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道尾秀介著『いけない』写真でどんでん返し×ミステリー

幽霊が見てくるというその崖を見てはいけない。
その話を誰かに話してはいけない。
手帳に遺された絵の謎に気づいてはいけない。
そして、その街の平和を信じてはいけない──。
最後の一ページに挿入された写真一枚で、それまでの話がひっくり返る。
新感覚のどんでん返しミステリー。

短篇かつ話の最後にどんでん返しがあるミステリーが読みたいと思い手に取った、道尾秀介著『いけない』。

短篇集は短時間でサッと一話読めるところが好きなのですが、この本は結局2日くらいで全部読んでしまいました。
それぞれの話ごとでストーリーは一応完結しているものの、全体を読むと……というタイプの本です。
一見大団円的な感じで話が終わっていますが、よく考えると何も解決してなくない?と思わされる作品でした。

以下から少しネタバレありです。


第一話目:自動車事故の加害者の所業がいきなり酷すぎて、ここで一度読み続けるか少し悩みました。笑 
我慢して読み進めていたら見事にミスリードに引っ掛かってしまい、素直に驚かされました。
地図が苦手で地理的な部分は流し読みしていたのでもう少ししっかり読んでいればよかったです。

第二話目:子どもが酷い目に遭う話が苦手なので、珂君がいじめられる描写がつらくてまたここで一度断念しそうになりました。
最後の方は珂君に助かってほしくて祈るように読んでいましたね……。
山内君がやけに”気持ち悪い子”として描写されていたのはミスリードの一つなんでしょうか?

第三話目:意外な人が主人公になっていて軽く驚きました。
最後の写真を見て少し考えて、『絵の謎』に気がついた瞬間はゾッとしました。
金と心を搾取する新興宗教のじっとりとした嫌さが終始感じられました。

終章:最後の写真を見て、正直良かったと思ってしまいました。
復讐が成功する話は受け入れやすいんだなとつくづく感じます。
珂君と山内君が仲よさげにしているところ、珂君が邦夫に感謝を伝えられたところも良かったです。
ただ、罪もない後輩を殺した竹梨を含め、本作の”犯人”は誰もつかまってないんだよな……という、スッキリ感とモヤっと感どちらも感じられる読後感でした。


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