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三月うさぎのような僕


「僕」油彩ガラス絵  13 × 10 ㎝ 2024

 不思議の国のアリスに登場する三月うさぎ。
三月のうさぎは狂ったように騒がしいと言われるところから
ルイス・キャロルがそう呼んだということのようです。
アリスはうさぎの穴からこの三月うさぎに導かれて(?)ワンダーランド
へと迷い込み、不思議というよりも様々な変な出来事に遭遇することになるのです。 

 この三月うさぎは大きな懐中時計を持ち、時間に追われ自由を奪われて
います。その他この世界のいろいろな住民たちとの出会い。
動物も花たちも人間の言葉を話し(英語?)アリスの外見をみて奇異な存在として差別をし、いじめます。
トランプの兵隊たちは「恐怖政治」により白薔薇を赤く塗り替えるという
意味不明の不毛な作業をさせられています。
従わなければハートの女王に首をはねられてしまうのです。
三月うさぎの庭園で催される いかれ帽子屋 との(女王に時間が止められているため)永遠に終わらない「お茶会(気違いパーティー)」
このあとの会話は実に哲学的(?)で

「手に入れたものが好き」と「好きなものを手に入れる」は同じなのか

「眠るとき息をする」と「息するときは眠る」を同じにしてしまうようなもんだ

などというような うさぎとヤマネ(ネズミ)のやり取りは世の中の
あやしさ、曖昧さ、不条理を問うているようにも想えるのです。
キノコの上で水タバコをふかし説教をする青い芋虫はワンダーランドで
随一の賢者なのですがなんだかどこか無責任なようでもあり彼はやがて蝶になります。

 この作品は刊行が1865年となっているのですが、そこに描かれているのは
まるで現代社会そのもののように想えてなりません。
キャロルは160年前の昔に今現在われわれが生きている社会のことを、
いやもしかしたら、もっと先の未来を見ていたのかも知れません。

三月うさぎの穴は未来(われわれの現在)に繋がるタイムトンネル
だったのでしょうか。
うさぎはアリスと共に僕たちをどこへ導こうとしたのでしょうか?

 アリスの年齢は「不思議の国~」では明確ではありませんが、続編の
「鏡の国のアリス」では七歳と半分という風に記されているようですので、
不思議の国を旅したアリスもそれくらいの年齢だったのでしょう。

 うさぎ(兎)は古今東西おおむね縁起の良い生き物として扱われているようです。子孫繁栄、長寿、飛躍などなど。

絵本やアニメでのミッフイー、ピーターラビット、バッグスバニーなど。
日本の昔話でも「うさぎとかめ(の競争)」「因幡の白兎」「カチカチ山」
などで登場しています。
うさぎは人びとにとってもキャロルにとっても、きっとすごく身近な
キャラクターだったからなのでしょう・・・・ か。


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