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読書メモ12 レジリエンスの時代ジェレミー・リフキン著 第7章

「確固たる主体」としての自己から「生成するパターン」としての自己へ。

デカルトの、理性に対する誤認が、パンドラの箱を開け、地球生態系破壊して来た。
「理性」至高ではなく、「主体」確固としてはおらず、「物質」剛体ではない。
あるのはパターンに過ぎず、響き合い相互浸透する。そして「理性」脳機能泡沫に過ぎない。

その認識の上に、どのような未来を描くか。
       光

「一八世紀の啓蒙主義以降の考え方は、各自が唯一無二の「自由な主体であるという概念だ。ニュートンが予測したとおり、絶えず無数の力とぶつかり合いながらも、平衡状態に戻りつつ、個性を持つ自律的な人間であるという」(p.193)
西洋のテクノロジーは『人類』による地球の征服と利用を、先頭に立って派手に誇示してきた。地球は全知のからの贈り物であり、アダムとイヴとその子孫にその支配を認めたというのが、西洋のテクノロジーの主張だ。
人類による地球の囲い込みが進むことで、私たちをどう定義するかが決まってきた。農業の時代の長い年月と、『工業の時代』の短い年月の間に、人間による地球の各圏の収奪と財産化が激しくなるにつれ、共同生活公的な生活に、公的な生活は私的な生活に道を譲り、人々の個性内向きになっていった」(p.197)
「『進歩の時代』が成熟し、人類が、『所有された地球』の上で私有財産に囲まれて、閉ざされたドアの内側へと引きこもるにつれ、個人の自律は強固になった。各自がより孤立する一方、何千万もの人が過密な都市やその周辺に拡がる郊外でひしめき合い、しだいに荒涼としてくる外部環境から隔絶されている。二〇〇六年、人口密度の高い都市空間に閉じこもる人類が、世界人口の過半数に達し、ついに『ホモ・ウルバヌス(都市に住むヒト)』が主流になった」(p.198)

「気候変動の教訓と、私たちの生物学的性質の新発見が、未来を描き直す。自分がどのような生物学的実体か、私たちが考えていたことは、はなはだしい誤認であり、そのせいで歴史における、絶望的な瞬間に至ったのだ。
私たちがとしてどういう存在なのかに気づけば、人類を解放し、地球の懐へと戻る新たな道筋を、たどれる可能性がある。アブラハムの神に贈られたものとはまったく異なる主体性の感覚を持って、この惑星のコミュニティに再び加わることになる」(p.198)
構造と呼ばれるものは、長い持続時間を持つゆっくりしたプロセスであり、機能は短い持続時間を持つ速いプロセスだ」(フォン・ベルタランフィ p.199)
「このホメオスタシス(恒常性)によって維持されるパターンこそが私たちの個人的アイデンティティの基準だ。私たちの体の組織は、私たちが生きているうちに変わる。食べる食品と吸い込む息は、肉と骨になり、肉と胃を束の間形成している要素は、排泄物とともに日々体から出ていく。私たちは、絶えず流れる川の中の渦にすぎない。とどまり続ける物質ではなく、自らを永続させるパターンなのだ」(ノーバート・ウィーナーp.199)

「原子よりも小さいレベルでは、古典物理学の剛体は、相互作用の確率のパターンとなる。量子論は、宇宙を物理的物体の集合としてではなく、むしろ、統一された全体のさまざまな部分の間の関係が織り成す複雑な網として見ることを私たちに強いる」(フリッチョフ・カプラp.202)

「私たちの一人ひとりが、器や媒体のようなもので、世界に渦巻くさまざまな要素・・・力、場、原子、分子・・・が絶えず流れ込んだり、流れ出したりしており、私たちの自律の感覚に常に疑問を投げ掛けているというのは、想像することさえ難しい。だが、ここにこそ現実があるのだ」(p.204)
「人体は閉ざされた自律的主体ではなく、開放された散逸系だと言える。私たちの体は、地球のさまざまな元素を宿す数多くの媒体の一つにすぎない」(p.208)
「私たちが人間と考えるもののうち、人間由来の部分は体の半分未満しか占めておらず、ある意味で、人間はキメラだ。人間はさまざまな種のうちでも唯一無二の存在だと、長年信じてきた私たちにとって、それは不穏な考えだが、科学的な現実は、唯一無二という捉え方より複雑だ」(p.213)
「人間は誰もがバイオームであり、地球の生態系は人体の境界でとどまらずに各自のマイクロバイオームの中へも続いている。この意外な科学的新事実は、生態学的な自己の出現を告げている」(p.215)

「すべての人間や同胞の生き物たちの内臓は、生命がひしめく惑星を維持可能にしているバイオームと生態系とさまざまな圏の延長にすぎない。あらゆる生き物と、その中の細胞は、半透膜に包まれた開放系で、地球のさまざまな系の要素が出入りして生命のパターンを維持するのを許している。不変の構造で満ちた地球という考え方そのものが、間違っている。イリヤ・プリゴジンはそれをこの上なく簡潔に言い表した。と認識されているものは、生物学では、化学でと同じように、じつはプロセスである、と。あらゆる生き物は散逸系であり、地球の有効エネルギーを糧として生存し、必ずエントロピーという形の廃棄物を増やす結果になる」(p.216)
「私たちのそれぞれがパターンだ。そこでは多数の主体が機能し、私たちの生成に参加しては去り、また別のパターンに参加する。だが、これで終わりではない。この惑星上のあらゆる種のあらゆるパターン調整を助ける、主要な主体が他に二つある。生物時計電磁場だ。今度はこの二つに目を向けることにしよう」(p.218)

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