見出し画像

「シャイニング・ワイルドフラワー~千だって~」最終話 空気を吸うように愛を吸う

空気を吸うように愛を吸う

今、私は肉体を手放し、ひと休みしているの。
これまで生きてきた人生を走馬灯のように振り返り、あなたにお話ししたの。
あなたにお話ししながら、私の魂は色が抜け落ちるように少しずつ薄く軽くなっていく。
魂は思いがたくさん詰まったままだと、重くて上に上がれない。
現世であった様々な思いを手放し軽く、軽やかになり、風船のようにすうっと、極楽浄土に行く準備をしているの。

こうやってあなたに私の人生を振り返し話して、わかったことがあったわ。
いえ、気づいたの。
秀くんと忠刻ダーリンと結婚をし、その時は確かに彼らを愛している、と思っていた。確かにその時は、彼らを愛していたし、幸せだった。

だけどそれは、彼らが私を幸せにするために愛してくれるから、そのお返しに愛してあげただけ、と気づいたの。
子どもも可愛かったけど、目の前を通り過ぎていく蜃気楼のような存在だった。

私は傲慢でも何でもなく、愛されて当然、と思える人間だった。
愛は無条件で与えられるもの。それを当然だと思い、空気を吸うように愛を吸い込んでいた女だった。

結局のところ、私が心底本当に愛したのは私自身だけだったかもしれないわ。
だけどそれって、悪いことかしら?
愛は周りが勝手に与えてくれる。空気のように当たり前にそこら中にある。
空気を吸うように愛を吸う。

わたしはただ、愛を空気のように当然のように吸い込み、素直に受け取った
お金と同じようにね。

私があなたに伝えたいのは

「しのごの言わずに、もっと受け取ってみたら?」

ということよ。

「愛されていない」だの「お金がない」だの不満を言わずに、与えられたものを先に受け取ってみたらいかが?

「自分が望むのは、こんな愛じゃない」
「自分で働いて稼ぐお金が少ないと、自分の価値は低い」
とか、変な自分ルールに囚われた感情を手放してみたら?

人に何かしてもらうとすぐお返ししなくちゃ、と思っていない?
わちゃわちゃになって大変でも、誰かに頼らず甘えず、全部自分でやらないといけない、と思っていない?

気持ちを受け取ること
愛情を受け取ること
それが苦手な人が多いわよね。

感謝して受け取ればいいの。空気のように愛を吸うの。
そしてその感謝は、また別の誰かに送ればいいの。
感謝や愛を受け取れないと、人に感謝や愛を贈ることはむつかしいわ。

あなたは無条件で愛されていいし、助けてもらってもいい。

私はずっとそうやって受け取っていたから、その愛や感謝を循環でき、多くの女性のために役立たせることができた。
まぁ、本当に役に立っているかどうかわからないけれど、やりたかったことを自分にさせてみたの。

だけど私がこう言うと、あなたはすぐこう切り返すわよね?

「それは、あなたが姫でセレブだったからできたんじゃないの?」
と。
このセリフ、これまでも多くの人に言われたわ。
だけどそれ、ただ単に「ヤキモチ、ジェラシーよね?」
認めなさい。
あなたの本音。

ええ、私が生まれ持った出自は、ありがたくも重かったわ。
その重みに負けたくなかったから、運命を操ったの。
たくさんの人が助けてくれた。
それは、私がその助けを受け取ったからよ。助けてもらうに値する人間だ、と自分で決めたからよ。だから、千だって出来たの。
千だってできたのだから、あなたにもできるの。

言い訳などしないで!
自分から逃げないで!!

あなたはあなたのフィールドで、しっかり生きていけばいいの。
人と比べるなんて、ナンセンスよ!

私は自分が大すきだったわ。
自分を愛していた。
愛情をジャブジャブ自分に注ぎ、生まれた時からある空気と同じように吸い込み、吐いていた。

女はね、女に生まれてきた時点で、すばらしいの。
女王なの。
姫なの。
男にかしずいてもらえば、いいの。
尽くそうとするから、変なことになるのよ。

あなたが自分に素直になればなるほど、男という可愛い生き物は、あなたから離れて行かないわ。
もっと女として、自分に自信を持ちなさい!

あら、もうこんな時間。
私、もう行かなくては・・・・・

ほら、私を出迎えるのにたくさんの人達がいるわ。
パパ、ママ、おじいちゃま、家光、秀くん、淀ママ、寧々ママ、忠刻ダーリン、幸千代、そして刑部卿局。みなまばゆい光に包まれ、笑顔だわ。

刑部卿局が一歩前に出て頭を下げ、恭しく言った。
「千姫様、お待ちしておりました」

みんな、私に手を差し伸べていた。
さぁ、誰の手を取ろうかしら?
みな、私の手を取りたがっているの。
それがおかしくて、クスっと笑った。
私が笑顔になると、みんなの笑顔はさらに広がった。

その時、私の右手を秀くんが、左手を忠刻ダーリンがやさしく取ってくれた。私は輝くばかりに美しかった二十歳のころの私の姿になっていた。
「さぁ、一緒に参ろうぞ」

両手にナイトを従えた私の前を、刑部卿局がしずしずと先導していく。
やがて蜘蛛の糸のように細い糸がいくつも上から垂れ下がっている虹色に輝くカーテンが見えた。
それは、あの世とこの世を分けるカーテン。
このカーテンをくぐると、これまでの出来事は一切がっさいすべて忘れるの。
ここから先は、もう何もかも手放していくの。
思いも、言葉も、名前もすべて。

さよなら、女達。
慎み深くなど、生きるのを止めなさい。
謙虚になど、自分の気持ちを偽るすべは捨てなさい。
さようなら。
ごきげんよう。

私はゆっくり光り輝くカーテンに足を踏み入れた。

ありがとう。
いつかまた、どこかでお会いしましょう。

終わり


-------------------------------------

愛し愛され輝いて生きるガイドブック

あなたは無条件で、愛を受け取れますか?

受け取れないとしたら、なぜだと思いますか?

受け取ったらどうなるのでしょう?

あなたは、あなた自身に胸を張れますか?

胸を張って、無条件で愛を受け取って下さい。

空気を吸うように愛を吸いこみましょう。

これが、千姫があなたに一番伝えたかったことです。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?