ラブホテルオーナーになりたいわ。【2】ラブホテルとは何か?
みんながラブホテルだと思っているところは、実はラブホテルではない!?
この前、大学の研究室で先輩と話しているとき、「渋谷の神泉の方って、美味しくておしゃれなご飯屋さんが多いけど、ラブホ街だから人を連れて行きにくいよね」とラブホテルの話題になりました。確かに、渋谷の道玄坂から円山町には60軒以上のホテルが並び、夜になるとキラキラと輝く看板や、「休憩5500宿泊9800円」の表示、狭い通りに停められた車から出てくる女の人、昼間からいちゃつくカップルなどの光景は、まさにラブホテル街のイメージと重なります。
しかし実は、渋谷に約60軒あるホテルのうち、実際に法律上もラブホテルであるところは、渋谷には約10軒しかないらしいのです。それ以外は何のホテルなのかというと、普通のビジネスホテルと同様に旅館業法で運営しているホテルなのです。だからもちろん、18歳未満の高校生カップルも条例上問題なく入ることができます。
本物のラブホテル、つまり法律上のラブホテルというのは、風営法が適用されているホテルのことです。業界では、店舗型性風俗特殊営業の4号に分類されたホテルなので、「4号」と呼ばれます。4号ホテルとは、以下のような特徴があるものだと決められています。
4号で営業しているホテルの大きなメリットの一つに、派手で扇情的な仕掛けのある内装が許されるということがあります。旅館業法で営業していたら出来ないことです。例えば、4号から旅館業法に移った某ホテルでは、浴室の壁の大きな鏡をそのままにしておけずに、わざわざ鏡の大部分にシールを張って鏡の面積を小さくしなければいけなかったそうです。
一方で4号営業には、建てる場所を制限されたり、広告を制限されたり、コロナ禍で給付金がもらえなかったり、融資を受けるのが難しかったり、警察の任意立入検査を拒否することができなかったりと不都合も大きく、今4号ホテルが新たに建てられることはありません。
つまり、4号ホテルが大幅に減った渋谷の道玄坂&円山町エリアは、厳密に言えば、「ラブホテル街」ではなく「普通のホテル街」となってしまいます。しかし、「渋谷はラブホテル街だから歩きにくい」と言った先輩に、「あそこはラブホテル街じゃなくて、普通のホテル街なんで大丈夫ですよ」と私が返したらおかしすぎます。
それでは風営法で定められたラブホテルの特徴以外にどのような要素が、あの場所をラブホテルたらしめているのでしょうか。
休憩利用、ネオン看板、コンドーム、部屋パネル、狭くて行き帰りが別のエレベーター、光るジャグジー、スケベ椅子、アダルトビデオが無料で観られるVOD、セックストイ……。
具体的な要素はたくさん挙げられますが、これらに共通するのは、風営法で定められたラブホテルの定義とあまり変わらず、カップルがセックスするための”扇情的”な仕掛けといえる気がします。
ラブホテルとはSEXのための専用ホテル、小劇場?
結局、ラブホテルとはどのようなところでしょうか。
亜美伊新先生という、ラブホテル界のウォルトディズニーと呼ばれる人物がいます。奇抜で仕掛けのある部屋をいくつも手がけた、まさに私たちがちょっと昔のレトロなラブホテルを想像したときに思いつくものを創造した人物。その亜美伊先生のラブホテルの定義が、私はとても好きです。
この理論によって、亜美伊先生からは、さまざまなラブホテル文化が生み出されました。天井鏡回転ベッドや人と会わずに会計できる自動精算機などは、まさにその一例です。さらに、亜美伊先生の手がけたラブホテルでは、「男女が愛し合う事だけを目的とする」という哲学を徹底し、「カップル以外はお断り」と言ってデリヘル利用の禁止までしていたようです。
私は、初めて亜美伊先生のラブホテルの定義を見たとき、自分の考えと一致しすぎていて目を疑いました。そして、ラブホテルを作った人の思想がちゃんとラブホテルを通して私に伝わってきていたことに気がついて感動しました。
ラブホテル界も昔と比べるとかなり変化を遂げてきています。
ホテルのロビーで人とがっつり対面して受付をしたり、全面鏡張りよりもいかがわしくない清潔な部屋が好まれたり、女子会やビジネス利用が推奨されてカップルがセックスするための部屋という建前すらも崩されてきています。そもそも、名前もラブホテルではなくレジャーホテルとビジネス上では呼ばれることが多いのです。
ラブホテルの客室をデザインするときの常套手段
しかし、昔とは変わらない点もあります。そんな私の好きなラブホテルの特徴の一つに、部屋ごとの内装が違うという点があります。これは自分でラブホテルを作るとしても絶対取り入れたいと思う点です。
ある地方ラブホテルの経営者の方はこうおっしゃっています。
ラブホテルはよく非日常を目指していると言われます。でもセックス自体はたまにしかできない特別なことというわけでもなく、「毎日の日常の裏にある非日常」であり、旅行や出張などの「日常と完全に切り離された特別という意味での非日常」ではありません。
このことを亜美伊先生は、外食産業ならぬ「外泊産業」という言葉を使って表しています。
つまり、性の非日常を食の非日常の横に並べようとしたのが亜未伊先生であり、ラブホテルは「毎日の日常のすぐ近くにある異世界・非日常」として、何度もリピートして来てもらうことを目指しているからこそ、部屋ごとのコンセプトを変えることは大切なポイントになってくるのです。
といっても、昭和後期のラブホテルと比べると、平成以降に作られた(リニューアルされた)ラブホテルは画一的なデザインになってきたようです。
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次回の記事では、現代のラブホテルビジネスのやり方から、ラブホテルのサプライチェーンについて考察していきたいと思います。
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