N国党・立花孝志と東京都知事選挙 ②

N国党・立花孝志と東京都知事選挙 ①の続編です。
東京都知事選挙へ向けて公約を9つ掲げた立花孝志氏、しかし、ホリエモン新党の立ち上げから今日までその公約には触れられていない。堀江貴文氏の著書「東京改造計画」の37の提言を公約としたホリエモン新党からの出馬を明言した立花孝志氏の思惑とは。

本記事では、東京都知事選挙に関して、N国党とホリエモン新党の両党で党首を務める立花孝志氏を中心に、客観的にその意図や可能性について述べていこう。

9つ公約と、ホリエモン新党37の公約

2020年06月18日に告示の東京都知事選挙への立候補を、05月07日に自身の動画で表明した立花孝志氏。その動画では9つの公約が掲げられたが、その後05月25日、港区長選挙への立候補者擁立と同時にホリエモン新党が設立された。その新党の公約は立花孝志氏の9つの公約ではなく、堀江貴文氏の著書「東京改造計画」による37の提言そのままであった。
(9つの公約の考察については、N国党・立花孝志と東京都知事選挙 ① をご覧ください)

05月25日に開かれた立花孝志氏による会見では、記者から「著書は読んだのか」(発売は05月30日)という質問が出ていたが、立花孝志氏は「読んでいないが、堀江貴文氏の考えには賛同する」としていた。(発売後に読んだという噂もある)

さて、ここで不思議に思うことは、立花孝志氏は東京都知事選挙へ、N国党ではなくホリエモン新党から出馬することを発表しているのだが、半月と経たないうちに全く聞かなくなってしまった9つの公約はどうするつもりのだろうか。自身の9つと「東京改造計画」の37と、全て合わせて公約に掲げるつもりなのだろうか。

東京都知事選挙に向けては、現職の小池百合子氏が前回掲げた公約が何も果たされていないことが話題になっている。つまり、世間では今、”実現可能な公約”について敏感になっていると考えられる。そんな中で、実現の可能性が薄いと思われる公約を多数掲げることは、国民(都民)の反感を買うことはあっても共感を得ることは期待できないのではないだろうか。

堀江貴文氏の著書「東京改造計画」は、確かにゆくゆくは自ずとそうなっていくであろうと思われる内容も多い(もちろん個人的に反対したい内容も含まれているが)。しかし、冷静にみるとやはり、堀江貴文氏らしいビジネス視点に見えてしまう。ビジネスを重視した政策は、得てして市民を苦しめるものに成りかねない。その点での議論などもまだ成されていないのだ。
(「東京改造計画」の本の内容については、堀江貴文氏の著作物であるため割愛する)

さて、この記事を書いている今日は06月08日である。東京都知事選挙の告示日まであと10日。それまでの間、立花孝志氏の会見は数度開かれると思われるが、自身の9つの公約、「東京改造計画」から取った37の公約、それらについて詳しく語られることはあるのだろうか。

引き続き、注視していきたいところである。

動向から見る、立花孝志氏の本質

立花孝志氏は自身の動画の中で、小池百合子氏 現職東京都知事の同姓同名を擁立する可能性をほのめかしている。直前まで検討するとはしているものの、すでに話してしまったことで、”いつもの話題作りのためのブラフ”ではないかとの見方も強くなった。明言はされていないため、真偽については現在のところ不明であるが、どちらにせよ、同姓同名作戦は失策であると言わざるを得ない。

2020年04月に行われた「衆院静岡4区補選」で、実験と称して実際に同姓同名作戦を行ったN国党 立花孝志氏。だが、静岡県民のみならず、全国的に「有権者に対する冒涜」として反感を買ったのである。結果、「衆院静岡4区補選」では予想を大きく下回る大敗を喫した。
(詳しくは、N国党・立花孝志と衆院静岡4区補選 ①~④ をご覧ください)

N国党 立花孝志氏の自己顕示欲・自己正当化の強さについては、これまでの記事で何度も述べてきた。一度口に出した発言を釈明・撤回しない彼の性格は、幾度となく墓穴を掘ることに繋がっている。
厳密に言うと前言撤回をしたことが無いわけではないが、立花孝志氏が前言を撤回するとき、必ず、「以前はこう言ったが正しくは~」という体を取る。これは、間違いを認めて訂正しているのではない。間違いを認めたくないが故に、様々な理由をこじ付けて正当化しているだけである。

その最たる例が”優生思想”についてだが、これまで何度も繰り返し指摘してきた点なので、ここでは詳細は割愛する。
(詳しくは、N国党・立花孝志党首の問題発言 をご覧ください)

「思いつきで喋り過ぎ」だと言う指摘が今も後を絶たないN国党 立花孝志氏だが、彼と彼の周囲の人々は”計画的”という姿勢を崩さない。
彼らの言う”計画的”とは、自身の言った事や計画したことを実行する。ということなのだろうか。確かに、その先に目標となる事はあるのだろうが、彼らの計画に”人心”は加味されていない。つまり、世論の動向は度外視されているのである。

2019年07月の参院選で議席を獲得し、N国党が公党となり、間もなく立花孝志氏が参議院議員を辞職して以降、右肩下がりを続ける支持率。それを実感させる選挙での連敗、複数の刑事告発、関係先への家宅捜索、刑事起訴。
立花孝志氏本人以外には、N国党関係者や支持者を含め”計画的”と言う彼らの口からこれらについて語られたことは無い。

党勢拡大を目的と称し、計画的と豪語するN国党 立花孝志氏。ホリエモン新党の設立もその一環であるのだろうが、さすがに世論を無視し過ぎである。

著名人や有名人のネームバリューに肖ろうとする癖があることは、これまでの立花孝志氏を見てきた者たちの間では疑いようの無い認識とされている。
ホリエモン新党の設立についても、取って付けたような公約や、実質N国党であることを総合的に見ると、状況が改善できない自身とN国党の代わりを堀江貴文氏の人気でごまかそうとしているだけのようにも見える。

しかし、先の港区長選挙の結果を見る限り、堀江貴文氏のネームバリューはおそらく彼らの期待するほどの効果は無いだろう。堀江貴文氏のファンとも言うべき彼自身の支持者は一定数存在するが、それはあくまで”堀江貴文氏個人”に惹かれているのであって、その取り巻き連中を支持する人々というわけではない。

N国党 立花孝志氏をはじめ、立候補予定者や関係者、ホリエモン新党関係者も含め、世論を考慮しないことから考えても、彼らは”人心”を見ず、理解せず、直視できない。そういうタイプの者たちであると言わざるを得ない。

そして、彼らは気付いているのだろうか。もし堀江貴文氏が東京都知事選挙へ立候補をしても、ホリエモン新党からは出馬できない。となれば、仮にホリエモン新党が彼らの思惑通りに躍進できたとしても、双方で限定的な票を食い合うだけである。「党勢拡大を狙うための宣伝」と言えばそれでも良さそうに見えるが、実際は、”選挙を混乱させる者たち”として世に周知され、今よりもさらに広く、悪評を定着させてしまうだけの可能性が高いのだ。

”思いつきで喋り過ぎ”と指摘されながらも、”計画的”と豪語することをやめないN国党 立花孝志氏。そんな彼を「素晴らしい」「天才」と評価するN国党関係者・ホリエモン新党関係者。立花孝志氏が今何をしようとしているのかだけではなく、今この状況までの過程を冷静に見つめ、何故こうなってしまったのかを考えてほしいものである。

進む乖離、止まれない現実

これまでの選挙などから見られる世論と、N国党 立花孝志氏の思惑の乖離については上記で述べた通りである。だが、立花孝志自身の身になったつもりで思考を巡らせると、その発言や行動の理由もわからなくはない。

このところ、インターネットのN国界隈内では、「覇気がなくなった」「やっていることがブレブレだ」などの声が散見される。こういった声が多くなったのは、2020年03月のN国党関係先への警察による家宅捜索・刑事起訴が行われた以降である。

立花孝志氏としては、これまで協力し続けてくれた現職議員・立候補予定者・他関係者などの手前、性格的に投げ出すことができないのではないだろうか。その点については僅かだが同情してしまう部分もある。そして、掲げた目標へ進もうする意思も、理解することはできる。(賞賛はできないが)
しかしながら、これまで他の記事も含め述べてきたように、すでにもう遅いと思われる。自身が参議院議員を辞職して以降、ターニングポイントは何度かあったはずだ。

事ここに至って、立花孝志氏はもう自分では止まれなくなっているのではないだろうか。世論からの批判を浴び、刑事裁判の被告人になってもまだ、正義の名を掲げて傍若無人に振舞う様は、見ていて痛々しいと感じることもある。それでも止まれないのは、自分を慕い付いて来る者たちや、応援する者たちがいるからではないだろうか。

立花孝志氏を支持し、応援する方々は今一度考えてみてほしい。
すでに覆すことが難しいと思われる世論、控える刑事裁判、その末に行われるであろう大手メディアの報道、さらに広まり定着する悪名。本当にその先に党勢拡大があるのかどうか。このまま立花孝志氏を支持・応援し続け、彼が止まれなかった結果、彼がどういう立場になるのかを。

立花孝志氏曰く、「NHK問題はもう全て道筋が立った」とのことだ。ならばもう、無理をさせずとも良いのではないだろうか。道筋が立ったというのならば、参院選当初の公約や当時のN国党へ投票を行った市民の想いには応えたはずである。決着をつけるために党勢拡大が必要ということであるなら、N国党以外の政党・政治家に托すという選択肢もあるだろう。NHK問題を扱おうとしている政党・政治家は何もN国党 立花孝志氏だけではないのだ。

N国党とホリエモン新党の関係者は無意識に彼を焚きつけ、止まることを許さず、いったいいつまで立花孝志氏を利用し続けるつもりなのか。どれだけ彼1人に責任を負わせ続けるのだろうか。

彼は、「はやく政治家をやめたい」とも語っていたはずだ。


N国党・立花孝志と東京都知事選挙 ②(終)
→ 東京都知事選挙 同姓同名への投票とは


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