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海が好き。山は……

 SNSに誇らしげな笑顔と一緒に、登山しましたとか、山の中でキャンプしましたみたいな写真を載せている全く知らない人たちを見ると、どうしてそんなに山に行って喜んでいるんだろうと疑問に思ってしまうのです。

 私が小さい頃から住んでいる街は、そもそもが海なし県で四方を山々に囲まれていて、地平線に広がる夕焼けをしっかり見たのは確か高校生の頃でした。
 その頃からです、山々に囲まれた景色が鬱陶しくなったのは。
畑の向こうに見えるのは山、街のビルの隙間をチラチラとするのは山、国道沿いに聳える山、広い道の向こうに立ち塞がる山。
ヤマヤマヤマのそのまたヤマ。
まるで進撃の巨人の壁のよう。いつか山の向こうから巨人や怪獣がひょこっと顔を覗かせるんじゃなかろうか。妄想を駆り立てられるほどに憎い山々。

 海なし県の山嫌いな私はその反動でしょう、海が割と好きなんです。
そもそも海なし県あるあるに海を見ると異常なまでにテンションが上がるというのがあります。
私も多分にもれずテンションが上がります。車を運転できる歳になってから、初めて海までドライブをしに行ったときも海が見えた瞬間に「わあ〜うみっ!」とバカみたいに叫んでみたり。
初めての1人旅行は江ノ島〜鎌倉を選び、11月の少しグレーがかった海岸沿いを一日中散歩して過ごしました。
 進学希望先も海のある神奈川、20代のとき移住しようと思っていたのも神奈川の海からほど近い場所。いろいろあってそのどれも叶わなかったけど、今でも余生は海のある暖かい場所がいいと思っています。静岡とか。やっぱり神奈川も候補地。

 海に入らなくてもいい、なんなら別に入りたくない。
ただ海のある風景が好き、不規則に絶えず続く波を見ているのが好き、海岸沿いに広がるいつ消え去るかも分からない恐怖と同居する人たちの生活感が好き。

 だけど、この間暇に任せてクルマを走らせ新潟 柏崎まで行った時のこと。
快晴の空と穏やかに波打つ海が広がる海浜公園を気持ちよく歩いていました。
今までなら眼前の海にばかり目が行くのですが、その時はなぜか360°あたりを見渡してみたくなりまして。多分久しぶりに海を見てからの開放感からでしょう。
小粋に足を弾ませながら気持ちよく一回ターン。
その時私は、海の後ろに広がる山並みに目が行き、思わずハッとしました。

 私は本当は山が嫌いなんじゃない。過剰なまでに山に囲まれた景色に息苦しさを感じていただけなんだと。
海沿いの街にバランスよく広がっている山はなんて素敵なんだろう。
多分なんて事のない、地元の人しか名前を知らない山。比較的小さな山。
その山が海の後ろに広がっていることで、柏崎の海浜公園は完璧に完成されている。
そう思わざるを得ないほどに、その山に感動したのです。

 今まで近すぎてさっぱり分からなかった、山の魅力に気付かされた瞬間でした。
きっと山好きの方達からは「何言ってんだよ、山は入ってこそ、登ってこそだろ?」とか言われるかもしれないけれど。

 それに冒頭に書いた疑問も少し晴れた気がします。
きっと山や海、住宅街にビル群、その他諸々、環境は違えど私みたいに思っている人たちはどこにでもいて、非日常を求めて自分の描き求める場所場所で束の間の時間を過ごす。
そんなの楽しくて当たり前だろうし、笑顔で写真をとるくらいなんの不思議もないはずですよね。
現に私も楽しくなって撮った写真を、Instagramにアップしましたし。

 私も余生とは言わず、もう少し早いうちに理想の土地へ移住しようかな。
 そんなことを考えながら本日はここまで。

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