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〜人間はイモリに支配されるのか・・・!?〜映画「イモリ会議」

弱肉強食の世界となっている動物界。ヒトは、動物界の中でも比較的上位に君臨していると主張されています。その理由は『知能』。ヒトは、他の動物よりも知能が発達していることで生き抜く力があると考えられているようです。

生きるために『ネズミ』や『イモリ』などを実験動物として利用し、研究を繰り返し発展を遂げるヒト。この事情も弱肉強食世界のひとつ。

しかし、世界にはこんな一説も・・・。
それは「人間による科学技術の発展は、やがて人類の滅亡へ導くのではないか」という説。

実はこの壮大なテーマを映画にしたのが、今回ご紹介する『イモリ会議』です。

果たしてイモリとの共存を描いた作品で伝えたいことは何なのか?
『イモリ会議』制作の背景を深堀りしていきます!

<作品名> イモリ会議(スイス)
<作品時間> 15分56秒
<監督> Immanuel Esser & Matthias Sahli
<あらすじ>
人間は、長年イモリを実験動物として扱ってきた。しかし、ここはイモリとの共存を実現させた世界。やがて、イモリは人間にとって必要不可欠な存在となっていたのだった。

そんな、イモリとの共存システムを開発したある研究所。研究所では、人間とイモリが会話をし、弱肉強食の域を越えた共存世界を繰り広げていた。

一見、素晴らしい世界に見えるが・・・とある会議で今後のイモリとの共存について驚くべき事実が明かされる・・・!
人間は、イモリとの共存を続けていくことができるのだろうか?

◎イモリとの共存を模索するユニークな作品

映画『イモリ会議』のテーマとなっているのは『イモリとの共存』。
長年、イモリは人間の実験動物として扱われています。
イモリの類まれな『再生能力』に、注目している人が多いのも理由の一つ。

しかし、今回なぜ『イモリとの共存』をテーマにした作品が生まれたのか?
それは、冒頭でも述べたある一説があるからだと思われます。
それが「人間が産んだ科学の発展は、やがて人類の滅亡を招くのではないか?」という言葉。

この一説は、下記でご紹介するカヘル・チャペックが発した有名な言い伝えです。果たして、『イモリ会議』とどのようにつながっているのか注目ですね。

ちなみに映画『イモリ会議』は

パルディーノ・ダルジェント スイスライフ 国内コンペティション
パームスプリングス国際短編映画祭
ヌーシャテル国際ファンタスティック映画祭

など様々な映画祭の短編映画部門で賞を受賞する実績のある作品です!

◎作品のベースとなった「山椒魚戦争」とは?

今作品の制作背景の重要参考人ともいえるカヘル・チャペックという人物。
彼は、世界的に有名なチェコの小説家です。また、『ロボット』という言葉を生み出した人物としても知られているのだとか。

Wikipediaより

そんなカヘル・チャペックの世界を席巻した小説が『山椒魚戦争』という物語。

実は『イモリ会議』は、長く語り継がれる『山椒魚戦争』から大きな影響を受けた作品となっています。

『山椒魚戦争』のあらすじは以下の通り。

地中海で発見された知能を持つ巨大な山椒魚。この山椒魚(イモリ)たちは、驚くべき速さで繁殖し、やがて人間、山椒魚を労働力として利用できることに気づく。そして人間たちは山椒魚を使って海底の開発を進めるのだった。

山椒魚たちは人間に従順でしたが、次第に人間の技術や武器を学び取り、独自の社会を築き始めます。そして、山椒魚たちは自己の権利を主張し、人間との対立が深めるのだった。ついに、山椒魚たちは人間に対して反乱を起こし、世界中の沿岸都市を攻撃するのだった・・・。

カヘル・チャペックは『山椒魚戦争』を執筆するにあたって、2つの動機(考え)を明らかにしています。

⑴この地球上にこれまで花咲いて来たのは、人間による文明である。
 だが、それを唯一無二のものと考えるのは思い上がりというものである。 
たとえばミツバチやアリだって、好条件がそろえば、人間以上の文明を
 地球上に創ることができるかも知れない。


⑵その生物が、教養の点でも数の上でも人類を圧倒して、地球上の支配権を
 要求してきたら、いったいどうすべきか。

https://shakuryukou.com/2021/11/05/dostoyevsky512/

これこそが、映画『イモリ会議』に込められた制作背景の全貌。話が分かれば、少しゾッとしてしまう内容ですよね。

しかし、原子爆弾や化学兵器などが戦争に使われてしまったのは、まさにカヘル・チャペックが残した言葉通りの世界。

少し人間の『哀れな部分』が描かれていることをお分かりいただけたでしょうか?

◎会議で発せられた絶望を感じる矛盾

最も注目したいのが、映画の後半で行われていた『イモリ会議』の場面。
イモリとの共存を実現した世界で、ある女性が一石を投じました。

「すぐに人間よりもイモリの数が多くなる。人間の発展のためにイモリも存在し、人間はイモリを支配できると思っている。でもそれは違う。」

「我々はイモリと共存できるシステムを作ったが、それは崩壊する。もう、イモリなしでは生きていくことができない世界になってしまった。我々はイモリに依存して生きているんだ。」

これらの言葉はとても深いですね。
人間がイモリを支配して共存していたつもりが依存に変わっていた。もう、イモリなしでは生きていけないのに、このままではイモリが人間を支配することになる・・・。

この事実こそ映画『イモリ会議』の醍醐味ではないでしょうか。

映画に登場するイモリのキャラクターは、とてもユニークな姿をしていますが、裏に隠されたテーマは少しゾッとする背景でしたね。

改めて映画を鑑賞すると、新たな発見があるかもしれません!

<映画ライター/ shuya>


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