この1冊『生皮 あるセクシュアルハラスメントの光景』(井上荒野 朝日新聞出版)
井上荒野さんの代表作
第139回芥川賞を受賞した『切羽へ』をはじめとする多くの受賞作を生み出している井上さんの代表作のひとつです。
人の心の内を登場人物の言葉にして描くその書きぶりは、人間味に溢れ、とても力強く、清々しさを感じます。
『生皮』293ページを一気読みしました。
7年前の「咲歩」の性被害を中心に描く
【7年前】
動物看護師の咲歩は、小説を書いてみようとカルチャセンターの小説講座に通い始めます。
編集者を辞めて講師を務めていた月島光一は、咲歩に作家への可能性を見出し、熱心に指導をするようになります。
そのうちに、月島の講師としての情熱に性の欲望が混じり合うようになり、咲歩への性暴力へと突き進みます。
「現在・7年前・28年前」の3つの時代と登場人物たち
『生皮』は、3つの時代に様々な人物が登場する構成です。
【28年前】
女性の地位は低く、セクハラが常態化していた昭和の時代に、多くの女性たちが翻弄されます。
編集者として働く月島は、結婚を考えていた麻子から別れを告げられ、セクハラに悩む真行寺を見捨ててしまいます。
麻子や真行寺への行いを恥じながら、貶めて自分を納得させた月島は、賞賛を得る相手として若手作家の夕里を選びます。
【現在】
ある日、月島が載っている新聞記事を目にした咲歩に整髪料の匂いが甦り、胃を掴まれる感覚に襲われます。
7年前の傷がまだ生々しいことに気づき、7年前の性暴力の告発を決意をします。
7年前の性被害を告白されて戸惑いながら、咲歩に寄り添い続ける夫の俊。
小説家の夢を折られて月島の妻となり、夫の奔放さを見ぬふりしてきた果てに性加害者の妻となる夕里。
かつて月島の講座受講生で咲歩と同じ性被害に苦しんできた洋子。
性被害の告発記事を吊り広告で目にし、SNSで被害者を非難する真人。
句会の女性たちと性的な関係を持ち続ける俳句結社の主宰者林田。
音楽界を目指す若者たちを性暴力で支配する赤坂。
咲歩は告発のあと、動物病院を退職し、俊と距離を置きます。
その間、芥川賞作家の洋子が性被害を告白して、月島は地位を失います。
林田や赤坂らに対する性被害の告発が続きます。
「あれはレイプですよ」の声が起き、#MeToo 運動が広がります。
あるセクシュアルハラスメントの光景
咲歩は、告発をしたのは被害から7年後のこと。
体や心の傷が時間とともに、どのよう変わり、どのように癒えていくのかを丁寧に描いています。
性暴力に関わる人々の心の声を言葉や文字にして表現しているところも。この作品の魅力です。
また、性被害が被害者と加害者の間だけの問題でなく、多くの人々や社会全体の問題であることを強く示してくれます。
🌸さくらワーカーズオフィス🌸
『生皮 あるセクシュアルハラスメントの光景』は、🌸さくらワーカーズオフィス🌸に置いています。
🌸さくらワーカーズオフィス🌸をご利用のみなさまは、いつでも自由に手に取っていただけます。
フリースペースは、ゆっくり過ごしていただくことできます。
さくらワーカーズオフィス
代表 山口哲史
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