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ゲームから学ぶ、人を飽きさせない体験デザイン

思い出のゲームは何ですか?

子供の頃、ハマっていたゲームや、好きだったゲームはありますか?

私はポケモンシリーズの「ルビー・サファイア」世代で、小学生時代はそればかりやっていました。何周したかわからないくらいやっていました。ホウエン地方のポケモンなら、今でもイラストだけで名前答えられると思います。笑

小学生時代の、いつも通りポケモンをプレイしていたある日。
突然、可愛い可愛いポケモンたちがいるセーブデータが消えてしまったことがあります。データが消えた原因は、ゲームをやりすぎたせいなのか何なのか分からないのですが、大切に育てたLv.100のラグラージやボーマンダなどのポケモンたちが消え去ってしまい、とても悲しかったのを覚えています。

当時はポケモンのことしか考えていないくらいにハマっていました。生活の中心になってしまうくらいゲームって今考えたらすごいですよね。皆さんにとっては、なんでしょうか?

一方で、「ゲームをやる時間は無駄だ!」とか「子供に勉強させないでゲームさせるなんて」のような意見もあります。確かに大人になって、仕事もせずゲームだけして過ごすのは問題ですが、ゲームから学べることは何も無いのでしょうか?

確かに、ゲームをやってもテストの点が上がるわけでは無いし、正直私もゲームは時間を浪費してしまうものだ、という感覚がありました。しかし、この本を読んで考え方が全く変わりました。
なぜなら、ゲームには、人を楽しませる、惹きつけるもの、さらに実生活や仕事でも応用できるものがたくさん詰まっているんだと、価値観を変えさせられたからです。私の今までの人生で読んだ本でTOP10に入るんじゃないかってくらい衝撃を受けてかつ、面白かった本です。今回はこの本に書かれている内容について紹介していきます。


ゲームは人を楽しませるパーツの宝箱

「人はなぜ、ゲームを遊ぶのか?」
この問いに対してこの本では、こう答えています。

ゲーム自体がおもしろいからではなく、
プレーヤー自身が直感する体験そのものがおもしろいから、遊ぶ。

なぜゲームにハマってしまうのか。
それは「徹底的な体験デザイン」がされているからです。
飽きるタイミングを見極め、飽きさせない工夫が最初から最後まで凝らされています。どんなメカニズムなのかは、本の中で丁寧に解説されているのですが、それはぜひ本を読んでいただきたいので、この記事ではわたしがおもしろい!と思った体験デザインのポイントたちを紹介したいと思います。

飽きさせない体験作りのコツ

具体的に人を飽きさせない、楽しませるためのキーワードや方法をお伝えします。

タブーをやらかせ!

人を飽きさせず、楽しませるためのポイントの一つが「驚き」を提供することです。ストーリー展開が読めてしまう話や、同じような作業を繰り返しても変化がないのは面白くないですよね。
ーーここにはこんなものは出てこないだろう。
と思い込んでいるところにタブー(禁忌)のものが現れ、予想を覆す展開があると、驚きと面白さを与えることができます。ドラクエの例であれば、シリアスな展開が続く中で、突然「ぱふぱふ」が登場します。

「おいで ぼうや、ぱふぱふしてほしいのなら、50ゴールドよ。」

「ぱふぱふ」の説明はゲーム内では特に無いのですが、大人の方なら何となく察することができますよね。これが「性のモチーフ」にあたるタブーです。シリアスな展開にタブーを加えることで、驚きを作り出し、飽きさせない仕組みを作っているわけです。

以下に本の中で書かれているタブーを記載しているのですが、納得するラインナップだと思いました。人の話を聞いていても、話が面白くて飽きない人の話にはこの要素が詰まっているなと感じます。真面目な話の中にふとこういったタブーの話が出てくるからこそ、飽きずに楽しめるんだと繋がりました。

  1. 性のモチーフ(ときめく感じ、エッチな感じ)

  2. 食のモチーフ(美味しそう感、腹減った感)

  3. 損得のモチーフ(お金欲しい感、損したくない感)

  4. 承認のモチーフ(認められた感、所属している感)

  5. けがれのモチーフ(汚い感、罪悪感)

  6. 暴力のモチーフ(痛い感、一方的感)

  7. 混乱のモチーフ(間違っている感、クラクラ感)

  8. 死のモチーフ(死に近づく感、オカルト感)

  9. 射幸心と偶然のモチーフ(賭けている感、祈ってる感)

  10. プライベートのモチーフ(恥ずかしい感、秘密感)

成長させるー反復と収集ー

今までやってきたゲームなどで、何かをコレクションした経験はありませんか?ゲームに限らず実際のものでも構いません。

私の場合は、またポケモンの例ですが、ルビー・サファイアのホウエン地方のポケモン図鑑200匹をコンプリートしました。出現率の低い野生ポケモンを捕まえるために、何時間も草むらを徘徊したり、また「ミロカロス」という進化させる条件が大変面倒なポケモンがいるのですが(でもなかなかスペックは高い子なので気に入ってはいた)、それも図鑑を揃えるために頑張りました。

これって端から見たら、ひたすらポケモン捕まえたり、育てて進化させたりと「反復」作業を繰り返しているんですね。これは、ポケモン図鑑という「全体像」があってこそ、その埋まっていない「穴」を埋めたくなるんですよね。ポケモン図鑑がなかったら、何を集めたらいいか分からないですし、埋めようが無いですよね。

穴と全体像→収集と反復→成長

穴と全体像を示し、収集と反復させ、成長させる。これがゲーム内の成長のモチーフの一つ、「収集と反復」です。これって、ゲームだけではなく人生全体に通用する話だなと思いました。仕事でも趣味でもなんでも、基本的に繰り返しやれば上手くなるものです。自分が自然と「収集と反復」してしまうものが仕事なのであれば、それは天職になりうると思います。

ポケモン図鑑を200匹集めたことも、収集と反復の学びができたと考えると、意味があったことなんだと思いました。(このnoteにも書けたことだし・・笑)

家に帰る。

一通りゲームのストーリーを終えた後。どうなりますか?
多くのゲームは、「ゲームのスタート地点に戻る」んです。
ポケモンであれば四天王を倒し、殿堂入りした後、主人公の実家に舞い戻ってきますよね。本の中で紹介されている、ラストオブアス、風ノ旅ビトも同様です。
これにも実は理由があるんです。

皆さんのお気に入りのゲームで、一通りストーリーを終えた後、ゲームを始めた時と同じ場所に戻ってきた。そのときを思い出してみてください。
ゲームを始めた当初とは明らかに違うもの。それは何でしょうか。

ポケモンであれば、ゲームのスタート時はポケモンを1匹も持っていなかったところから、旅を共にし、殿堂入りを果たした可愛いポケモンたちが手元にいる状態です。あえて最初の場所に戻すことによって、最初のポケモン0匹の自分と比較させる。そして、いくつもの困難を乗り越えて、殿堂入りまで果たした自分に気づくのです。
これこそがプレーヤーの成長に気づかせる仕掛けです。なんて、粋な仕掛けなのでしょうか。

おもしろいことにこれはプレゼンでも応用できるんです。
それは・・

プレゼン冒頭のスライドを最後にもう一度示せ

最初は見せられても、その意図が分からないスライドがあります。
間のプレゼンを通して学びを得た聴衆が、もう一度冒頭のスライドを示されることで、「あぁ!あれはそういうことだったのか!」と成長を感じることができるんですね。
これは非常におもしろいなと思ったので、ぜひ使いたいなと思いました。

まとめ

「ゲームは生活必需品ではない、だから、驚きが必要だ。」

これはかつて任天堂の代表取締役を務めた、故・岩田聡さんの言葉だそうです。ゲームは生活必需品ではないからこそ、面白さと驚きを提供して、人を惹きつけなければいけません。
ゲームから学ぶことは多く、体験デザインは奥が深くてとても面白いと思いました。しかも、この体験づくりのポイントは、ゲームだけでなく、人を相手にする他のことにも応用できます。

ゲームではありませんが、今私自身も仕事で、システムのコンセプト設計やデザインといった体験づくりにも携わらせてもらっています。一工夫で、体験が大きく変わることがわかり、仕事はもちろん、それ以外も場面でもゲームの考え方を取り入れていきたい!と思った本でした。本当に面白い本なので、ぜひ手にとってみてもらえたらと思います。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました!

salar

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