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9月24日のマザコン23 ここまでのまとめや、介護に必要だと思うこと・もの

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まだ、私の片側の肩には、1トンの重りがまるまる乗っている。
その重りと格闘するためこの後も話は続くのだが、なんとか母の入院が決まったここで、いったんひと区切りとしたい。
この続きの日記はちょっとオープンにはし辛い、ドロドロとした怨恨や怨念の詰まった内容になるため有料noteにしようと考えているが、無料のうちに後進の誰かのためにいくらか役に立ちそうなことを、まとめて書いておきたい。

まとめるのは、今回の介護経験を通じて(私のケースは「精神を病んだ親の介護」で、一般的な「高齢で体が弱った家族の介護」とはちょっと違うのだが)学んだこと、反省したことや後悔したこと、まあとにかく「いつか同じ道を辿るかもしれない人にアドバイスしたいこと」だ。
トラブルの規模の大小はあれど、親御さんが健在だという人ならば、誰しもいつかは私と同じような事態に直面する可能性はあると思う。
なにしろ、不幸にして、あまりに不幸にして、日本は度を超した長寿社会になってしまった。昨年からのコロナ騒ぎに見事に現れているが、我が国は「もう十分に生きた老人をもう少し生かすために、未来ある若者の人生や文化を大破壊する社会」になってしまった。
私も40代とはいえ、「老人か若者か」で分けた場合にはまだかろうじて若者の区分に入ると思う。だから、老人とその代表である政治家が社会を潰そうとして来るのに対し、我々若者は自分の人生を自分で守り、破壊に抵抗しなければいけないのだ。
私は、まだ人生を謳歌するべき年齢の人々が、年寄りのために塗炭の苦しみを味あわされる事態を少しでも減らしたい。私が自分の経験や学びを書くことで、これを読んだ誰かが将来に向けていくらかでも準備ができ、来たる時のダメージを減らすことができてくれたら私は嬉しい。
「まだ自分には関係ない」という人は、いつかその時が来たらこの日記のことを思い出したり、身近で困っている誰かがいたらこの日記を教えてあげて欲しい。

前置きが長くなったが、まず、今回はうち特有の問題というか私だからこそリアルに書ける、「精神科への通院」について、これを書きたい。
とても重要なことだ。私は7年前と今回を通じて、自分も家族も数えきれないくらい精神科を受診し、いろいろと学んだのである。

これを読んでいる人に、強く訴えたいこと。それが、「家族や自分が心を病む兆候があったら、すぐに精神科の予約を取る」だ。
具合が悪くなったら病院に行くのは当たり前だが、精神科の受診はまた特別なのだ。
というのは、日記中でも書いたが、精神科……特に良い病院・クリニックは、初診が数ヶ月待ちになる。
今回、うちは母がわりと早い段階で入院することができたが、これは実は信じられないラッキーが起こってのことなのだ。
私が母にわかばクリニックの受診を勧めたのは、8月の中旬だった。
その時私は、父の入院しているS病院に「父の退院はまだ待ってください」と掛け合うために帰省していた。8月の母はまだ健全で正常でピンピンしていたのだが、病歴もあることだしもしもの場合を考えて、母にもとりあえず受診して診察券を作っておくように私は頼んだ。最悪のケースになった時に、すぐに病院にかかれるように。………まさか本当に最悪のケースになるとは夢にも思っていなかったのだけれど。

その時、まず私が「初診の予約はどれくらい先かな?」という確認のために、わかばクリニックに電話をかけた。すると、「最短の受診で10月30日です」と言われた。電話をしたのは8月中旬なのにだ。2ヶ月半も先である。
私はいったん電話を切って、それを母に伝えた。母は当初、まだ自分は健康だしもっと具合が悪くなってからかかればいいのではないか、と思っていたようなのだが、初診が2ヶ月以上先になると伝えたところ、「そんな先になるんなら、予約しておいた方が良さそうだね」と、受診する気になってくれた。
そして、母はすぐ自分でわかばさんに電話をかけたのだが……、なんと!! 母が電話をしたら、その次の週に、初診予約を入れてもらえたのである!!
なんでも、たまたま母が電話をかける直前に、次週の初診枠に1件キャンセルが出たらしい。そのキャンセルの直後に母が電話を入れたため、本来ならば2ヶ月半も待たなければいけないのに、その枠にスポッと入ることができたのだ。
これが、本当にラッキーだった!
もし私が先に電話をした時にそのまま予約をしていたり、母がもう少し電話をかけるのを渋っていたりキャンセルされた枠の時間に用事が入っていたりしたら、初診は10月末になっていたのだ。
もし10月末まで受診ができていなかったら、いろいろジ・エンドだったと思う。私は7年前と同じパターンでうつ病を発症していただろうし、7年前と違い父と母のダブルパンチなので私も気が狂って暴力・刃傷沙汰に及んでいたかもしれない。
探せばすぐ受診できる病院もあっただろうが、少なくとも過去の経験では、そういう病院はあまり我々を助けてくれなかった。
だから、「もしあの時たまたまキャンセルが出ず、10月末の予約になっていたら……」と、今も想像するだけで身震いするほど恐ろしい。あの奇跡の滑り込み初診があったかなかったかで、うちの命運は大きく変わっていたと思う。

ちなみに、私は母を入院させた後、自分も薬をもらうためにわかばクリニックを受診したのだが、その時先生に聞いたところでは、初診の予約が溜まりすぎているため、現在は初診受付をストップしているということだった。
もはや、現時点ではどんなに待っても初診の診察は受けられないのである!
もともと患者さんの多いクリニックだったのだが、2020年、コロナ騒ぎにより心を病む人、病みかけている人がどんどん増えているらしい。もはや精神科が新規患者を受け付けられないほどに!!
実に悲しく、バカげたことだ。若者にとってはまったくただの風邪でしかないコロナ、そのコロナを必殺殺人ウィルスと思い込み過剰に怯える社会を作ってしまったために、コロナにかかってもいないのに代わりに精神を病む大人が大量に出ているのである……。
そんな情勢なので、なおさらだ。繰り返すが、とにかく「家族や自分が心を病む兆候があったら、一刻も早く精神科の予約を取らなければいけない」。
可能ならば、誰もなにも病んでいない段階で、「家から通える、評判の良い精神科」をネットで検索などしておくのが良いと思う。なにもないのにそんな面倒な作業やりたくないとは思うが、でも、なにか起こった時にはもっと面倒になるのだから。両親が変なこと言いながらウロウロするようになった、という時にネットで評判の良い精神科を探すのは、なにもない時に精神科を探すよりも遙かに圧倒的に大変なのだ。その時には自分も精神的瀕死の状態になっているのだから。
そしてまた、病気がひどくなってから評判の良い病院の予約を取っても、予約の日まで患者も、家族も持たないのだ。

それからもうひとつ。私がこの7年、ある程度意識してやっていたことがある。
それは、「特に悪いところがなくても病院に通う」。
これも、今回は7年前と違いうちの全滅を避けられた要因であると思う。
私は7年前にうつ病でわかばさんに通い始めて、しばらく抗うつ薬を飲み続けていたが、やがてうつの症状はなくなって薬もやめることができた。
本来ならばそこで通院が終了することも多いと思うが、私は、症状がなかろうが定期的にわかばさんに通い続けた。7年間ずっとだ。
別に毎週通っていたわけではなく、浜松に帰省するタイミングなので2ヶ月に1度くらいだったが、睡眠導入剤をもらったりちょっとした体の不調を相談したり(わかばさんは診療科目として内科もあるので)、あるいは本当になにもないのに「最近は元気です」ということを伝えるためだけに、コツコツ受診に行っていたのだ。なお、再診は初診と別枠になっており、空いていれば前日でも予約できるので、私が安易に受診することで初診の予約を遅らせているわけではない。

で……、そうやって定期的に通うことでどんなメリットがあったのか? というと、それは「先生との関係が構築されること」だ。
今回、わかば先生は母の状態を見てすぐKM病院への紹介状を書いてくれたが、これは「付き添いで来ている家族が、良く知っている私だから」という条件もあったと思う。多分、であるが。
時をさかのぼって、まだ私もわかばクリニックに通い始める前、7年前に母が病んで悲惨な状況だった時に、私は東京のメンタルクリニックに行って「どうやったら親を精神科の病院に入院させられるのか」について相談したことがある。
そこの先生に教えてもらったのは、「家族の対応が重要」ということだった。その患者を入院させたとして、家族がちゃんと面会に来るか、トラブルが起きた時に真摯に対応しようとする家族か、ちゃんと筋道立てた話ができる家族か、長い入院の費用が払える家族か、病院を困らせないような家族か……、患者本人の病状の他に、そういうところも病院はしっかり見るんだ、と教えてもらった(一般論であり、例外もあるだろうが)。
それはしごくもっともな話だと思う。なにしろ、精神科は入院が長い。
例えば、私がわかばさんに通っておらず、今回母の付き添いで行った時が私とわかば先生の初対面だったら?
その場合、私は先生からすれば「患者と同居しているわけでもない、素性のわからない息子」ということになる。
もしかしたら、私は細かいことで病院に文句をつけるクレーマーかもしれない。外出が禁止されたりちょっとした身体拘束があった時に「人権侵害だ!!」と騒ぐ家族かもしれない。病院に親を預けきりで、面会にも洗濯にも退院後の引き取りにも来ないネグレクト息子かもしれない。入院費も踏み倒すような犯罪者かもしれない。
もしそういう家族がいる患者の紹介状を書いてしまったら、紹介先の病院に多大な迷惑をかけることになるし、わかばクリニックも紹介先から「クレーマーを押しつけてきたクリニック」と思われてしまうだろう。それで他病院との関係が悪くなれば、わかば先生も困るし、入院が必要な他の患者さんも困ることになるのだ。
だから、もし私自身がわかばクリニックにかかっていなかったとしたら、あのタイミングで紹介状を書いてもらえることはなかったのではないか、と私は思っている。長年のつき合いがあり、私が少なくともクレーマーではないということを、知ってもらえているから躊躇なく先生は入院を勧めてくれたのではないか。
あくまで私の予想なので、そういうことは一切関係ないという可能性もあるが。しかし私は、わかばクリニックに通い続けていて良かったと心の底から思っている。私が通っていない上に母の初診予約が10月末になっていたら、うちはまた全滅していたと本気で思っている。

という点で、さすがに健康な時から精神科に通院しろとは言わないが、自分や家族になんらかの兆候が見られた時には、迷わず即座に通い始めて状況が落ち着いてもしばらくは通う、ということを私はおすすめしたい。
「精神科に通う」ということへの心理的抵抗、これをさっさとなくした方がいいのだ。うちの家族は7年前にそれがあったために、「精神科なんてそんな大げさな……」ととにかく受診が遅れに遅れ、壊滅した。
初診予約がなかなか取れないという精神科の特殊性、そして病気が悪化した時の周りへの被害の大きさという精神の病気の特殊性を考えると、「早い対応」「念には念を入れた対応」ができるかどうか、そこが時に生きるか死ぬかの命運を分けることになるのだ。

あとは、「家族が病み始めたら、家族を受診させて、そして自分も受診する」。これも大事だと思う。
精神を病んだ人と一緒に生活すると、かなりの確率で同居人も病むからだ。
家族の介護や看病を続けるには、自分が健康でいなければいけない。だから自分は自分で、「まだ大丈夫」と思っても隙を見て、機先を制して病院に行くのだ。行っておいて絶対に損はない。

精神科について、素人だが患者経験者ではある私が言えるのはこのくらいだ。
他の項目は、次の記事で。


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