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【短編小説】フリーセミバイター

セミは、生まれた瞬間からこの世界に希望を抱いていた。

しかし長時間土の中にいたセミはもう不自由なのは嫌だった。

地上に出たからには自由になりたい。

フリーの響きが気に入ったセミはフリーターになることにした。

そんなセミを受け入れてくれるお店があった。

店長「いつから地上に?」
セミ「ついさっきから」
店長「採用」

セミはせっせと働いた、せっせせっせと働いた。
人生一度きりなのだから後悔したくない。
何事も一生懸命取り組みたい。
セミはせっせと働いた。



しかしセミには問題があった。
なにせセミなので鳴くのだ。


一日目

「ミーンミーンミンミーン」

クレームが入った

二日目

「ミーンミーンミンミーン」

うるさいと言われた

三日目

「ミーンミーンミンミーン」

笑われた

四日目

「ミーンミーンミンミーン」

気に入られた

五日目

「ミーンミーンミンミーン」

パチパチパチ

六日目

「ミーンミーンミンミーン」

にぎやかね

七日目

「ミーンミーンミンミーン」

風流だわ


はじめは文句を言っていたお客さんも、少しずつセミが好きになった。

またたくまにセミは近所で人気になった。


八日目

「コロコロコロ」


あっという間に一週間が経った。



夏の終わりを虫が知らせてくれた。

サポートしていただくとさらに物語が紡がれます。