2022.3.24 習近平がロシアを制裁できない“個人的”理由
対中包囲網が変わる…?
今までアメリカは、中国に様々な経済制裁をかけ、出来るだけ追い詰めようとして対中包囲網を築いてきました。
しかし、ウクライナ紛争によって、それが変わってくる可能性があります。
2001年の反テロ戦争と同じように、中国を戦略的パートナーに選んでしまうのではないかということです。
習近平が選んだ道…
というのも、今、プーチンと連携強化しているのは習近平だけであり、長期戦になる場合、欧米諸国が中国に仲裁を頼む可能性もあります。
そして、中国がもし仲裁役を引き受ければ、欧米諸国に恩を売るということになります。
これはかなり危険な考え方ですが、現にアメリカの主要な新聞やヨーロッパの言論人の中で、このような見解を持つ人がいるのも事実です。
しかし、習近平はそうはしません。
実際、世界中の殆どの国がロシアに対して制裁をしている中、中国は批判も制裁も調停の仲介もしていません。
アメリカの対中包囲網を崩すチャンスであるにもかかわらず、なぜなのかか?
中国とロシアの急接近したきっかけ
それを紐解くのが『エネルギー利権』です。
石油や天然ガス。
資源関係の輸入によって得た利益です。
中国国内で販売する際には、値段をいくらでも上乗せできるため、中国最大の利権とも言えます。
そして、この石油利権は誰が握っているか?
かつては、アンチ習近平派の大物だった周永康がその利権を握っていました。
ところが、2013年。
習近平が就任後、石油利権にメスを入れ、周永康を逮捕し、失脚させたのです。
その後、中国最大の石油輸入国はサウジアラビアからロシアへと転換。
2014年5月には、ロシアと4000億ドル分の天然ガス輸入を合意。
ロシアと中国は急接近し、貿易も拡大していきました。
習近平がロシアを批判しない“個人的”理由
実はこのエネルギー利権こそが、習近平一族にとって大きな利権になっています。
そのため、ロシア批判を許さないのは習近平“個人”の方針。
習近平が莫大な利権を得ている上、中国はロシアからの輸入に大きく依存しているので、簡単にロシアを制裁できません。
逆にロシアを制裁してしまうと、習近平一族へ流れている利権は止まってしまうという図式です。
さらに2月4日、北京冬季オリンピック開幕式の日に習近平とプーチン大統領は、1100億ドルの天然ガスの契約を結んでいます。
しかも750億ドルは前払いで、既にプーチン大統領に支払っています。
もし中国がロシアに制裁してしまうと、利権が無くなるだけでなく、その前払いのお金も無駄になってしまいます。
欧米と接近したい中国共産党エリート
一方、中国共産党のエリートや上海閥、アンチ習近平派は、逆に欧米と近づきたいと思っています。
彼らの利権は欧米もしくは欧米と取引をしている企業から得ています。
習近平がロシアと手を組んで世界と対抗すれば、中国共産党のエリートたちは利権が少なくなります。
欧米と和解したい。
同じ陣営にいれば、今までのように利権がもらえる、というのが彼らの本心です。
しかし、習近平が選んだのは欧米と対立する路線。
もし、中国が今後ロシアに対する制裁に今後も協力しない場合、中国の孤立、そしてアンチ習近平派の利益も少なくなります。
そうなると、中国共産党内部の矛盾が大きくなってきます。
つまり、ロシアとの利権がある習近平は対露制裁ができない…。
一方、欧米との利権がある共産党エリートは、欧米と和解の方向にもっていきたい…。
日本のメディアではまず流れてこない中国政府の今の状況…。
今回は、ウクライナ紛争によって中国共産党内部でこの矛盾が拡大し、それを紐解く鍵が『エネルギー利権』である、という内容でお送りしました。
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