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「不思議な薬箱を開く時」

こんにちは。
「不思議な薬箱を開く時」です。
暑くなってきましたね。
悪い風邪まで流行っていますよ。
この現代においても、風邪の特効薬といいますのは、
まだ、開発されていないとか。
では、お薬箱を開けてみましょう。

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「竜の乳薬」

昔々。
などと始めますと、
まるで、昔話のようですね。
いえいえ、これは、資料に残されております、
歴とした薬剤なのですよ。
16世紀のモロッコでは、
財力と権力を持った男たちは、
美女を集めたハーレムを造ることに、
夢中になっていました。
戦争に明け暮れるよりは、
平和かもしれませんが、
国内、国外から美女を集めることも大変ですが、
まず、ただ、集めるだけではお話しになりません。
正妻を筆頭に、
すべての美女たちの夫として、
務めを果たさなくてはならないのです。
実際の話、それは無理でしょう。
しかし、ここで、
トルコの王宮書庫で発見された資料に、
その名が残されている皇帝、
アミル・ハルザードは、
ハーレムに1000人もの絶世の美女を揃え、
子孫は、2544人もいたと記されています。
その旺盛この上ない勢力と生命力を支えたとされているのが、
今回、ご紹介する薬、「竜の乳薬」です。
この薬は、中国の西の都から招いた美しい娘から、
伝え聞いた秘伝の薬であるとされています。
この薬を服用すれば、
驚くべき精力を持つことができ、
老齢になるまで、子孫を残すことが可能なのだそうです。
さて、記録が正しいかどうかは別として、
皇帝の子孫とされる家系図が、
明確に残されています。
さて、この薬の製剤に、命がけで尽力したのは、
当時の宮廷医師、ジェムフリである、と、記されています。
ジェムフリにとって、
そんな馬鹿な!と、皇帝の命を一蹴して死ぬか、
それとも、薬種探究の旅で死ぬか、という、
不当極まる選択であったことでしょう。
ジェムフリは、まさに天命を選んだとも言えます。
生きて帰国できるのか、
それとも道中で果てるのか、の艱難辛苦を乗り越え、中国へと旅し、
ついに、珍しい薬剤を入手したのだそうです。
この製剤の成功を問うならば、
皇帝の子孫の繁栄を見れば、
効果は覿面であったと言えるでしょう。
では、調剤料をご紹介しましょう。

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「竜の乳薬」処方


ニセントウ
シゴカ
ウンケイトウ
ジツソウイッポウ
カミキヒトウ
ダイボウフウトウ
サンシュユ
ウンセイサン
黒い烏骨鶏の体内卵
馬の乳
駱駝の乳の油
150日目の胎児
華香娘酒

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諸注意
記録には、調剤料の量が記されていません。
どうやら、服用する人の基礎体力や、
生年月日によって違ってくるようです。
生まれ年、生まれ日、
出自により、適量ありとのことです。
つまり、生まれの良し悪しでも、
変わってくるということですね。
こういう場合は、
人種、社会的地位、生年月日が同じ誰かに、
被検体になってもらうことをお勧めします。
最後に記されています華香娘酒とは、
生まれた時から、
最高級の果物だけを食べさせ続けた、

初潮前の乙女の尿から醸造された酒です。

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備考欄
被検体探しの方が、
調剤料探しよりも手間がかかりそうですね。
記録には、皇帝に合わせた調剤法しか書かれていません。
華香娘酒の醸造の為に、
生まれたばかりの赤ちゃんを
最高級の果物だけで育てるといいますのも、
これまた、たいへんです。
最高級とはいえ、栄養価はかなり偏り、
記録にも、往々にして寿命は短しとあります。
昔は、そのためだけに貧しい家から、
新生児を買ったようですから。
被検体になっていただく方には、
朗報として、命に別条を来すことは、
稀であるということですから、
まあ、多額の礼金でも積めば、
なんとかなるかもしれません。

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