#18【営業ノウハウ】営業に求められる能力【各論②】
Vol.3【各論②】個別能力その1
営業に求められる能力シリーズ第3弾は、各論②の個別能力です。
今回は主に事前準備やヒアリングなど、提案の前段階の内容が主です。
ここがしっかりしていないと良い提案どころか、提案の場にこぎつけることすらできません。
できるつもりになっている営業の方ほど、ここがおざなりになっているケースが多いので、改めて初心に還るつもりでお読みいただければ幸いです。
顧客理解
真にお客様にとって価値のある提案をするためには、顧客に対して興味を持って理解することが大前提かつ最重要です。
そもそもお客様に興味を持てない営業は、機能説明中心の浅い提案をしがちです。
対象顧客のいる市場の特性や近年の状況、トレンド、どのようなプレイヤー(企業)がいるか、その中で対象顧客はどのような位置づけか。
業界全体における課題はどんなものがあって、それらの課題は業界構造や商習慣などがどのように変われば解決し得るのか。
対象顧客企業はどんな会社でどんな歴史があって、何が強み・弱みで競合はどこで、財務状況の推移はどうなっていて何がリスクで、直近の経営戦略ではどんな目標を立ててその達成のためにどんな施策を打とうとしているか。
対外的に発表している取り組みはなにか。
なにかシステムやサービスを導入した事例はあるか。
その企業はどんな組織体制でどんな人がいて、狙うべきキーマンは誰か。
その企業にとって理想の姿はどんなもので、それはどのようにして実現し得るのか。
などなど、対象顧客についてのガイドブックが書けるくらい調べ上げる必要があります。
ここで「そこまでしてらんねーよ!」と思ったあなた。
あなたはお客様に興味が持てておらず、気づかぬうちに自分本位の提案をしてしまっているかもしれませんよ。
仮説構築
徹底的に調べ上げた内容を基に、お客様とその業界のTo-Be(あるべき姿)はどうすれば実現できて、その阻害要因にはどんなものが挙げられるかをまずは仮説として整理していきます。
そのうえで、その阻害要因を排除して最も理想の姿に近いところまで実現可能なソリューションは自社のプロダクトやサービスだけである、というロジックを組み立てます。
これで主要なパーツは揃ったので、次はシナリオ作りに入ります。
ちなみにここまでで、まだパワポは開くことすらしません。
テキストのみで上記を整理するのです。
ワードでもメモ帳でも何でも良いのですが、私は個人的には手で紙に書くことを好みます(DXの伝道師として失格かもしれませんが)。
シナリオを考える順番は以下の通りです。
原則はゴールからバックキャスト(逆算)していきます。
①初回打ち合わせのゴール設定
例:キーマン含む提案の日程調整(Next Action合意)
↓
②ゴール達成のためにクリアすべき要素の洗い出し
例:課題の重大さ(解決の緊急性)の合意、課題が解決されたときの効果(解決されない場合の損失)の合意、自社の優位性(差別化)など
↓
③仮説の整理
例:現状発生している課題、その解決策、阻害要因など
特に仮説の整理においては、用意した仮説が外れたときに思考停止するという失態を避けるため、これが外れたらこっち、だめならこれ、という感じで想定問答ツリーをラフにでも作成しておくと良いと思います。
ここまでのシナリオをスライドではなくテキストで整理し終えたら、いよいよコンテンツの準備です。
事前準備
仮説シナリオに沿って、コンテンツ(スライド)を並べていきます。
まず最初に絶対に外せないのは会社概要です。
私達が何者か、どんな会社か、信用できるのか、というのをはじめに示さないことには、お客様も話をちゃんと聞く気になれません。
会社概要にはどんな項目が必要か、については、
4 measuring sticks という考え方をベースにすると良いです。
次が想定課題(仮説)です。
課題それぞれの発生原因とその解決策を並べます。
シンプルに図示されているスライドで丁寧に説明できるよう、集約しすぎない(少ない枚数にまとめすぎない)ことがポイントです。
事前に準備した想定問答ツリーに従い、複数準備しておくのがベターです。
打ち合わせ時のヒアリングがしやすいように、一般的な業務フロー図などを入れておくとよりイメージしてもらえやすいかもしれません。
次の課題の解決策も、複数準備した上で、一般的な解決策ではどのような阻害要因が想定されるか、それらを自社プロダクトやサービスはどのような優位性によって解決可能かのロジックが説明できるスライドを並べます。
そして想定効果です。
それぞれの課題が解決された時の効果、または解決せず放置した場合の機会損失などを表にして定量的に表現しておくのがベターです。
実際に同様の課題が解決された事例スライドも入れておくと、より訴求力が高まるでしょう。
最後に、次回アクションの具体を列記したスライドをつけます。
出席希望者、提案する内容(As-Isの業務フローと現状課題及びその根本原因、解決策、想定効果、スケジュール案、概算費用など)を箇条書きで書いておくことで、打診しやすくなります。
さて、これで準備は万端です。
プレゼン内容は何度も練習して、つかえたりしないようにするのを忘れずに。
ヒアリング
実際の打ち合わせが始まり、会社概要説明と主要な想定課題(仮説)の壁打ちを一通り行ったら、いよいよヒアリングに入ります。
ヒアリングシートでも良いのですが、一覧になった質問事項をひたすら聞いていくのではまるで尋問のようになり、お客様も良い気分にはなりませんし、どうしても情報の聞き漏らしが発生します。
流れがないと、お客様も業務プロセスの文脈で詳細を失念したりするリスクがあるからです。
なので私の場合は一般的な業務フローを使って流れで聞いていきます。
各プロセスごとに基本情報のヒアリングをまじえて確認していけば尋問のようにはなりませんし、ここの運用では他社ではこんな課題が発生していて、などと、お客様が気付いていない潜在課題を示唆することも流れの中で可能になるからです。
また、顕在課題(お客様が認識している課題)に関しては、それってどうして発生しているんですか、などと根本原因を探り出す深堀りも必要です。
お客様が課題として認識している部分は表面に浮かんできた汚れのようなもので、実は本質的な課題は他にあるかもしれない。
表面に浮かんできた汚れを掬い続けても根本的な課題解決にはならない、ということが往々にしてあるのです。
言われたことだけそのまま提案するのは、結局御用聞きと変わりません。
示唆し、気づかせ、正しい方向に導くことができるというところに、本質的な営業の存在の価値があると思っています。
顕在課題とその根本原因、及び潜在課題がテーブルの上に並んだら、それらのネガティブ・インパクトを定量化または定性的なものは言語化し、それを基に解決の優先順位を決めていきます。
どの課題はいつまでに解決しないとどうなるか(どれだけの損失があるか)、解決すればどのような効果が望めるか。
ここまで整理できたら、この場で得た材料を持ち帰って提案書作りをすることになります。
そのあたりは次回で解説します。
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