見出し画像

『かがみの孤城』読書感想文

こんにちは。
今日は私の愛読書『かがみの孤城』の感想文です。出版社さまの感想文呼びかけの締め切り間近とあってご縁を感じて、今ここに感想を残したいとペンをとりました。『かがみの孤城』は学校での居場所をなくしたある中学生のお話です。文庫版を再読しました。(※これから作品を読む予定の方は、内容に触れていますので以下ご注意くださいね。) 


🏰

 『かがみの孤城』は主人公こころと共にあの日々を体験し、誰かに伝えたくなる物語だと思う。

怒涛の展開を見せた後半をなんとか咀嚼し、圧巻のフィナーレで表紙を閉じるとダイジェストで名場面が頭を駆け抜ける。そこには完走した読者だけに見える景色があった。
あーそうだったのか。じんわりと広がる余韻。写し鏡のように大人はかつての自分を思い出し、若き読者はきっと物語をより近くに感じると思う。そこに佇んでいると優しい風が寄り添い「大丈夫だよ」と頬をなでる。まるでこの“余韻から感じる気持ち”まで全部が一つの作品のような気がした。私はそれを何よりも誰かに伝えたくなった。



 たとえば読んだ人同士なら、話を共有出来るからこんなふうに話したいことがある。

「とにかく衝撃的だったよね」
「文章ではなくて登場人物がそのまま話してた」
「なんで分かるの?気持ちが全部文字になってる」
「私の好きなところはね…」
「ぐっとときた言葉が沢山あってメモした」
「喜多嶋先生のあの言葉が良かった」
「こころが現実に戻る度に成長した気がした」
「母親目線でも読んだ」
「今中学生で読める子は幸運だ」
「いろんな選択があっていいんだって思えた」
「大人はみんな昔中学生だったんだよね」
「あの頃を思い出した」
「救われた気がした。本当に読んで良かった」

 聞きたいことも沢山ある。

「ねぇ、どこか一番ぐっときた?」
「どこから何を分かった?」
「好きな登場人物は?」
「今読み返したいシーンは?」
「読む前と後で見える景色は変わった?」
「単行本派?文庫本派?」
「誰に勧めたい?」
「好きな台詞は?場面は?」


 ちなみに私は林檎が出てくる場面がお気に入り。色についての記述はないけれど、やっぱり赤色を思い浮かべた。いつの時代もどんな人数にも分けて食べることができる美味しい果物。古くは旧約聖書や白雪姫にも登場するからこの物語のイメージにもぴったり。主人公こころが大事に持参したのも、一人でナイフを正しく使って皮を剥けるのも、きちんとまっすぐに育っているような気がしてなんだか安心した。
アップルティー、クリスマスそして童話赤ずきんと合わせてその赤いカラーが物語の差し色みたいに感じて印象的だった。

画像1

 こんなにも誰かに伝えたくなる物語。こうして今この瞬間も、この作品を読んだ人の感想や想いが人から人、またその先へときっと繋がっている。

『かがみの孤城』のバトンは実際に私から中学生の娘へ、娘から担任の先生へと繋がった。先生は昨日12月のところまで読んだそうだ。

 すでに頑張っている誰かも、きっとみんなそれぞれに理由がある。世界が広くて狭いあの頃。目に見えるものが全てじゃないんだよって思えることは、きっとその先の鍵になる。作者からの手紙のようなこの本を開くことで感じた風を伝えたい。

 あの頃のわたしに、これからのあなたへ。

画像2

おわりに
 この作品を読んだ後、とにかくみんな読んで〜!と言いたくなりました。私が叫ばずとも2018年本屋大賞を受賞し発行部数100万部を越えているこの作品は、我が家で娘も読んだように、実際はその数以上の人に親しまれているはず。学校の図書室や市の図書館にもあり、今や翻訳もされてその波は海を渡りました。今回文庫版が出版され、書店での熱を再び感じています。
 誰かに勧めたくて、感想を分かち合いたい。そんな作品を読んだ気持ちが感想文になりました。


お読みいただきありがとうございました。





この記事が参加している募集

読書感想文

いただいたサポートは娘達への図書カードに使わせていただきます。