Hillbilly Elegy「ヒルビリー・エレジー」がなかなか良い
前回はハリス副大統領の著書を紹介致しましたが、今回は共和党の副大統領候補、JDヴァンス氏の自伝『ヒルビリー・エレジー アメリカの繁栄から取り残された白人たち』を元に作られたネットフリックス映画を紹介します。
こちらが予告編:
予告編ではおばあちゃんもお母さんも善人風に見えますが、はっきり言って物凄い毒親です。お爺ちゃんも、生まれ育った環境も。私は夫と観たのですが、夫は途中で胸糞悪くて辛いと言っていました。
なぜなら。
サムネイルの写真は夫の実家です。笑
森の中です。敷地は約東京ドームの広さ。この道は道路から家に辿り着くまでの100mくらいある私道の50m地点くらい。
夫の実家はごく普通のサラリーマン中流層。全然ヒルビリーではありません。しかも米国でも特に裕福で教育レベルも高いとされるボストンから高速で約1時間の場所(つまり通勤圏内)。それでこの森の中です。
これがアメリカなんです。
結婚前に夫の両親に挨拶に行った時にこの住環境、結構悩みましたよ。スティーブン・キングの世界は本当だった衝撃。そうだ。当時は「リング」が流行っていたから余計に夜が怖かった。だって謎な井戸とか300年前の墓とか底なし沼とか森にランダムにあるんだぜ。笑
夫に、子供の頃に何して遊んでいたの?って聞くと、森で一人で遊んでいたって。絶対IT来るじゃん!って言うと、当時は本当にそういう人さらいの噂があって怖かったとか。そりゃこういうとこの人が銃を持ちたがるのわかるわ。最近は熊も出るらしいし。でも夫はこんな森の中を平然と歩けるんですよ。どうやって迷子にならないのか聞いたら、木や岩の見分けがついているらしい。これは結婚するしかないでしょう。
後に自分たちのアパートを見つけるまではここに住まわせてもらいましたので、私もある程度森の環境は知っているのですが、夫の実家のような普通の家庭とヴァンス氏の家庭のようなのが混在している感じですかね。トランプサポーターの家もたくさんです。昔はこの地域にアジア人なんていないのでよくジロジロ見られました。今はもうそれは無いかな。でも白人しかいないレストランに行く時はちょっと緊張します。
夫によるとすぐお隣のロードアイランド州に住んでいた幼稚園くらいの時にハイディーハイコー君という日本人の子と仲が良かったって言うんですよ。そんな名前あるかい!ってツッコみましたが、
…もしかして…
ヒデヒコ君なのでは!
そんな田舎なのです。ハイディーに会いたいよーと言っているので心当たりのある方はどうぞコメントください。
こんななので、夫にとっては他人事に思えないんです。ネットで調べると、アパラチアやヒルビリーのステレオタイプを助長しているなんていう批判もあるようですが、ヴァンス氏の出身のアパラチアを始め、アメリカの大半はこんな世界なのは確かです。
潰れて放置された工場、ウォルマート、コンビニ付きのガソリンスタンド、ドーナッツ屋、ダラーストア、あとはカーディーラー、農業器具屋、ホームセンター、スーパー、病院。個人経営の商店やレストランは苦戦。最近ではショッピングモールさえ廃れ、下手すれば不良の溜まり場になっている。近隣都市まで通勤できる場所はある程度再開発もしているが、相変わらずの自動車社会でコミュニティー感が消滅。これが平均的アメリカ。日本もほぼ同じですよね。
こういうところから見れば、都市部にいるマイノリティや移民の方が優遇されていると思ってしまうのも無理はありません。それがトランプサポーターやネトウヨになるんだと思います。しかしですね。じゃあどうしてマイノリティや移民が都市部に留まるのか、田舎の地域活性化に一役買えないのかっていうと、そこには差別があるわけで。
悩みは同じなんですよ。
既得権益に負けずにやっていけるのは、ヴァンス氏やハリス氏やウォルツ氏のようなごく一部のスーパーマンだけ。
ほとんどの人はそこまでの才能は無く、出身地や出自、家庭環境の影響が大きく、社会に合わせてどうにかやっていくしかない。
映画の中で、ヴァンス氏がエリート社会でバカにされるシーンがありますが、私はそういう経験をしています。東大で。いいとこの子って本当に知らないみたいなんですよね。家庭環境が悪いせいで家にも帰れない、明日のご飯や光熱費を心配しながらバイトして、病院や歯医者にもいけない。当然、授業をこなすのが精一杯で研究室に通うのもやっとこさ。暖房無くて布団に海苔巻きみたいにくるまって「明日の朝生きていますように」と祈って寝る生活。当然毎日疲れ切っている。なんでバカにするのか。こういう人本当にいるんだ、だったら就職しろよとかね。したけど。米国で。
森の生活最高!笑
元がこんなだから過酷な米国生活も余裕。
今は私の方が稼いでるかもよ。
格差問題に気が付けないエリートの方が怖いです。そういう意味ではヴァンス氏は悪くない人選です。ただ、だったら都市部のマイノリティや移民を味方につけた方がいいのにとは思います。自分の祖母や母親の立場を見てきたなら、女性の自立に立ちはだかる壁も知っているはずです。なぜああなのか。
資本主義という仕組みの中で、より大きなグローバル企業が全部吸い取るのが最も効率的となってしまい、いよいよその巨大グローバル企業自身でさえ、矛盾だらけで何やっているのかわからない事態になってきています。
この中でどうやって庶民を守るのか。
となると労働者が企業や政府に搾取されないようにするしかない。となると、ユニオンの支持が大事になってくるわけで…
なるほど。それでウォルツ氏なのかってなるわけです。
面白くなってきましたね。
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