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#8 毒親の進化

毒親の標的

私には兄弟がいる。

なぜか、あの人が異常な暴言を吐くのは私だけだった。

兄とあの人はけんかになっても、あの人が折れる。そもそも異常なほどの暴言も吐かない。男だから力で敵わないと思うのだろうか。

弟のことは溺愛していたので、何をしてもかわいい、かわいい、と言っていた。弟が私と同じことをしたとしても、一切怒らない。むしろ褒める。

私は同性だからなのだろうか。
遠慮なしの言いたい放題。ちょっとでも口ごたえすると、これだから女の子は可愛くない、からの暴言となる。

でも、私だけに何かされるのはまだマシだったんだと、後になって気付く---

私への過干渉

高2の頃から私の交友関係への過干渉がひどくなった

振り返ると、夫婦仲が悪化していた時だったと思う。のちに離婚するのだが、その頃は仮面夫婦だった。

世間体が一番のあの人は、外では夫婦円満と見せかけていた。その歪みだろうか。ストレスの捌け口が私への過干渉となったと思われる

私の友達について根掘り葉掘り聞くようになった。
名前を知るだけじゃおさまらない。親は何の仕事をしているのか、どこに住んでいるのか、兄弟の学校はどこか---。
いくら仲良くても友達の家のことまで全部知らない。適当に分かる範囲で答えていた。

魔の手が伸びる

私が高校生の頃は、クラス全員の住所や電話番号が書かれたクラス名簿が配られていた。個人情報という言葉もなかった時代だ。

高校のクラス名簿を手にしたあの人は、私の友達の親に電話して接触しはじめた。もちろん私が知ならい間のことだ。

最初は、遊んだ時のお礼という建前でかけたのだろう。普通の親だったら、子供同士が仲良くしているから親同士も仲良くしよう、と思う。簡単に会う約束を取り付けていた。

会ったら最後。
友達の父親の職業や学歴、兄弟の学校、家がマイホームか賃貸か、車は何か、まで根掘り葉掘り聞き出す。

そして、知り得た情報をもとにダメだしする。大した家じゃない、うちの方が上だ、と言わんばかりに。

恐ろしいことに一人では終わらなかった。
複数の友達の親と接触していたことを後で知る。恥ずかしいどころか、拷問のようだった。大切な友人関係に土足で踏み入られ、心の中はズタズタになった。

救いだったのは、私の友達とその親たちは常識的ないい方々だった。
悪魔と一度会っただけで状況を把握してくださったのだろう。
「さくらちゃん、いつでも相談にのるからね、いつ家に来てもいいからね。」と声をかけてくださる方もいた。

さらに魔の手が伸びる

大学は家から通えない東京の大学を選んだ。
友達もできた。もちろんあの人が知る由もない人だ。大学にはクラス名簿はなかった。

脱出第一弾として家から出ることに成功した私は、気が緩んだのだろう。
離れたことで悪魔になる回数も減っていたあの人と、電話では普通の親子のように会話することも増え、つい友達の名前を口走ってしまった。

その数か月後。
友達の家で、見慣れた文字で宛名が書かれている封筒を見つけた。

それは、あの人が友達に宛てた手紙だった---

思考が停止してパニックに陥る。一体どういうことだ、何が何だか理解できない。

電話番号をNTTで調べたみたい。友達が教えてくれた。

30年近く前は、NTTに住んでいるところの地域と名前を伝えるだけで、電話番号を簡単に調べることができた。公衆電話に置いてある電話帳冊子にもみんな普通に名前と電話番号を載せていた時代だ。

名前と住んでいる駅名で友達を特定し、連絡をとり、会いに行く---

普通の家庭に育てられた友達は、驚きはするが拒否るわけがない。私は友達には毒親の話はしていなかったため、疑う余地もない。

友達の一人に、何があったのか聞いてみた。

  • いつも仲良くしてくれてありがとう。お礼にと食事に誘う

  • 家庭事情を根掘り葉掘りきく

  • 私には黙っているようにという

  • お小遣いを手渡す

  • 後日、お礼の手紙が届く

何が目的かわからない。交友関係も支配したかったのだろうか。
お金を渡せば人が思うとおりに動くと思っているのか。

恐怖、不愉快。言葉がみつからない。いつまで苦しめるんだ---

攻撃が悪化

大学生の頃、親の離婚が成立した。
ずいぶんと子供の頃から不仲だったため、ようやくといった感じだ。

離婚で一人身になったあの人は、ますます私に依存し始める---

次回へつづく

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