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【短編小説】きつねうどん


「ねえ!これが乗ってるおうどんってきつねうどんっていうんでしょ!!」

小さなきつねは自分の何倍もある油揚げを楽しそうに振り回しながらそう言った。

「そうですよ」

うどん屋の店主は目を細めながら返事をする。

「じゃあ僕じゃなくていいよね」

そう訴えるきつねの瞳の奥は切実に訴えかけていた。

「そうだなあ」

目を細めた店主の表情は依然、変わらなかった。

「でもきつねうどんときつねのうどんは全く別物だから」

店主は状況さえ違えば愛しいものを見るような目できつねを見つめる。

「どうしても僕?」

「どうしても君」

きつねに選択権はなかった。


肉と油揚げ、贅沢にも両方が乗ったうどん。


そのうどんは言わずもがな人気メニューとなった。

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