2011年以降の貿易赤字を「なんとくなく」で化石燃料のせいにしてしまっていた。
どーも、分福茶釜と申します。
あまり深く考えずに、「なんとなく」で流してしまっていることってありませんか!?
例えば「訓読み」という言葉。
これ「訓」の字が既に音読みです。
よーく考えたら、ニューヨークヤンキースのファンがボストンレッドソックスのユニフォーム来てるようなもんですよね、コレ。
こういった「なんとなく」でスルーしていることは大小様々あれど、これらの中にはちゃんと検証しないと思わぬ判断ミスを誘ってしまうモノも中には存在します。
例えば、僕は2011年以降の貿易赤字の要因を「なんとなく」のイメージで「化石燃料の輸入増加に伴うモノ」っと勝手に思っています。
これが正しいのか、検証もせずに・・・。
「なんとなく」のイメージばかりで社会現象を捉えてしまうと、思わぬ読み違いをしてしてしまう可能性がありますので、化け狸的に、データ変化をさせて見ていきたいと思います。
ちょっと今回の話の前提を整理しておくと
まず、本題にはいる前に「今回知りたいこと(=検証仮説)」と「その仮説の前提」を整理しておきたいと思います。
今回僕が知りたいことは、以下の通りです、ジャジャーン!!
【検証仮説(知りたいこと)】
原発停止によって化石燃料の輸入増加していると思われるが、それが2011年以降の貿易赤字にどの程度影響を及ぼしているのか!?
【仮説の前提】
①2010年において日本の25%程度が原子力発電に頼っています。
(詳細に関してはコチラの記事をご確認ください。)
②2011年以降から原発停止となり、その多くを火力発電がカバーしています。
③火力発電のエネルギー原資は化石燃料となり、そのほぼ全てを海外からの輸入に頼っています。
日本の電源構成の推移
(出典:「日本のエネルギー2014」 資源エネルギー庁 - 経済産業省から引用)
④以上の①~③のことから、2011年以降から化石燃料の輸入が増加していると考えられますよね。
⑤また、2011年から貿易収支が赤字転落しています。
そのため、上記④⑤を踏まえると、化石燃料の増加が貿易収支の悪化に影響していると懸念されますね。
っということになります。
貿易収支の推移を見てみると
まずは、一旦スタート地点に立ち戻って、貿易収支の推移を見ていきたいと思います。
(※1:データソースに関しては文末にて記載)
見事に2011年から赤字転落してますが、これは言わずもがな、東日本大震災の影響と考えられます。
では、「2010年までは貿易黒字だったのが、2011年以降より貿易赤字に変わる」というのは、実際にどういったことが起こっていたと考えられるのか整理したいと思います。
貿易収支が黒→赤に変わるとき起きていることとは!?
2010年とそれ以降を比較した場合、上記1~3のケースのどれかに当てはまる変化が発生しているから、貿易収支が2011年以降に赤字になっているわけです。
当たり前っちゃー当たり前の話ですね。
っということは、2010年を基準にして、それ以降の年の輸出額、輸入額がどの様に変化しているのかを見ていけば、各年がどのパターンで赤字転落しているかが分かるわけです。
(※1:データソースに関しては文末にて記載)
(※2:データソースに関しては文末にて記載)
上記2つのグラフから、2010年を基準として考えると、2011~2012年は「1.輸入↑輸出↓」タイプの赤字転落であり、2013~2015年は「2.輸入↑輸出↑」タイプの赤字転落であることが判明しました。
とは言え、赤字転落のタイプが分かったところで、今回の「化石燃料の輸入増加が赤字転落に与えた影響度を推し量る」っという目的は達成できていません。
そこで、2010年からの貿易収支の悪化分を、①輸出額、②化石燃料(※)の輸入額、③化石燃料以外の輸入額の3つ要因に分解したいと思います。
※化石燃料は「石油」、「LNG」、「LPG」、「石炭」を対象としています。
貿易収支の変動額を3つの要因に分解してみると
なお、ここでは既に日本円に換算された金額を取り扱っています。
そのため、為替や原油価格の影響が既に織り込まれた影響度を見ているという点にご注意下さい。
【期間A】
(※2:データソースに関しては文末にて記載)
2011年に関しては、貿易収支悪化を100として各要因を分解すると
②化石燃料の輸入増 :41
①輸出減 :20
③化石燃料以外の輸入増 :39
となっていますね。
そのため、輸入の減少や化石燃料以外の輸入増もバランスよく影響していますが、最大の要因として化石燃料の輸入増加によるものと考えられます。
【期間B】
(※2:データソースに関しては文末にて記載)
2012年に関しては、貿易収支悪化を100として各要因を分解すると
②化石燃料の輸入増 :43
①輸出減 :27
③化石燃料以外の輸入増 :30
となっていますね。
最大要因が化石燃料の輸入増加である点は、2010年と同様ですが、輸入の減少と化石燃料の輸入増加による影響が増しています。
【期間C】
(※2:データソースに関しては文末にて記載)
2013年に関しては、貿易収支悪化を100として各要因を分解すると
②化石燃料の輸入増 :49
①輸出減 :-13
③化石燃料以外の輸入増 :64
となっていますね。
最大要因は、化石燃料以外の輸入増加となっています。
また、(2010年と比較すると)2013年以降から輸出は増加している点も特記すべき事項です。
【期間D】
(※2:データソースに関しては文末にて記載)
2014年に関しては、貿易収支悪化を100として各要因を分解すると
②化石燃料の輸入増 :47
①輸出減 :-29
③化石燃料以外の輸入増 :82
となっていますね。
2013年と同様の傾向が見られます。
【期間E】
(※2:データソースに関しては文末にて記載)
2015年に関しては、貿易収支悪化を100として各要因を分解すると
②化石燃料の輸入増 :6
①輸出減 :-87
③化石燃料以外の輸入増 :181
となっていますね。
最大要因は、化石燃料以外の輸入増加となっています。
また、(2010年と比較すると)2015年はかなり輸出が増加しているとともに、化石燃料の輸入に関しては2010年とほぼ同程度の水準まで落ち着いている様子です。
ここで、化石燃料の輸入額が大幅に減少している要因としては「化石燃料の輸入量が減っているから」というよりは「化石燃料の価格が下落しているから」と言った真因が存在していると考えられます。
注意点として
要因分解の冒頭にもお伝えしましたが、ここでは既に日本円に換算された金額を取り扱っていますので、為替や原油価格の影響が既に織り込まれた影響度を見ているという点を再掲させていただきます。
総括&今後に向けて
ザックリ言うと、
今回知りたいこととしては、
原発停止によって化石燃料の輸入増加していると思われるが、それが2011年以降の貿易赤字にどの程度影響を及ぼしているのか!?
今回分かったこととしては、
2010年と比較すると、2011~2012年においては「輸入↑輸出↓」となったため、貿易赤字に転落したと考えられます。
そして、その中で最大の悪化要因としては、化石燃料の輸入額が増えたためと思われます。
一方で、2010年比較すると2013~2015年においては「輸入↑輸出↑」型の赤字転落と考えられます。
そして、その中での最大の赤字要因は化石燃料以外の輸入額が増えたためと想定されます。
但し、今回は金額ベースでの要因となるので、為替や原油価格の変動分が織り込まれている点には注意が必要です。
今後としては、「一歩踏み込んで、化石燃料の輸入額が増えた真因は『為替』によるモノなのか『原油価格』によるモノなのか!?」をよりブレイクダウンしていきたいと思います。
【参考】_為替&原油価格の推移
(引用:JXホールディングス 原油価格推移)
(引用:JXホールディングス 原油価格推移)
(引用:M2Jマネースクエアジャパン ヒストリカルデータ 月足)
【データソース】
※1:財務省 貿易統計 輸出入総額の推移 を加工して利用
※2:財務省 貿易統計 世界 年別(輸入)を加工して利用
【最後に御礼】
狸的駄文に最後までお付き合いいただきましてありがとうございました。
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ブログ名:G5+3:古来の組織 群馬支部
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