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創作小説

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創作なんて大それたものでもないお話たち
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#アラサー

枯れ尾花だらけの荒野を歩く

枯れ尾花だらけの荒野を歩く

恐らく一度目ではないアラームに起こされて目を覚ます。手探りでベッド脇のスマホに手を伸ばし、スヌーズを解除して大きく息を吐いた。のそりと身体を起こして、カーテンも開けずにおぼつかない足取りでトイレに向かい、少しドキドキしながら便座に座って下着を確認する。「まだ」だった。今日で生理予定日から十日目になる。

もともと生理は不順な方で、予定日を避けて旅行の予定を入れたのに、結局ずれて温泉はお預け、といっ

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Pasta di Status Quo

Pasta di Status Quo

平井くんとの出会いは、マッチングアプリがきっかけだった。でも、私と平井くんがマッチングした訳ではない。平井くんがマッチングした別の女性と食事をしていたカウンターの隣に、私、望月みのりとコトネが座っていたのだ。

「ねぇ、もっちーの隣の二人組、絶対アプリきっかけのデートじゃない?あの感じ、初回かな?」
コトネがわくわくした表情で私に小声で耳打ちするまでメニューに夢中で気づいていなかったけど、チラッと

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きっと隠し味は友情

きっと隠し味は友情

料理が好きな夫は時間がある日にちょっといい出汁を使って味噌汁を作ってくれる。それはもちろん美味しい。
でも、こんなこと言ったらバチが当たるんだろうけど、具材の彩りまで考えられた丁寧な味噌汁を飲みながら、夜中の3時までダラダラ飲んだ次の日の朝、気持ち悪いとか頭痛いとかむくみヤバいとかうだうだ言いながら、たろちゃんと飲むインスタントの味噌汁を恋しく思っている私がいる。

独身時代に戻りたい訳ではないし

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