見出し画像

日本最後の秘境「雲ノ平」と日本最奥の秘湯「高天原温泉」2日目

21日の2日目は、いよいよ雲ノ平と、高天原温泉に向かう。

宿泊している太郎平小屋から高天原温泉までは、8時間ぐらいのロングコースを歩く。
朝ごはんを済ませて、5時半に小屋を出発する。
(因みに、山小屋の夕食は17時から、朝食は5時からというところがほとんど、山の朝は早い。)

気持ちいい天気、
この景色の向こうに行くよ。

泊まった山小屋と、雪渓。
雪の上をサクサク歩いた。

日の出。

日の出を見ながら、お花が咲く木道をぽくぽく進む。
朝から山にいる。幸せだ〜。
山小屋に泊まって山登りをすると、
山の1日のいろんな表情を見ることができる。
長〜く山を歩ける(体力が続けば)うれしい。

お花が咲く岳を見ながら、どんどん下っていくと、
ゴーー、という沢音が聞こえてきた。
太郎平小屋から雲ノ平に行くには、
一旦薬師沢まで下って、登り返すのだ。
この音は薬師沢の沢の流れ。
ここから、大小さまざまな沢を越える。
沢も大好き、楽しい。

小さな沢は靴で、ピチャピチャ
大きな沢は頑丈な橋がかかっているが、恐い。
ゆっくり、慎重にわたる。

沢の両側には、草原。
赤ずきんちゃんが出てきそうだ。

あまりに気持ちのいい景色に
ベンチでのんびり休憩する。
そちらのベンチには、若い女の子がやはり休憩をしている。

「今日はどこまで?」

登山者同士の、お決まりの挨拶。
彼女は夕べテントに泊まって、今日は憧れの雲ノ平山荘に泊まるのだそうだ。

「雲ノ平山荘」は新しく建て替えられたばかりの綺麗でかわいい人気の小屋。
私は予約が取れなかったと伝え、いつ予約を取ったのか聞くと、予約受付が始まった5月だと言う。
それじゃあ、私は予約取れないよ。

「じゃあ、雲ノ平までは、一緒ですね、よろしく。」

と挨拶して、
ゆるゆると歩き始める。
右側に、カッパが住んでいると言う「カベッケが原」を過ぎると、どんと目の前に薬師沢小屋が現れる。
明日泊まる山小屋だ。

ここで長めに休憩をして、
いよいよ急登りを登って、雲ノ平だ。

「急坂ガンバレ」とある。
さぁ、頑張りますか。すぐにハシゴ。

そして岩、岩、まだ岩〜

途中下ってきたご夫婦が、
「まだ、しばらく続くわよ、頑張って。
でも、登り切った景色はサイコーよー。」

と、言って通り過ぎて行った。

「サイコーの景色」を見る。腹をくくった。
この後写真はない。
ひたすら、足と手を使って登る。
苦しい!もう来ない!と思った。

が、急坂を登り切って木道が現れ、しばらく歩くと、わぁ〜と展望が開けた。
昨日より大きく「薬師岳」向こうには「水晶岳」

「わーわーわー、凄い、きれい!」

さっきの急坂の苦しみは、もう忘れていた。

アラスカ庭園、日本庭園
などと名前の着いた自然が作り出した庭園とお花畑を見渡しながら、穏やかに木道を登ると、
一人の女性がお花畑に座ってる。後ろから写真を撮らせてもらった。

「あまりにきれいで、ここでボーッとしちゃった。」

九州から来たと言う女性。
彼女とは今日泊まる山小屋が一緒だったのと、雲ノ平山荘でゆっくりする。という目的が一緒だったので、この後一緒に歩いた。

花の名前を教えてもらいながら、ゆるゆる歩く。

沢、池塘、花、
そして、水晶岳が水晶の様に白銀に輝いている。
槍ヶ岳もチラリと見える。
そして、昨日は見えなかった「黒部五郎岳」
100名山が、雲ノ平を囲む。
かっこいい。

そして、雲ノ平山荘に到着。

お庭の景色を眺めながら、
先程の女性と、今日この山小屋に泊まる女の子3人でテラス席でランチ。
みんなお一人様登山。
憧れの地に来れて、みんな笑顔がキラキラしてる。

「幸せだねー、贅沢だねー」

といいながら、ランチタイム。
まだ、先を歩くけど、ピール飲んじゃう!

そして、私はここに来て、もう一つ目的があった。
「黒部の山賊」伊藤正一さんの本を買うこと。
図書館で借りて読んで、この雲ノ平周辺を歩いて見たいと思ったのだ。
たぬきに騙されたり、カッパがいたり、
ちょっと恐い話もあるけど、興味深かった。
今は文庫本のみで、このサイズは絶版で、この山小屋と三俣山荘でしか、手に入らない。

家でもどっぷり黒部の山々に浸ろう。

さて、いよいよ高天原温泉に向かう。
一緒の山小屋に泊まる彼女と歩き出す。とすぐに迷子になった。
高天原温泉方面の分岐がわからない。
ウロウロしていたら、男性が携帯で位置を調べてくれる。
正しい分岐を見つけて、こじんまりした丘に登って行く。

「私は歩くのゆっくりだから、先に行ってね。」

と言う彼女に、

「じゃあ、山小屋でね。」

と手を振って、歩き出す。
更に大きくなる水晶岳、そしてここにも庭園、池塘。

それらにお別れを告げて、樹林帯を下る。
この下りがまた急なのだ。


ハシゴ、ハシゴ、木の根、ぬかるんだ道。
滑りそうになりながら、膝がジンジン痛み出すのを、何とかごまかしながら、
ランプの宿「高天原山荘」に到着した。

高天原山荘に着く少し前から、予報通り雨が降り出した。
夕食の前に、お風呂に入ろう!
山小屋でビニール傘を借りて、軽装で歩くこと20分、ザーという音と、硫黄の匂いが漂い始め、温泉に到着したのがわかった。

ちゃんと女湯もあります。

沢を渡って奥、トタンで囲って、入り口に
「ゆ女」と書かれたのれんをくぐると、青白く濁った温泉があった。意外と広い。
雨がシトシト降っているせいか、お湯はぬるめ。
じんわりあったまり、筋肉の緊張が解けて行く。

3.40分、一人露天風呂を独占して、
山小屋へ戻ったら、さっきの彼女が到着したところだった。

「お疲れ様。歩き切ったね。」
「健脚だねー」
「いやいや、早くお風呂に入りたかったから」

夕飯は5時なので、彼女は夕飯の後にお風呂に行くそうだ。
一緒に夕飯を食べながら、他のお一人様登山者と、おしゃべりした。

私も一人だけど、
一人で山を歩く人は意外と多い。女性も多い。
皆、自分で計画を立て、自分のペースで自分の足で歩いてくる。

「ここまでの道、怖かったね〜。」
「でも、生きてるって感じしない?」
「そうそう、下山するとさぁー、
どっちが現実?って思うんだよねー。」
「マトリックスの世界、仮想現実!」

とか、話が盛り上がった。
お風呂で温まり、お腹がいっぱいになった私は、無事に8時間のコースを1時間オーバーぐらいのタイムで歩き切った高揚感と、心地よい疲れで
彼女がお風呂から戻るのを待てずに眠ってしまった。

つづく。

この記事が参加している募集

夏の思い出

アウトドアをたのしむ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?