湯である。ここの浴槽はすべてが黒湯なのだ。水温は14℃。サウナ設置の銭湯なので冷ため。入水すると黒湯の香りがむわっとして粘度のある水がぴたっと体に吸い付くのがわかる。一気に体が冷えてゆく。でも黒湯で火照った体内部の熱さはまだまだ元気だ。それが皮膚直下でしっかり均衡している。これはいい。

カランに戻りぼーっとする。最初は熱くて使えなかったカランのお湯も不思議とそのままつかえるようになっている。もう一度主浴槽に行って交互浴を行う。皮膚がピリッとする。となりをみると厚切りジェイソンがまだジェットを堪能している。背中が痛くならないのかな?体はシュワちゃんだし背筋も発達してそうだからだいじょうぶなのだろう。筋肉は正義。

十分に都会の黒湯を堪能。脱衣場にもどる。服を着て暖簾を潜る。フロント番台横のベンチで少し休憩。常連さんと思われるおじさんが番台の人と会話している。

おじさんが言う。
「最近こんな早い時間なのに若い客が多いのはなんでかね?前までじじいばっかだったのによ。何がおこってんだ?」
と番台さんに愚痴っていた。

おじさん、それはサウナの仕業ですよ。心の中で呟きながら夕方の麻布十番へ帰路に着くのであった

銭湯の詳細


『麻布黒美水温泉 竹の湯』[所在地]東京都港区南麻布[最寄り駅]東京メトロ南北線「麻布十番」駅 徒歩5分 [営業時間]15:30~23:30 [定休日]月、金曜日[入浴料]480円[サウナ]入浴料込み900円(2時間)[ドライヤー]20円



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