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【名医が直伝!】人工透析にならないため、毎日頑張っているあなたへ、本当に有効な腎臓病の食事療法

『国民のための名医ランキング』で紹介されている慢性腎臓病の食事療法で著名な吉村吾志夫先生に、インタビューしました。

名医にインタビュー 吉村吾志夫先生

昭和大学藤が丘病院腎臓内科元教授・現客員教授、横浜第一病院 院長。
横浜第一病院は、日本で最大級の腎臓病治療の施設で、日本全国だけでなく海外からも患者さんが来院している。
平成20年に三代目の昭和大学藤が丘病院腎臓内科教授に就任。慢性腎臓病の食事療法においてパイオニアの一人であった先代の出浦照國教授が提唱されていた食事療法を継承するとともに、糸球体腎炎の発症や進展に関する研究に加えて、IgA腎症に対する扁桃腺摘出+ステロイドパルス療法の有効性などの多くの臨床研究に取り組んで優れた治療成績をあげた。退官後は、従来の臨床研究の継続とともに、食事療法の啓蒙活動を全国で展開している。

画一的な食事療法は意味がない

今回のインタビューから「腎臓を守る、腎機能の低下を抑制するためには食事療法が大切。しかし、自己流では効果が薄いか、逆に体を悪くすることがある。腎臓専門医、特に食事療法をきちんと指導し、適切な検査と食事記録から食事療法の成果を確実に評価しフィードバックしてくれる医師を選ぶことが大切」ということがわかりました。

  • 【インタビューポイント】
    1.腎臓病の食事療法の重要ポイント
    2.食事療法の結果を数値化、考察する
    3.食事療法に理解のある腎臓病専門医を探そう
    4.かかりつけ医との連携

1.腎臓病の食事療法の重要ポイント

編集部:書店では、腎臓病の食事療法の本がずらっと並んでいます。
吉村先生:腎臓病の全てに食事療法の効果があるわけではありませんし、必要なわけでもありません。例えば、腎臓がんの患者さんに食事療法が効果的なわけではありません。
 その各々の病気の進行度、重症度は様々なのです。同じ病気であっても、例えば慢性糸球体腎炎の代表格であるIgA腎症も、非常に軽いものから短期間で透析療法が必要になるものまで千差万別です。当然、治療内容も異なります。
 食事療法も同様です。画一的なものでは意味がありません。各々の病気の重症度や進行度に合わせた食事が必要となります。食事は毎日の生活の中心ともいえるものです。従って、ご自分の状態に合わせた適切な食事を行わなければなりません。「まあ、ちょっとやってみようか」などという気持ちでやって効果が上がるものでもないですし、効果も上がらず負担だけ増すような状況は避けねばなりません。

編集部:腎臓病ではどのような食事療法をするのでしょうか?
吉村先生:腎臓病の食事療法には、大きく分けて二つの柱があります。一つは腎を保護し、高血圧をコントルールし、浮腫の予防や改善を目的とする食塩制限です。もう一つが、十分なエネルギー(カロリー)を保ちつつ行うタンパク質制限です。食事は毎日の生活の楽しみであり憩いの場でもあります。美味しくかつ制限量を守り栄養学的に問題ない食事を継続することは、簡単ではありません。

2.食事療法の結果を数値化、考察する

吉村先生:自己流は続かないばかりか、努力の割に効果が上がっていないことが多いばかりでなく、かえって悪化させることもあります。食事の指導をするだけでなく、大切なことは実際にその食事内容が達成できているかを評価し、患者さんにフィードバックすることです。そのためには規則的な外来通院はもちろんですが、定期的な自宅での24時間蓄尿を施行するとともに、食事記録の記載が重要です。このことから、現在行っている食事療法の効果を判定します。1カ月から数カ月に1度でいいので、これらの評価から治療を組み立てていきたいものです。したがって食事療法を継続するためには、このようなことを行っている施設への通院が望ましいといえます。コロナ禍で一時難しくなりましたが、海外からも口コミを頼りに当病院を受診に来られる方が時々いらっしゃいます。

編集部:24時間蓄尿とはすごいですね。どのような検査なのでしょうか?
吉村先生:自宅での24時間蓄尿からは多くの情報が得られます。
通常、蓄尿検査では1日(24時間)の尿を溜めます。溜める容器、そのためのプラスチックのバックは当クリニックで用意します。24時間蓄尿検査は、1日の尿量や尿タンパク量がわかるのはもちろんですが、1日に食べたタンパク質や食塩摂取量を知ることができます。またクレアチニンクリアランスという正確な腎臓の機能が計算できます。以上のことから適切な食事療法が行われているかどうかも分かります。

3.食事療法に理解のある腎臓病専門医を探そう

吉村先生:厳しい食事療法を行っている患者さんでも、効果がすごく上がる人とあまり上がらない人があります。だから、自己流で食事療法を行うのは効果が出にくいだけでなく体に有害な場合すらあります。
折角ご本人もご家族も懸命に努力しても、効果が上がっていない、かえって悪影響があるのに患者さんはその方法を継続しているというのでは腎臓病専門医として心が痛みます。
ですから、腎臓に不安がある方は、ぜひ一度腎臓病専門医、特に食事療法に理解のある病院を受診して貰いたいと思います。また、腎臓病のすべての方が、食事療法が必要なわけでもありません。無理して必要でないことをすることもありません。この点も専門医との相談が必要です。

4.かかりつけ医との連携

編集部:吉村先生のところでは、どのように治療されているのですか。
吉村先生:専門的な医療施設までは遠くて定期的には通えないという患者さんもいらっしゃるかもしれません。
そういった場合は、患者さんの腎機能の状態にもよりますが、間隔をあけて半年に1回、1年に1回、というふうに、専門の医療施設を受診して食事内容についての評価をしていただき、定期受診は近所のかかりつけ医の先生のもとに通うというのが無理なく継続可能です。専門医とかかりつけ医の連携によって、患者さんに過度のご負担をかけずに慢性腎臓病に対し有効なアプローチができます。私のところにも、そのような形で、北海道、東北から関西、九州など遠方から年に1、2回受診される患者さんが多くいらっしゃいます。

生きている実感を感じる食事を

慢性腎臓病の食事療法は一生続くものです。あなたに寄り添い励まし、共に歩んでくれる主治医との二人三脚によって、あなたの人生が有意義なものとなることを心よりお祈りしています。


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