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小説×詩『藝術創造旋律の洪水』

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第42話≪ソラの章⑦≫【lost-one】ー天真爛漫ジャンガリアンハムスターふくの東奔西走ー

第42話≪ソラの章⑦≫【lost-one】ー天真爛漫ジャンガリアンハムスターふくの東奔西走ー

新潟の駅から吐く息をカイロがわりにしながら積雪の道路を踏みしめる。
月明かりの下の雪はミクロの万華鏡のマクロの集合体だ。僕は自然界の黄金比率とレオナルドダヴィンチが描いたスケッチ画の人体の比率を数式的にみたてたものを雪の結晶の中心から放射状に規則正しく何処までも美しいシンメトリーにプリズムの乱反射を照らす。
自分用の鍵で戸締りをしている自宅に帰宅する。
しんとしている。家族は末っ子が家から出ていっ

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第41話≪カナデの章⑩≫【piero/mascot/crown】―‘第二のカナデ’の預言と虚しき‘干し草'狂想曲ー

第41話≪カナデの章⑩≫【piero/mascot/crown】―‘第二のカナデ’の預言と虚しき‘干し草'狂想曲ー

—肉なるものは皆、草に等しい。永らえても、すべては野の花のようなもの。草は枯れ、花はしぼむ。主の風がしぼむ。               
(『イザヤ書』より)  

—この世は干し草山だ。誰でもそこから、得られるだけ引っ張る。
                     (オランダの諺より)

—ひさかたの 天(あま)の川原(かはら)に
  ぬえ鳥(どり)の うらなけましつ すべなきまでに
『(ひ

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第40話≪ハル/TEU【蝶】の章⑤≫―聖地巡礼お遍路と御伽噺、太古の歴史に隠された現代人への暗号―

第40話≪ハル/TEU【蝶】の章⑤≫―聖地巡礼お遍路と御伽噺、太古の歴史に隠された現代人への暗号―

四国八十八箇所のお遍路は弘法大師空海が曼荼羅を想像して開設した霊場修験道は頗る有名である。

回り方には順番があり、空海が建てた順番をなぞるように番号がつけられている。
四国の名前の由来は『死(ノ)国』であることをご存じである読者はどれくらいいるだろうか。これは霊場88カ所を時計回りに回ることを順打ちというが、逆の88カ寺目から一カ寺、半時計回りに巡礼することを逆打ちといい、逆打ちをすると死んだ者

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第39話≪ソラの章⑥≫【lost-one】ー地球を旅するミジンコの僕とクリオネの僕ー

第39話≪ソラの章⑥≫【lost-one】ー地球を旅するミジンコの僕とクリオネの僕ー

黒板に先生がチョークの音を鳴らしながら字を書く。
ノートと教科書を眺め、そして窓の外にいつもの如く視線を誰にも知られないようにそっと、そっとずらす。
耳から聴こえるクラスメートたちの紙に文房具を走らせる音、紙を捲(めく)る音、先生が授業を進める声…
それらの音は少しずつ少しづつフェードアウトしてゆき、ガタンガタン ガタンガタン ガタンガタンという規則正しい電気大車輪が線路を走る音の馬車の座席に僕は

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第38話≪ユウカの章③≫【caretaker】―スラブ叙事詩の卑弥呼(ヒ巫女)による盟神探湯(くかたち)―

第38話≪ユウカの章③≫【caretaker】―スラブ叙事詩の卑弥呼(ヒ巫女)による盟神探湯(くかたち)―

五島市福江港。
五島列島の南にあたり下五島のうちのひとつである。
絶対音感の持ち主はこの大自然に溶け込むカトリック教会の鐘の音の楽譜に変換できるだろうか。

下船したユウカはまっすぐ水ノ浦教会堂へとマイカーを走らせる。
助手席の窓を半分開けて外気をいれる。譲りものと引き受けた父の形見のロレックスの腕時計をみると時計の針は朝7時丁度を指している。5つの教会へのいつもの洗礼義務は予定通りに進みそうだ。

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第37話≪ソラの章⑤≫【lost-one】ー目には見えないものを軽視してはいけない大切さー

第37話≪ソラの章⑤≫【lost-one】ー目には見えないものを軽視してはいけない大切さー

ぴちゃん ぴちゃん ぴちゃん
一つの雨粒。緑の葉に滴(したた)る雫。
集める。分離したものを統(す)べる。
みずたまり。池。湖。沼。
そこに流れというものを『波』で創る。
土砂は水流で砥石(といし)のように摩耗し、地層という年輪が堆積し、僕たちは下へ下へ行くほど過去を遡ることができる。
ただ一つの偶然がある偶然と出逢う確率。
一つの清流は濁流と混ざり合い、海になる。
海は連続し、大海になり、大海原

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第36話≪カイ χの章⑦≫【scapegoate】 ―ハルという『女』、そして僕―

第36話≪カイ χの章⑦≫【scapegoate】 ―ハルという『女』、そして僕―

ハルはカイの介助の間、自身が作った脳信号の波形及び60兆個の細胞が記憶している時間細胞の波形を信号化し、それを映像化したものを分析して、その被対象の人間の過去と全ホメオスタシスの状態がわかってしまうというものを開発してしまっていた。しかし、これが軍事用に使われたり悪用されたりするのが容易に予測されたため、自分だけが使いこなせるように暗証キーと遺伝子認証、盗難やハッキングに逢った場合は自己破壊という

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第35話≪ハルの章⑥≫【HERO】ーハルの秘密の実験基地ー

第35話≪ハルの章⑥≫【HERO】ーハルの秘密の実験基地ー

親指
人差し指
中指
薬指
小指

「手の指のうちの中の3本は親と子に挟まれてるんだね。」

ラベンダーとローズセラ二ウム、カモミール、ティートゥリー、サランウッドなどをブレンドしたアロマの蒸気で吐く息のように結露で白い黒板になった窓辺に、きゅっきゅっきゅっと音を鳴らしながら額に日本の平安期の麻呂のような黒い紋章の入った8っつの尻尾の三毛猫姿のミケは柔らかい濡れながら肉球で器用に書く。
ハルの部屋

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第34話≪カナデの章⑨≫【piero/mascot/crown】―遥かなる時を超えて巡り合うツキとカナデー

第34話≪カナデの章⑨≫【piero/mascot/crown】―遥かなる時を超えて巡り合うツキとカナデー

清勾玉の一筋の光は酒舟石の『中』を指しているようだ。カナデは酒舟石を隅から隅まで手で触り、コンコンと音をきいてみたり、方角をもう一度確認したりしているうちに、カナデの掌から清勾玉が滑り落ち、正三角形の60°の分岐点になる溝の部分にカランカランと清流【青龍】の音を奏でながら、波をたてる。
ココが先ほどから落ち着かず、酒舟石をぴょこんぴょこん激しくすばしこくグルグル回ったり、カナデの服を引っ張ってちぃ

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第33話≪カナデの章⑧≫【piero/mascot/crown】―巫女(みこ)が太陽神になるその時【The Gate】ー

第33話≪カナデの章⑧≫【piero/mascot/crown】―巫女(みこ)が太陽神になるその時【The Gate】ー

清勾玉の一筋に導かれ、酒舟(船)石へ辿り着いたカナデとココ。

謎めいた酒舟(船)石に関しては様々な解釈が存在するが、カナデはこれはきっとプレアデス星団を表した水時計だと信じている。

七夕には天の川を織姫(オリヒメ)の元へ彦星(ひこぼし)は舟を漕いで渡る。だから、カナデはこの巨石を『船』ではなく『舟』と表記する。ノアの箱舟(はこぶね)も巨大な創造物のものなのになぜか『船』ではなくなぜか『舟』とい

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第32話≪カイ χの章⑥≫【scapegoate】~幻夢Ⅲ~ ―60兆個の時細胞とメビウスの大車輪―

第32話≪カイ χの章⑥≫【scapegoate】~幻夢Ⅲ~ ―60兆個の時細胞とメビウスの大車輪―

「ひとは生きているのではなく、生かされているの」

ぼく/僕のみえない傷

わたしのみえない傷

ねぇあなたならこんなときどうする?

こんなとき?

そう。こんなとき。

僕は透き通ったガラスの椅子に座って後ろの両手と両足には鎖…ではなく、全身真っ白で眼だけが獲物を射止めるような鋭いルビー色のアルビノの蛇がシュルシュルと巻きついて微動だにできない。

キミはゆっくり八分音符がハープを奏でるように

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第31話≪カナデの章⑦≫【piero/mascot/crown】―「坂」と八咫鴉の剣(やたからすのつるぎ)―

第31話≪カナデの章⑦≫【piero/mascot/crown】―「坂」と八咫鴉の剣(やたからすのつるぎ)―

『天(あま)の海(うみ)に 雲(くも)の波立ち 月(つき)の舟(ふね)
         星(ほし)の林(はやし)に 漕(こ)ぎ隠(かく)る見ゆ』
(万葉集 7・1068 人麻呂歌集)
ー天の海に 雲の波は立ち 月の舟が 星の林に 漕ぎ隠れ行くのが見える

天、海、雲、波、月、舟、星、林…

カナデはこの歌を万葉集を紐解いているとき、頭の中に真っ先に描いた画は「天地創造」と「ノアの箱舟」だった。

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第30話≪カナデの章⑥≫【piero/mascot/crown】ーキトラ古墳12獣頭人神像の覚醒と酒舟石と勾玉ー

第30話≪カナデの章⑥≫【piero/mascot/crown】ーキトラ古墳12獣頭人神像の覚醒と酒舟石と勾玉ー

『この世にそ 楽しくあらば 来(こ)む世には 虫には鳥にも 我はなりなむ』
(万葉集 3・三四八 大伴旅人)
―この世では 楽しくいられるなら
  あの世では 虫でも鳥でも私はなろう

『生(い)ける者(ひと) 遂(つひ)にも死ぬる ものにあれば
   この世にある間(ま)は 楽しくをあらな』
(万葉集 3・三四九 大伴旅人)
―命ある者は いずれは死にゆくものだから
   この世にある間は楽しく

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第29話≪カナデの章⑤≫【piero/mascot/crown】ー歴史を遡り【坂登り】飛鳥【明日香】へー

第29話≪カナデの章⑤≫【piero/mascot/crown】ー歴史を遡り【坂登り】飛鳥【明日香】へー

立派な人間ってのは相手に合わせて「目線」をフレキシブルに上下させることができる者。
常に私は相手と同じ「視線」の高さに合わせてコミュニ―ションできる人間でありたい。

上から目線、押しつけがましい、傲慢。
萎縮、怯え、謙虚さとは建て前の仮面。

上/下、優/劣、善/悪。

私たちはみなお互いの「存在」を、お互いの「オリジナリティ」を、お互いの「色彩」を、お互いの「創造」を、そしてお互いの「artw

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