見出し画像

指す将順位戦7th自戦記 B級3組 1回戦 (vs える11級[543])

前回の記事でも軽く触れたように、指す将順位戦に参戦することにした。

これまでの将棋ウォーズを使った棋戦と大きく違うのは持ち時間で、切れ負け将棋で培った攻撃的な時間の使い方や短い持ち時間であればあるほど力を発揮するマイナー戦法(角換わり腰掛け金やさい式相掛かり, ドルフィン流, etc.)が15分60秒の中どこまで通用するか

対局の中でこのルールにマッチした戦い方を見つけていきたい。

【対局前】

◇対局相手の印象

居飛車党2手目84歩としてくる正統派。
相掛かりが苦手とのことだが2手目84歩党の時点であまり信用できない。果たしてどれほどのものか……。
3年間のブランクがあるようなので昔の形を指してくるかも。

◇対戦成績

初手合
そもそも指す将順位戦自体初参加なので対局相手のほとんどが初手合。
棋風や具体的な指し回しに関しては未知数で、これから掴んでいきたい。

◇事前準備

 [▲先手番]

2手目84歩としてきてくれればこちらの注文が通るので、そうなれば相掛かりで挑む予定。
える11級の具体的な駒組みがわからないので幅広く対策する。
ちょうど先手番用に用意していた相掛かりの指し方が結局後手番になってしまって使えなかったことがあったので、それを丸々運用することにした。

想定局面①
最新型でじっくりした戦いになった場合の進行。
旧型や急戦模様の展開もあり得るが、そういった場合の大まかな指標も上リンク先参照。


 [△後手番]

こちらが後手番の場合2手目84歩で相手の作戦に追随して戦っていく。
相掛かりをやらないなら角換わりになるだろうか。

角換わり模様の進行に対しては色々な指し方があるが、今回は素直に角を換えて相手の得意形を受けて立ってみようと思う。

角換わりに関しても、える11級の具体的な駒組みがわからないので対腰掛け銀と対早繰り銀の指し方をどちらも用意しておく。

想定局面②
相手が旧型に組んでくる可能性もある。


想定局面③
今回は早繰り銀にはこちらも早繰り銀で対抗するつもり。
端歩の突き合いの有無や玉の位置などで成立する攻めが変わってくる難しい戦型。


棒銀は可能性が低いので特別対策はしないが、もししてきたら普段通りの指し方でいくつもり。
右玉には最近気になっている変化があるのでこの機会に投入してみたい。


◇対局前まとめ

先手番なら相掛かり、後手番なら相手次第だが恐らく角換わり
想定外の戦法には特に奇を衒わず普段通りの指し方で。
実戦を通して時間の使い方を掴んでいきたい。



【対局開始ッ!】

先手:SaisokuAmanogawa(571)
後手:scare_crow(543)

2六歩 8四歩 2五歩 3二金 7八金 1四歩 3八銀 3四歩

先手番となって、戦型は事前の予想通り相掛かり

この時点で える11級は約1分を消費し、最序盤ながら工夫を見せてきた。
右銀の位置を明示せず飛車先も突き越さず、角の活用を優先しているように見える。

対するこちらは6秒でここまで指している。出来るだけ中終盤に時間を投入したいからだ。

34歩とした瞬間に24歩といくのが相掛かりを指していて掴んだ感覚。33角と歩交換を阻止される直前に動く。

2四歩 同 歩 同 飛 2三歩打 3四飛 8五歩 9六歩 6二銀

飛車先の歩交換に成功。
ここから34飛と横歩を取れるかが肝になってくるが、本譜は素直に23歩打と受けてくれたのですんなりと横歩を取ることに成功。

後手は保留していた飛車先を伸ばし、態度を見せずにいた右銀も62の位置に定まった。

最序盤の後手の工夫が消え、その上で先手は横歩を取ることに成功。これでこちらの作戦勝ちを意識した。

しかし、作戦勝ちを勝ちにするのがどれほど大変か……。
作戦勝ちといえど形勢は互角の範疇であり、まだまだ気は抜けない。

一先ず76歩とこちらも角を活用する
相掛かりの部分的な感覚ではこのタイミングで86歩と後手も飛車先の歩交換を試みたいが、この形では先手の飛車が34にいるため22角成が入ってゲームセット
34飛と横歩を取った手は単に一歩得したというだけでなく、こういった筋も生み出しているのだ。


7六歩 8八角成 同 銀 3三角打 6八玉

こちらの角道が開いたタイミングで角交換する展開に。

お互いが角を手持ちにすることで緊張感が高まる。
うっかり王手飛車などかけられないように注意を払わなければならない。

……と思いきや、える11級はすぐに33角打再び角を設置
先に角を手放してもらったのはこちらにとって得だが、嫌な位置に角が設置されたのは確かに厄介。
この角を攻めのターゲットにすることを意識した駒組みにしていきたい。

画像の局面で完全に経験の多い形から外れた上に手が広く、初めて1分以上長考する。
相掛かりの玉の位置は58か68であることが多いが、角を換える展開なら68玉の方が良いという感覚。
代えて77銀もあったが、いつでも角を切って飛車と連携して攻めこんでくる可能性があり少し嫌だったのと、77の地点には銀ではなく別の駒を持っていきたかった。


8六歩 同 歩 同 飛

その駒とはズバリ桂馬なのだが、この局面でいきなり77桂とするのが好手だった。
例えば22銀などと手待ちすると85歩打で後手の飛車を閉じ込める狙いだ。76飛で脱出できるが84飛が厳しすぎる。71金という精一杯の受けにも82角打から強く迫っていく。
以下72金91角成83歩打に81馬と飛車を見捨てるのが強い指し方。84歩72馬と進んでみると後手玉がかなり危ない。先手陣は飛車を持たれても大丈夫な形で先手勝勢だ。

本譜は87歩打と受けたために飛車を閉じ込める変化を無くしてしまった。


8七歩打 8二飛 7七桂 4二玉 3六歩 2二銀 3七桂 9四歩

87歩打82飛のやり取りを入れてから77桂で遂に77の地点に桂馬がきた。後手が角を切って暴れてきたときに角銀交換ではなく角桂交換になり、77同銀と形良く取り返せるのが一つの安心材料。

そして36歩から37桂両方の桂馬がスタンバイ完了
天使の跳躍の下準備が整った。

右桂が45桂と跳ねた手が33の角に当たっており、角を攻めのターゲットにする狙いは成就しつつある。

画像の局面で本譜は86歩と突いた。
「相掛かりでは部分的に出る手」である。
銀冠を目指しており、68玉型とも噛み合っている。

ちなみに86同飛と取ると87銀82飛に83歩打同飛84歩打82飛83角打で先手良し。
後手は序盤で銀を72ではなく62に配置したことが祟っている。

本譜の展開でも悪くはないが、後手が94歩と突いてきた手を見て95歩と仕掛ける面白い手があった。
95同歩に93歩打。
同香に94歩打とできるのが34飛と連携した攻め。
同桂には95香。以下44角と34の飛車の横利きを止める手には75角打がまた面白い手。次に93香成とされてはたまらないので92歩打と受けると93香成同歩に54桂打が決まる。

対局中は全く見えていなかったが、4段目に飛車がいるときの攻め筋の一つとして覚えておきたい。


8六歩 2四歩 8七銀 2三銀 3五飛 3四歩打

お互いに銀冠を構築して画像の局面。

飛車交換してこちらが良ければ85飛、悪くなるならその他の場所ということになる。
ここは今後の指し方を左右する岐路と見て1分ほど時間を投入し、85飛飛車交換する変化を選択。
後手陣より先手陣の方が飛車の打ち込みに強いと判断した。

8五飛 同 飛 同 歩 8九飛打 7九飛打 同 飛成 同 玉 7一金

飛車交換をした直後、後手から89飛打とされたが79飛打で大丈夫。
89同飛成同玉で先手は手順に銀冠入城に近づいたようだが、将来桂馬を跳ばすことを考えると88玉とすることはできない。現在の位置か、もしくは89が最善形か。

71金と部分的にアヒル囲いのような形で大駒に強い形を作られて画像の局面。
ここで手がわからず、これから後手陣に飛車の打ち込みの隙ができる展開がなかなか見えないので、それなら今 龍を作ってしまえと83飛打と指した。
次に直接厳しい狙いがあるわけではなく緩手かもしれないとは思ったが 形勢有利とみて、派手に動かずじわじわ良くなりそうな手を指そうという一手だった。

しかし、代えて84歩が更にじわりとした好手だった。
単純に次の歩成を狙っており、後手も指す手が難しい。


8三飛打 2六飛打 2七歩打 3六飛 8四飛成 8六歩打

26飛打とされた手には27歩打と受ける一手……と思いきや82角打という攻めの手があった。

本譜の展開でも84飛成の局面で84の龍と36の飛を比べると先手の方が大駒がはたらいており優勢かと思いきや、86歩打という手が36の飛車と33の角の大駒両方を活用した好手

完全に見落としていた手で、2分以上の長考に沈んでしまった。
86同銀には76飛で、87金と受けても86飛同金77角成が激痛。先手は受けに適した駒がない。

この歩が取れず、放置もできないとなると不本意だが98銀と引くしかなかったが、形勢は互角に戻ってしまった

ソフトで検討すると 強く同銀と取って優勢だったようだが、以下76飛に75角打が見えていないと辿り着けない。
その局面から指し進めてみると確かに後手にとって思わしい指し手は無いが、75角打自体が強烈な決め手というわけではなく、龍がいるとはいえ角が狭い上に後手は飛車が死にそうになったら飛車角交換で済ませられるので対局中にこの格好で優勢だと読み切るのはなかなか大変に思える。

9八銀 7六飛 6八玉 7四飛

98銀と下がってもやはり76飛とまわって77の地点を攻めてくるが、68玉と受けてなんとかその場は凌いでいる。

ここで74飛と今度は後手から大駒交換の提案が。

確かに、後手陣は1回目の飛車交換より格段に飛車の打ち込みに強くなっている。
対するこちらも、多少は崩れたもののまだ飛車打ち一発で滅ぶほどの陣形ではない。
龍飛車交換ではあるが龍が強烈にはたらいているわけでもない。
そして74歩を突かせれば、どこかで55角から両取りの筋も生まれるかもしれない。

そんなことを考えて大駒交換に応じたが、これで形勢を損ねてしまった

大駒交換に応じるにしても、72歩打という手があったようだ。
金が動くと龍が攻めこんでくるので84飛同歩と大駒交換を入れてから61金とするが、83歩成と と金を作って早速後手陣に火種が発生している。
対して後手からはすぐの攻めがないので先手の優勢である。

後手から大駒交換を迫ってきて、先手が取って応じるか逃げて拒否するか という二択で考えてしまっていたけれど、一手指して後手から取らせることで8筋の歩を伸ばすという発想が必要だった。


同 龍 同 歩 4五桂 4四角 6五桂 6四歩

74同龍同歩と進んでみると意外と指す手がなかった。55角の筋ももちろんすぐには決行できない。

何故なら33の角がいるから。
ということでずっと前から邪魔だった角をいよいよ攻めていく。

45桂+65桂桂馬のダブルジャンプ

65桂と跳ねた瞬間99の香車が浮くが、取れば53桂成同銀同桂成同玉51飛打から攻めが続く。以下62玉には71飛成と飛車を切って、同玉に53角打から迫っていく。99角成53桂成のときに31玉なら66角打と馬を消してどうか。

横歩取り青野流における必殺技のようなものだが、この盤面では65桂の瞬間に55飛打という切り返しがあった。
終局後の一人感想戦で相当有力という結論に至った手で、両方の桂馬を狙いつつ53の地点をカバーしている。

本譜は64歩と左桂を攻めてきたのでそのままダイブ。

この時点でえる11級は既に秒読みに入っており、更にこちらが攻めているので実戦的には勝ちやすい展開に誘導できている。


5三桂成 同 角 同 桂成 同 銀 6三角打 4一桂打 5一角打

53桂成には同銀としてくる読みだったが、本譜は同角と取ってきた。

角を手持ちにしたことで指せた自分好みの一手が51角打
取れば52飛打から後手必至で先手は詰まないので勝ちになる。

この局面でこちらも持ち時間残り3秒。
ここからはいよいよどちらも秒読みの中指し進めていくことになる。


3一玉 8四角成 9五歩 5一飛打 4二金 7一飛成 9六歩 5二金打 7六桂打 5九玉 5二金 同 角成 4二金打 5一馬 3二銀

大駒を活用して後手玉に迫る。
突然の王手も59玉と引いておいて後手は継続手が難しい。

画像の局面では決め手が見つからず、58秒使ってギリギリで53馬と指したが33歩打で先手勝ちだったようだ。
33歩打以下52金は41馬から簡単に後手玉が詰む。
33同銀も41馬から同金同馬22玉23金で先手勝ち。
33同桂右は42馬引22玉32馬同玉41馬22玉23金でやはり先手勝ち。
33同桂左は42馬引同銀41馬同銀21金打同玉41龍22玉42龍32金打31銀打13玉22銀打23玉33銀成12玉32龍から後手玉が詰み、先手勝ち。左桂を跳ねさせたことで21金打が生じている。

今の自分には60秒でここまで読むのは至難の技。

ところで自分が秒読みのときは常に時間一杯考えるべきなのだろうか。
自分のことだけ考えれば限界まで時間を使うのが良いのだが、その時間に相手も考えることができてしまうので現状は自分の中で決断できたら着手するようにしている。


5三馬 同 金 4二金打 2二玉 3二金 同 玉 4一馬 3三玉

ここで本譜は45桂打から王手したが、42銀打とすれば詰んでいた。
終局後すぐに発見できた詰みで、これは実戦で指したかったし もっと時間を使って読むべきだった。

この将棋はすぐに詰ます必要はなかったが、詰むや詰まざるやの将棋ではこういう手が命取りになる。


4五桂打 4四玉 5三桂成 6八金打 4八玉 5三玉 5一龍 4四玉 5五銀打 投了
まで101手で先手の勝ち

先手玉は依然詰まず、今度こそ決めきり勝利した。


【対局後】

◇本局の振り返り

相掛かりで序盤から作戦勝ちにし、途中形勢を損ねたところもあったが 実戦的に攻めを繋いで、それが結果に結び付いたのは良かった。ゲームメイクは比較的上手くいったと思う。
検討していく中で知らなかった攻め筋を学べたので今後に活かしたい。
時間の使い方、特に秒読みはまだ慣れないが徐々に馴染んでいきたい。

◇最後に

指す将順位戦初戦で初勝利を飾れたのは幸いです。
ついでに一局をじっくり振り返って検討するのも半年ぶりくらいで充実感がありました。
ダイジェスト版でも手抜きはせずに急所の局面を抽出してるつもりなんですが、こうしてじっくりやってみると色々出てきますね。
B級3組の中でレートはかなり低い方なのでこの先苦しい戦いが続くと思いますが良い流れを持続させるために頑張りたいです。それじゃあ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?