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ガチャの特許について

はじめに

非常に取っつきにくい印象がある特許。そんな特許を触れる者にとって、最初の大きな山場となるのは「どんなものが特許になるのか?」ということです。

そこで今回は、ゲームのガチャシステムをテーマとして「どんなものが特許として出願されているのか?」を調べてみました。

ブログを書いたきっかけ

ブログを書いたきっかけは、あるイベントに参加したことからです。

9月上旬に知財塾の『推しゲームの特許を語ろう』というイベントに参加し、その参加者との雑談の中で「ガチャの特許や商標について調べてみるの面白そう」と話があがりました。

非常に良さそうなテーマだと感じ、イベント終了後、ガチャの特許を調べていました。そして、せっかくならこの調査結果をブログとしてアウトプットしてみるのも良いかなと思い、このブログを書き始めました。

調査方法

「どんなものがガチャの特許として出願されているのか?」をお伝えする前に、まずはどうやってガチャの特許を調べたかの調査方法について記載します。

調査方法は、J-PlatPatの特許・実用新案検索を使用しました。

JPP_検索キーワード_ガチャ_ゲーム

画像1. J-PlatPatの検索キーワード欄画面

J-PlatPatの検索キーワード欄では検索項目を選択することができます。今回は、要約/抄録に「ガチャ」AND「ゲーム」と入力して検索しました(画像1参照)。

JPP_検索結果_ガチャ_ゲーム

画像2. J-PlatPat特許検索「ガチャ」AND「ゲーム」検索結果の一覧画面

検索結果は85件ヒットしました。(2021年9月19日時点)
※ここで注意なのが、85件全てが特許として登録されているものではないことです。主に、特許を出願した後の1年6ヶ月後に公開される「特許公報」と呼ばれるものが検索結果として出力されています。

スクリーンショット 2021-09-14 22.42.12

画像3. 分類コードランキングの結果

また、検索結果を分類コード別にみると、A63F13が最も多かったです。ちなみに、A63F13は「ビデオゲーム,すなわち2次元以上の表示ができるディスプレイを用いた電子ゲーム[7,2014.01]」のことを表します。


今回は、上記の調査方法で見つけた85件のガチャの特許をもとに、どんな特許があったかを確認していきました。

どんな会社がガチャの特許を出願しているのか

今回調べたガチャの特許85件のうち、出願人別で見るとどうなるかを調べたところ、以下のような結果となりました。

<ガチャの特許85件のうち、出願人別件数の内訳>
株式会社カプコンが47件
株式会社バンダイナムコエンターテインメントが13件
・株式会社gloopsが8件
株式会社スクウェア・エニックスが7件
株式会社ドリコムが5件
・株式会社バンダイナムコゲームス(株式会社バンダイナムコゲームスは、2015年に株式会社バンダイナムコエンターテインメントに社名変更しています。)が3件
株式会社コーエーテクモゲームスが1件
株式会社セガが1件
(※上から件数が多い順に並べています)

株式会社カプコン、次いで株式会社バンダイナムコエンターテインメントが件数が多い結果となりました。株式会社カプコンといえば、ロックマンやモンスターハンターなどで知られた有名な会社ですが、これほどのガチャの特許を出願しているんですね。

どのようなガチャの特許があるか

では、本題に入ります。各社はどういった内容のガチャの特許を出願しているのでしょうか。

今回は、調査結果で調べた85件のうち、比較的特許の内容がわかりやすいと判断した4件をご紹介します。

説明を行いやすくするために、画像や図を交えて説明しました。そのため、一部表現が厳密でないところもありますがご了承下さい。

特許1

紹介する特許1つ目は、出願人が株式会社カプコンの特許です。
特許出願公開番号(特許公報に一つ一つ付与される番号のことです。以下、特開と略します。)は、2021-118950です。

まず、この特開のリンクの要約部分を見てみましょう。

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課題には、”ゲーム媒体が重複して当選することによってユーザにとって有利な結果をもたらすガチャ”と記載されています。
そして、解決手段に書かれている文章は非常に長いですが(特徴として、特許公報に記載される文章は一文が長いものがよくあります)、ここは明細書に添付されている図を見ることでより理解することができました。

画像7

画像4. 特開2021-118950の図4として添付されているもの

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画像5. 特開2021-118950の図5として添付されているもの

どうやら、「何回かガチャを回したときに、ガチャによって手に入るキャラクタが重複してしまったときにどう工夫するか」といった話のようです。

画像4では、重複したキャラクタを別のキャラクタへ変更しています。
また、画像5では、N回目のガチャで重複したときに応じてガチャリストの各キャラクタの当選確率を異なる値に設定していることがわかります。このことが本発明のポイントとなっているようです。

特許2

紹介する特許2つ目も、出願人が株式会社カプコンのものです。
特開2020-130876です。まず、特開のリンクの要約部分を見てみましょう。

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課題には、”ユーザが媒体抽選に飽きてしまうことを抑制することのできるガチャ”と記載されていますね。この特許がユーザにガチャに飽きさせないような工夫を施した発明であることがわかります。
そして解決手段については、一枚の画像にまとめてみました

カプコン2020-130876

画像6. 特開2020-130876を自分用にまとめたメモ

特許を一枚の画像にまとめるのは難しいですね。
この発明には、発明のポイントとなる要素がいくつかあるようです。

(要素)
・何らかのガチャイベントが開催中
・抽選リスト(ガチャによって各キャラクターが当選する確率のリスト)が複数種類用意されている
・ユーザやタイミングによって抽選リストが変化する など

また、特開2020-130876の詳細な説明部分の【0005】を見ると従来のガチャと本発明の相違点が記載されていました。

【0005】
しかしながら、従来のガチャでは、例えばイベントが開始されてから終了するまで、各キャラクタの当選確率は固定されている。すなわち、ユーザがガチャを実行するタイミングによってキャラクタの当選確率が変わることはない。そのため、ユーザからすれば、どのタイミングでガチャを要求すれば良い結果が得られるかということを予想する楽しみがなかった。

特開2020-130876の詳細な説明より引用)

つまり、本発明は「イベント期間中に、ガチャで当選するキャラクタの当選確率が変化すること」が一つのポイントになっているようです。

特許3

紹介する特許3つ目は、出願人が株式会社バンダイナムコエンターテインメントのものです。
特開2018-051219です。まず、特開のリンクの要約部分を見てみましょう。

スクリーンショット 2021-09-24 17.05.45

また、要約に記載されている選択図の図7も一緒にみていきましょう。

スクリーンショット 2021-09-24 17.06.41

画像7. 特開2018-051219の図7として添付されているもの

つまり、本発明のポイントは、「課金イベントにおける課金履歴の課金状況に応じて、ガチャのアイテムの構成が変化すること」のようです。

なお、課金イベント・課金履歴の定義については、特開2018-051219の詳細な説明部分に記載がありますので、興味がある方はぜひ読んでみてください。

特許4

最後に紹介する特許は、出願人が株式会社コーエーテクモゲームスの特許です。
特開2018-015230です。まず、特開のリンクの要約部分を見てみましょう。

スクリーンショット 2021-09-24 17.24.52

明確な発明ポイントが要約に記載されていますね。
本発明のポイントは、「ガチャのシステムに、緯度や経度の位置情報に加えて、高度情報を利用すること」です。

確かに、位置情報を利用したスマホゲームは世の中に多数ありますが、高度の情報を利用して、しかもガチャのシステムに利用するものは当業者でも容易に想像つかないアイデアといえそうです。

おわりに

今回は、ゲームのガチャの特許について調べました。

調査方法で見つけたガチャの特許85件を(ざっとですが)全て読み、その中から内容が比較的わかりやすいものを抽出し、そして、ブログにアウトプットするのは想像以上に大変なことでした。
しかし、色々な特許を知ることができ、非常に良い機会となりました。

最後に、このブログを読んだ人が「こういうものが特許として出願されているのか」「ガチャの特許にはこういうものがあるのか」といった参考に少しでもなれば幸いです。