神田正信 Masanobu KANDA

自身の遥かな記憶に幻想が混在した物語をモチーフとし絵にしています。ご高覧いただけました…

神田正信 Masanobu KANDA

自身の遥かな記憶に幻想が混在した物語をモチーフとし絵にしています。ご高覧いただけましたなら幸いです。

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最近の記事

それは気がかりな夢からはじまる

 ある朝、グレゴール・ザムザは気がかりな夢から目をさますと 自分が一匹の巨大な虫に変身していることに気付きます。 わが身に襲いかかる何とも世にも奇怪で不条理な出来事(事件?)の勃発。 しかしカフカはこの不条理を読み解いたりはしないのです。 グレゴールはこの事態を困りながらもけっこう前向きに(?)受け入れて いるように想えますし、家族もすったもんだしながらも彼の世話をする のです。 しかしついには彼を見捨て、父親の投げつけたリンゴによる傷がもとで やがて彼は淋しく息絶えていくの

    • 記憶の憧憬 Ⅱ

      衣巻省三(キヌマキショウゾウ /1900~1978)という詩人に 「アイスクリーム」というとても短い作品があります。 ( セイゾウという表記もあるようです ) アイスクリーム 私の戀人よ あまりながくほつておくとお行儀が惡くなる              ( 戀人 → 恋人 )  気長に構えているとじきに溶けてその形がくずれていくアイスクリームを恋人にたとえているのが面白いと想うのです。 僕がこの詩、この詩人を知ったのはフォーク歌手の高田渡がこれに曲を付けて歌っていたか

      • 個展のお知らせ

        寺山修司は「人生なればこそ」で友情と対話について語っています。 ( 以下、引用 ) " 友情というのは、いわば「魂のキャッチボール」である。 一人だけ長くボールをあたためておくことは許されない。 受け取ったら投げ返す。 そのボールが空に描く弧が大きければ大きいほど 受けとるときの手ごたえもずっしりと重いというわけである。 それは現在人が失い欠けている「対話」を回復するための精神のスポーツである。 恋愛は、結婚に形を変えたとたんに消えてしまうこともあるが、 友情は決して何にも形

        • 三月うさぎのような僕

           不思議の国のアリスに登場する三月うさぎ。 三月のうさぎは狂ったように騒がしいと言われるところから ルイス・キャロルがそう呼んだということのようです。 アリスはうさぎの穴からこの三月うさぎに導かれて(?)ワンダーランド へと迷い込み、不思議というよりも様々な変な出来事に遭遇することになるのです。   この三月うさぎは大きな懐中時計を持ち、時間に追われ自由を奪われて います。その他この世界のいろいろな住民たちとの出会い。 動物も花たちも人間の言葉を話し(英語?)アリスの外見を

        それは気がかりな夢からはじまる

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        • 記憶の憧憬ⅡGallery Paper moon2024
          1本
        • 記憶の憧憬 Gallery Paper moon 2022
          1本
        • 顔 - FACE - 青木画廊Luft 2017
          15本
        • 番外編 ・ 「玻璃」という書物を知っていますか?
          1本

        記事

          スノウドーム幻想曲

          スノウドーム 天と地がでんぐりがえり 一瞬の嵐の魔法 それはきらめくグラニュー糖のよう 森がある 赤い屋根の小さな家が見える 白熊もいる ガラスの天宮 閉ざされた静寂の小宇宙 (本作品に寄せて)

          スノウドーム幻想曲

          さざめく夜には

            アメリカの詩人リチャード・ウイルバー(1921 ~ 2017)の詩に 「ヒキガエルの死 」というのがあります。 ( アメリカ現代詩101人集 /思想社1999 / P170 沢崎順之助 訳 )  ( 作中より引用をまじえながら紹介をさせていただきます ) それはヒキガエルが電動芝刈り機に足をとられ、ちぎられ、ひょこひょこと跳ねて庭の隅のシネラリアのほの暗い葉かげで静かに死に向かっていく様子をえがいたものなのですが、ボクはこの詩を読んだ時に何とも言いようのない新鮮なショッ

          個展

           青森市での拙作展 「記憶の憧憬」の様子をざっと紹介させていただきます。 ■ 会期 / 2022 , 8 .11 ~ 20 於 / Caf'e & Gallery ペーパームーン    ■ 以下、会場風景と作品の一部をご紹介させていただきます。     この一年 余り note に投稿されたものが主になっています。    ( 作品サイズ表記・額装含まず )  改めて「個展」という場を考えます。 個展とは、ここまでやってきたことを公開す

          哲学者は夢想するよろこびを知る?

                        「哲学者」        25 × 21 ㎝ 油絵具 / テンペラ乳剤混成 板 2017  詩的哲学者といわれるガストン・バシュラールの著作「空間の詩学」 (岩村行雄 訳 ちくま学芸文庫)を拾い読みしてみました。   人間をとりまくきわめて身近なさまざまな空間(特に小空間 ) ~ 家、部屋、抽出、箱、戸棚、巣、貝殻、片隅 、などなどを”哲学” して いるのです。 それらは単に形状の分析ではなくそこに存在する宇宙に想いを巡らせ・・・

          哲学者は夢想するよろこびを知る?

          番外編 ・ 「玻璃」という書物を知って いますか?

          ※ この画像( 表紙・装丁 )のキャプションは本頁末尾に記載いたします。 ■ 番外編として " 美しいと想う書物 ” をご紹介したいとおもいます。                  かつて關川左木夫というひとが刊行した「玻璃」という書物がありました。上の写真のそれは90歳で逝去した關川氏を追悼して翌 ’98年に刊行された 追悼号であり同時に終刊号なのだそうです。                          ボクはこれを然る友人から贈られたのですが添えられていたメ

          番外編 ・ 「玻璃」という書物を知って いますか?

          夜会服には仮面のまなざし。

                       「傷ついた仮面」 24 × 17.5 ㎝ 油絵具 / テンペラ乳剤混成 板 2017 仮面にはなぜだかパックリと傷のような裂けめが。                               外貌であるはずの仮面を外したなら果たしてそこに本当の素顔があるのでしょうか? 自分の内面にもうひとりの別な自分が潜んでいるような。              個性化されているのはむしろ仮面の方なのかも知れない

          夜会服には仮面のまなざし。

          はりぼては フ.フ.フ. と微笑み。

                      「空ろな肖像」 25 × 21 ㎝ 油絵具 / テンペラ乳剤混成 板 2017 ぼろぼろと表皮が剝がれていく張りぼての肖像。うすく微笑んでいる空ろ(うつろ)な張りぼては云わば中身のない外づら。世間に向けた外貌に他なりません。肖像とはもうひとりの自分であり、もしかすると良心はそこにあるのかも知れな

          はりぼては フ.フ.フ. と微笑み。

          やわらかな夜に蓮の花が咲いた。

                      「花はどこへいった」 25 × 21 ㎝ 油絵具 / テンペラ乳剤混成 板 2017 メリメリと内側から顔を破り裂き出現したこの蓮のようにみえる花は果たして脳髄から湧き出でそれを養分とし花開いたのでしょうか。                 (蓮は泥の中から出て美しい花を咲かせるところから汚れなき花とされ特に仏教ではその象徴的な存在のようです。) 15年前になりますが上野の国立博物館で観た仏像展。多く

          やわらかな夜に蓮の花が咲いた。

          ひとすじの涙が。

                         「解放」 25 × 21 ㎝ 油絵具 / テンペラ乳剤混成 板 2017       ( noteホームのヘッダーに使用している作品です )      「顔」は人間を最も象徴する存在確認の「装置」ではないでしょうか。              親子4人が一つの部屋で寝ていた幼少期。わが家の長押(なげし)にはなぜか能面が飾られていました。否、今にして考えればあれはきっとレプリカだったのだ

          ひとすじの涙が。

          仄暗い部屋にピストルはまだ鳴らない。

                         「静寂」 23 × 16.5 ㎝ 油絵具 / テンペラ乳剤混成 板 2021 夜は五感をたたみこみ。探偵小説は読み終えました。もう誰も来ることはないのです。「ねえ君、牛乳のむ?」 ピストルが鳴るまでの沈んだながぁい静寂のひまに。 稲垣足穂の「一千一秒物語」を読んだ時、おもわず「なんだこりゃ!」とひとり呻いたのでした。  ショートショートよりも短いと想われる超短編(掌編?)が70編(改訂版)収録

          仄暗い部屋にピストルはまだ鳴らない。

          呼びかけるほどにそれは遠ざかる。

                      「角をもつ詩人」 25 × 21 ㎝ 油絵具 / テンペラ乳剤混成 板 2017 詩人はパラレルワールドを彷徨します。夢に導かれたもうひとつの世界の意識の旅。呼びかけても呼びかけてもそれは遠ざかっていくばかり・・・ 日本のモノノケである鬼の角は牛だと言います。鬼そのものが牛をモチーフとしているの

          呼びかけるほどにそれは遠ざかる。

          夜はじっと動かない。

                     「ふたつとない幸福」 25 × 21 ㎝ 油絵具 / テンペラ乳剤混成 板 2017 その闇はやわらかいけれど香りを放たない。音楽も聞こえない。じっと動かずただ沈黙しているだけなのです。 夜の暗さは想像力を刺激します。子供の頃、暗闇はちょっと怖かったけれども不思議を感じる空間でもありました。陰影はま

          夜はじっと動かない。