#17【営業ノウハウ】営業に求められる能力【各論①】
Vol.2【各論①】基礎能力
最近サボってしまっておりましたが、モチベーションが上がる出来事があったので再開します。
以前総論についての記事を書きましたが、今回から各論の基本スキルについて書いていこうと思います。
基礎能力の内容をご覧になられて、なんだ、全部できてるわ! と思われた方は、是非最後までお読みいただき、本当にできているかどうか自省いただけると良いかと思います。
コミュニケーション
あまりに一般的な言葉であるため、表面上のそれとビジネススキルとしてのそれを混同している方が多いのが、このコミュニケーションです。
よく若い方で「コミュ力半端ない」などという表現をされておられる方が非常に多いです。
そういう場合はほとんどが「誰とでも躊躇なく会話ができ、仲良くなれる」「会話が途切れないので輪の中心にいる」というようなニュアンスを表現していることが多いと思います。
ビジネススキルとしてのコミュニケーション力は、勿論全く無関係とは言いませんが、上記だけでは圧倒的に足りないのです。
ビジネススキルとしては、主に以下のポイントが重要になります。
自分と相手の間で前提や認識が一致している状態を維持できる
相手の真意や必要な情報を引き出し、本質を示唆することができる
こちらの意図を明確に伝え、想定通りに着地させることができる
これらを満たして初めて、ビジネスにおけるコミュニケーションと呼ぶことができます。
①前提や認識を一致させる
ビジネスに限ったことではないですが、人によってある言葉や事象に対する認識が異なっていたり、あれこれ検討を進めるうちに前提を失念したりすることは非常に多いです。
なので、前提や認識が一致していると勝手に思い込んで話を進めるのはとても危険な行為なのです。
以前、”前提を合わせることの重要性”についての記事を書きました。
前提や認識が一致して両者がちゃんと同じ高さの同じステージに立った上で話せているのか、というのは非常に重要です。
そうでないと、そもそも面談の目的について認識が異なっていたり、協議するポイントがちぐはぐになってしまったり、提案内容が的外れになってしまったりと、目的を達成することができません。
この前提と認識の一致が図れないと、以下②③も満たせません。
②真意を引き出し本質を示唆する
中には一方的に喋り散らかすだけの人間をコミュ力が高いと表現している方もいらっしゃるかもしれません。
サークルや飲み屋であればそれでも良いでしょう。
しかし殊商談の場においてはそれでは全くダメダメです。
言うまでもないですが、相手にとって価値のある、真に最適な提案ができなければ案件は取れませんし、相手も幸せになりません。
そのためには、個別能力のヒアリングとも関連してきますが、正しい情報を材料として十分に揃えなければなりません。
信頼関係や相手のキャラクターなどによっては、様々な情報(事実や真意、要求など)を全ては明かしてくれない場合もあります。
そんなときに、相手のガードを崩し、示唆を与え、ときには叱咤や煽動も交え、質問の仕方や会話の流れなどを工夫して、あの手この手で情報を全て引き出す必要があります。
これが十分でないと、提案がうまく刺さらず受注まで至らなかったり競合に負けてしまったりします。
以前”価値訴求について”の記事でも書いた通り、正しい価値を伝えるために必須のプロセスなのです。
③想定通りに着地させる
自分とお客様双方の時間を使った面談であれば、そのゴールを設定して、達成するための準備をして臨むのが当然です。
「私の今日の目的はこれですよ」「これを決めたいor意思決定してほしいですよ」という意図を、押し付けにならぬよう明確に伝え、想定していた状態に着地するよう面談の内容をコントロールしなければ、自分も相手も無駄な時間を使ってしまうことになります。
①の前提合わせとつながりますが、両社が望むゴールに到達できてはじめて、良好なコミュニケーションができた、と表現することができます。
リレーション
これも勘違いしている方が多い言葉だと思います。
お客様との”関係構築”について、気軽に話せる、冗談を言い合える、一緒に飲みに行ける、という状態を指していると思っていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。
友達との関係構築であればそれでも十分かもしれません(”親友”と呼ぶには浅すぎる関係ですが)。
しかしビジネスにおいては、やはりこれだけでは足りません。
ビジネススキルとしては、以下の状態を”リレーションがある”と呼びます。
対価を払う価値のある情報や提案を提供してくれると認識されている
対等か若しくはこちら側が優位にあるほどの立ち位置が確立されている
Give&Takeが成立しており、相手も様々な対価や情報を提供してくれる
この状態にないのであれば、それはもしかしたら愛想の良い人にただ利用されているだけかもしれません。
①価値のある情報提供者と認識されている
ここがクリアできている方は多いかもしれません。
ただ、”対価を払う価値のある”という条件を満たしているかどうかが肝になります。
情報の入手難易度が下がった昨今では情報収集のためだけに営業を利用する人は減ったとはいえ、資料請求のあった人や企業に即電話してフォローする、というのがインバウンドのセオリーである以上、”ただの情報収集”という状態から動かすこともできず、時間を無駄にするケースもまだまだ多いでしょう。
時間をかけて何度も資料を提供したり提案を繰り返しても一向に検討は進まず一切買ってくれない、というお客様が多いのであれば、提供している情報や提案が本当に相手にとって価値のあるものであるか、価値を訴求できるような提供のしかたをしているかどうか、振り返って考えてみては如何でしょうか。
ただの機能や事実だけではなく、その市場や業界、相手の企業や部署のことを深く理解し、それを前提としたインサイトを与え、最新のトレンドもいち早く提供してくれる。
そんな営業がまさに今のペインにどんぴしゃな提案をしてくれたら、普通は検討も進捗するはずです。
②対等以上の立場になれている
ここが多くの営業の皆さんにとってひとつのハードルかもしれません。
なぜなら、へこへこしてお客様には決して上からものを言ってはいけない、失礼な言動をしてはいけない、といった、昭和以前の御用聞き営業の考え方を持った方がまだまだ多いからです。
イエスマンはお客様の会社にもたくさんいるでしょうし、上で書いたとおり今の世の中だいたいの情報はネットで手に入ってしまいます。
お客様の耳が痛かろうと本質を鋭く突いた示唆を忖度なく提示し、変わらないことのリスクを解像度高く語り、その道の先を行く者しか知り得ない情報や到達し得ないマインドセットを正しく提供することができる。
こんな営業でないとわざわざ時間を取って話を聞こうと思いませんし、ましてやその提案をしっかり検討しようとは思いませんね。
このように、自分しか提供し得ない価値を認識されると、相手はこちらをただの御用聞き営業などとは思わず、むしろ先生のような扱いになってきます。
③Give&Takeが成立している
上記の②を経ることで、この状態に到達するでしょう。
お客様が提案を受けて発注してくれる、ということはもちろん、例えば商談を進捗させるために必要なキーマンとの面談を設定してくれるとか、決裁プロセスや決裁者の意思決定基準などの情報を教えてくれたり、各ステークホルダーのパーソナリティを教えてくれたりなど。
要は、営業が一方的にお客様の言うことを聞くだけという関係ではなく、お客様も営業の言うことをちゃんと聞いてくれる、という関係ができあがっているということです。
これらの条件を満たすのが真の”関係構築”です。
ドキュメンテーション
このスキルについては、一般論としてたくさんの本も出ているでしょうし、noteで良い記事を書いていらっしゃる方もたくさんいると思います。
なので、そもそも資料作りのスキルについては調べてみてください。
私の提案書の作り方についてはまた別の機会にnoteでまとめるとして、今回は資料の効果的な使い方に重きを置いて解説したいと思います。
まず前提として、資料というのは誰が見ても各スライドの内容や意図を理解することができ、ぱっと見てわかりやすい(洗練された)ものでなくてはならない、というのは常識ですね。
そのうえで、資料を効果的に使えるかどうかがとても重要です。
どんなにわかりやすい資料でも、適切なタイミングや目的で利用されなければ意味がありません。
私が資料を作るときは、まずその面談のゴールを定め、そのゴールに至るまでの道筋を整理し、その流れに沿ってスライドを構成するようにしています。
会社の同僚には「まるで映画のようなストーリーライン」と言われました笑
例えば意思決定を迫り契約までのスケジュールを合意する目的であれば、
前提の確認
現状の課題とその根本原因、その解決策の整理
最適な解決策及び想定期待効果の整理
効果創出のためのポイント
事例紹介
Why Hacobu?(自社提案の優位性)の整理
概算見積
ROIの試算
体制とスケジュール
契約に向けたプロセスとリスク
という流れに沿って、適切なスライドを逆から並べていくのです。
このときに、それぞれのスライドを一から作っていたのでは時間がかかりすぎるので、各スライドのフォーマットなどをひとつにまとめてためておくことで、資料作成の時間を最小化することができます。
目的に応じた最適かつ効果的な資料を時間をかけずに準備すること。
これがドキュメンテーションの真髄です。
ストレッチ
さて、これまでの3つがどちらかというと対お客様のスキルであったのに対し、これは対内的というか考え方やスタンスの話です。
まず前提として、自分自身を客観的に評価できる能力が重要です。
過小評価も過大評価もせず、各商談の状況を勘案してどのくらいの確度で受注できるか。今のパイプラインを鑑みて、自分のパフォーマンスはどのくらいになりそうか。
これを正しく評価できなければ、このあとのアクションは全て的外れになってしまいます。
自身と状況を客観的に評価したうえで、今出しうる最大のパフォーマンスを更に伸ばすためにはどうするか、と考えそれを実行に移すのが、この能力の本質です。
当然ながら各案件それぞれの全てのアクションを自分一人でやるよりも、状況や内容に応じて適切な役割のリソース(主に人)を活用したほうが効果的だし効率的です。
また、自身の成長を考えたとき、今の自分が余裕で出せるパフォーマンスを目標にしていては、成長は遠のきます。
外資にいた頃は良く、コンフォートゾーンに居座らないようにしろ、と言われ続けていました。
自身の能力を少し超えた領域、つまりかなり頑張らないと到達できない領域をラーニングゾーンといい、ここまでこないと学習や成長はできません。
また、どう頑張っても到達できない領域をパニックゾーンといいますが、この領域にあえて身を置き、学習しながらその環境をラーニングゾーンにし、ゆくゆくはコンフォートゾーンにしていく。そしてまた更に上を目指す、という成長の仕方をする方もいると思います。
要は、今できることで満足するのではなく、自分の限界を超え、そして利用可能なリソースを徹底活用することで、パフォーマンスを最大化していき、更に安定的に高水準なパフォーマンスを出せるようにする、所謂努力の才能とも言えるスキルも、営業に必要な基礎能力のひとつと言えます。
まとめ
基礎能力とはいえかなり内容が濃いので、想定していたよりもずっとボリューミーな記事になってしまいました。
ここまで読んで頂けた方は、ご自身の営業的な基礎能力について、正しく客観的に評価できましたでしょうか。
みなさんの成長の糧になれば幸いです。
今後は各論の個別スキルについても続けて投稿していきますので、お楽しみに。
次回:Vol.3 【各論②】個別能力_2