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souzou

ガラガラガッシャーン。

急に教室の後方のドアが大きな音をたてて開いた。教室にいた全員が視線を音の方向に向けた。そこには黒いサングラスと黒い帽子を深々と被りマスクで口元を隠しているいかにも悪そうなやばい男が立っている。その男は右手にハンマーを持っていた。女子生徒の甲高い悲鳴が教室に響く。男子生徒らは驚いてしまい思考が停止しているのか口を半開きにしてただ茫然と男を見ている。男はハンマーを振り回しながら獣のような声を上げて今にも女子生徒につかみかかろうとしていた。

そんな中あたしは立ち上がる。綺麗に整列された机の間をするすると通り抜け、男の前に立つ。そして男の顔面目掛けてパンチをくらわす。男はうめき声を上げながら後ろに倒れた。

「はーい。2年3組いまから外に避難するよー。」

秋倉先生の大きな声で私の空想は簡単に途絶え、元の流れの中に帰った。階段を急ぎながら、走らずに降りて、上履きのまま外に出て校庭まで歩いていく。これから校長先生の長い話を聞かなくてはならないと思うといつもより足が重く感じた。

いつからだったか、現実で起こりそうもない空想に浸る癖がついた。

空想は偉大だ。

想像の世界でだけは、ちゃんと私をわたしらしく動かすことができる。


「かやのー、やっぱり話長かったね。」

避難訓練での校長先生の話が終わった後、すぐにあつこが話しかけてきた。あつこは同じクラスでソフトテニス部に所属している。まだ新学期が始まったばかりだというのに敦子の肌はこんがりと日に焼けていて、それだけで私とは違う種類の人間だということを強調させる。

「だね。あつこはこの後部活?」

「そうなのよ、まじだるいー。」

言葉とは裏腹にあつこの声は弾んでいて楽しそうだ。

「がんばれー」

適当に投げた言葉をあつこは真に受けたのか、親指を立ててグッドサインを作り、にかっと笑って、私から離れていった。

あつこはいいやつだ。いいやつではあるが私にはまぶしすぎる。


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