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「脳は否定形を理解できない」をコミュニケーションで役立てる

こんにちは。

脳科学の世界では「脳は否定形を理解できない」ということと「脳は主語を理解できない」というのがあたりまえのように言われて久しくなっております。

とはいえ、言語レベルでは「否定形」というものも、「主語」もあります。

どういうことやねん?

ということで、よく否定形の方で例題に上げられるのがこうしたものです。

ピンクの網タイツをはいた波平さんをイメージしないでください。」

どうでしょう?

末尾の「しないでください」を読む前に、ピンクの網タイツをはいた波平さんを想像して「え゛」ってなりませんでしたか?

このように、脳はすでに最初に発せられた言葉からイメージを始めて、ピンクの網タイツをはいた波平さんを自分の前に出現させて、それに自分の感情が反応して「ひょぇっ」となったころに、それを否定されても、一度想像してしまったものってそう簡単には脳内から消えませんよね。
しばらく脳内にピンクの網タイツの波平さんが鎮座して、おかしさに口元が歪んでしまうことでしょう。

そして、「脳は主語を理解できない」とも言います。これはより正確に書くと「大脳新皮質は主語を理解しているけれど、大脳辺縁系は主語を認識できない」ということで、いわゆる「潜在意識」と言われる部分では主語を認識していない、ということです。

マナーの世界観ではこのふたつの性質を利用して、より円滑でポジティブなコミュニケーションを心掛けます。

例えば、顧客から何かの依頼を受けます。が、それに応えることができない場合、単刀直入に「それはできません」とだけ答えてしまうとケンモホロロ、取り付く島もないイメージになってしまいますが、
「お引き受けしたいのは山々ではございますが、ご希望にお応えできなくて残念です」と肯定的な一文を手前に持ってくるだけでぐっと印象が変わります。

大脳新皮質はちゃんと「断られている」ことを理解しつつも、先行するイメージは「引き受ける努力をした」という方が強く残りますので、受け手には好意的印象が残ります。ところが、「むりです」「できません」だけではそれだけしか残らなくなってしまう。

こうした言葉の順序を逆手に取った自己暗示で嫌いなものを嫌いでなくならせる、というものもあります。

例えば、ピーマンが苦手なあなたが、お食事の好みを尋ねられたとしましょう。
苦手な食べ物を問われたときに「ピーマンが嫌い」と言うのではなく、「ピーマンが好きじゃない」と答えるようにするのです。
すると尋ねてきた方には「ピーマンが苦手なんだ」という正しい情報が伝達されながら、自分自身の脳はとりあえず「ピーマンが好きなんだな」という自己暗示をしてからそれを否定しに入る恰好になるので、ピーマンの味が苦手という事実は変わらないかもしれませんが、「ピーマンが嫌いじゃなくなる」というポジティブな現象が起こりやすくなります。

こうした脳を上手に扱う言葉の発し方は職場の人間関係にも活かせます。
「私、〇〇さんキライなのよね」と誰かに愚痴を言うのではなく
「私、〇〇さんのことが好きじゃないのよね」と言うことで、前者は嫌い感情MAXでちょっと言葉もとげとげしく、心にも余裕がない感じですが、後者だと「私は○○さんのことが好き」が先に入るので嫌い感情が和らぎます。
そして相手は自分の鏡なので、自分が相手に対して好意的になれば相手の態度も軟化して人間関係が徐々に円滑になるのです。

しかも、先に述べたように恐ろしいことに大脳辺縁系は主語を理解していないので「私、〇〇さんキライ」と言っていたつもりが「〇〇さん」部分が抜け落ち、潜在意識では自分で自分にキライだと呪いをかけていることになっちゃうのです。
これを「好きじゃない」という言い方に変えることで自分で自分に「好き♡」と暗示をかけることにも繋がり、自己肯定感がいつの間にか高まるという副産物も。だからこそ「愚痴は言わない方がいい」と言われるのです。

ただし、何かをして欲しい時は肯定から否定に入るのではなく、単刀直入に言葉を変えて伝えます。
これもよく使われる例ですが、小さい子どもさんに「走らないで~!」と叫ぶと、多くの子どもたちは元気に「は~い!」と返事しながらだだだだーーーーっっっと走り去っていってしまう(笑)。
だって、「走れ」が先に来ているんですもの。
ところが、「ゆっくり歩こうね♪」と言うと、走るのを止めて歩く子どもが増えます。

ビジネスなど大人の世界でも同じようなことが言えますので、指示をする時や明白にお断りすることが必要な時には明瞭かつ明確なことばを使うことが求められます。

例えば新人スタッフが遅刻してきたときに「明日は遅刻しないようにね!」ではなく、「明日は時間までに来てね!」と言った方が効果的ですし、勝負に臨むときには「負けないで!」ではなく「勝つわよ!」と言った方がいいですし、好意を持てない異性がしつこく言い寄ってくるならば「あなたのことは好きじゃないの!」ではなく「あなたが嫌いなの!」とはっきりくっきりすっぱり誤解が生じる余地がないように伝える必要があります。

こうした「言い回しの変更」を巧みに操ることで、コミュニケーションや人間関係というものは飛躍的に改善し円滑になります。

特にこれからの時代、顔を合わせることなくメールの文面だけでやり取りをする機会が増えますので、書面から受け取る印象というものが人間関係を非常に大きく左右しかねません。

ビジネスでもプライベートでも、ぜひこうしたことを意識して取り入れて、言葉遣いに気を留めてみてくださいね。


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