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カップルで行くと別れるらしいので、彼女と「花束みたいな恋をした」を観に行った【感想】

※この記事の後半部分はネタバレを含みます。まだ観てない方は途中までお読み下さい

「この映画、カップルで行くと別れちゃうんだって」

彼女が楽しそうに、予告動画を見せてきた。

菅田将暉,有村架純主演の恋愛ストーリーで、脚本は坂元裕二、監督は土井裕泰。

オダギリジョーも出てんのかぁー、へーとか自分でも検索して、私は言った。「じゃあ、観に行こうよ」

Twitterの与太話に挑戦状を叩きつけるかのように。まあ実際大丈夫っしょ。と思ってたので。

彼女が映画に合わせたコーデをしたいと言ったので、Instagramに載っていたこれを忠実に再現することになった。

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絶妙にダサい。ただ似たような服は一応持ってたので、しっかりダサ菅田将暉コーデに合わせる事にした。靴は履いてない古いヤツを選んだのだが、作中では2人ともコンバースのジャックパーセルを履いていることが観てわかった。それ持ってたのに...

しかも、物語はカップルが21歳の時に出会ってからの5年間を描いていたものだったんで、ちゃんと徐々に服のセンスが良くなっていくのだった。画像はまだ社会人になる前のやつだ。なんやねん。

まあでも、昔は自分も変なファッションセンスだったなぁと思い出しながら観れたので、良かった。服を合わせてなかったらそれに気付かなかったかもしれない。

池袋のTOHOシネマズでポップコーンとポテトを買って、いい感じの席に座った。ポテトなんだけど、のり塩味はあんまおすすめできない。なんか、海苔の味が佃煮っぽい濃さだから。ポテチを想像していると裏切られる事間違い無し。

前置きが長くなったけど、映画を観た。結論、泣いた。

普段泣くことがない上、ここ数年泣いてなかったので、自分でもびっくりした。ちょっとうるっとくる事はあっても、今回みたいにしっかり涙が出たのはいつ以来だろうか。

ようはカップルの出会いから別れを2時間掛けて見せられるわけだから、映画の細かい作り込みも相まってしっかりと感情移入してしまった。

なにより、菅田将暉と有村架純の演技がめちゃくちゃ上手いと思った!偉そうに言うけど、演技感がない。役柄もあるけど、「なんかそんな感じの映画内の人」っていうのがなかった。2人は実在していて、今もどこかで暮らしているんじゃないかって思える位には自然だった。

そして前述の通り、映画の作り込みが良かった。2015-2019の時代の動きに合わせてちゃんと流行や当時のニュースなどを盛り込んでいたので、よりリアルに引き込まれた。2人が好きな本や音楽も実在するもので、特に小説好きにはたまらなかったんじゃないだろうか。

あと「カップルで観に行くと別れる」問題についてだけど、それは「コロナ直後に潰れた店」みたいなものだと思った。元々ガタが来てたのが、いいきっかけになったというか。真剣に交際してお互い分かり合っている仲ならむしろ将来のことについて少し話すいい機会になると思う。別れそうで、うだうだ付き合ってるカップルにはちょうどいい映画かもしれない。笑

ここからはネタバレになるので、観に行ってない方は是非観てください!普段あんま邦画を見ない私からの、最大級のおすすめです。




ここからネタバレ

マーフィーの法則

作中で絹が言っていた「パンを床に落とした時、必ずバターを塗った方が下になる」ってやつ。日常のあるあるを言語化した、マーフィーの法則っていう有名なユーモアだ。何となく知っていたので、面白かった。きっと絹も何かしらの作品を読んで、影響を受けたんだろうなーと推測できる。

フリーターの金銭感覚

付き合って二人暮らしをし始めてから、質素な部分とそうでない部分の差がリアルでよかった。クリスマスはカットケーキになってたけど、ビールはアサヒだったり。調布駅から徒歩30分の立地って、もはや別の駅なんじゃないのか?家賃は安いのに、インテリアをしっかり揃えたり猫を飼える余裕があるのも2人のお金を掛ける部分が一致してたんだなぁーって。あと、麦がちゃっかり実家から仕送り5万円貰ってたのウケたな。

コンバースから革靴に

学生,フリーター時代はおそろいのコンバースだったのが、社会人になって別々の革靴になっていた。単に時代の流れとして見ることもできるけど、個性を奪われた、みたいな表現でもあるのかな?ただコンバースといえばジャックパーセル、アディダスといえばスタンスミス、ナイキといえばエアフォースワン、ヴァンズならオールドスクールみたいな所はあるので、元々そこまでの個性が無いっていうのもあるかな。2人ともあんま中身無いんだなっていう演出が沢山あったし、そのうちの一つなのかも知れない。

流されやすい20代男女

2人は周りに流されやすく、主体性が無い性格である事が演出されている。麦の人生のピークがGoogle mapに載った事や、絹が実家で少し浮いている所を見ると成功体験が少なく中身が無いんだろうなと推測できる。多くの人がそうで、その中で自分をどう表現していくかみたいな事が重要だと思うけど、2人はそれが難しかったんだろうな。

絹はせっかくのお笑いライブを、しょーもない男との焼肉で棒に振った。麦もメモかリマインダーくらい付けとけよ、ていう。ただこれは天竺鼠というサブカルが好きな自分が好きっていうだけで、実際は本気で天竺鼠のファンじゃなかったのかもしれない。考えすぎかな。

そして2人はお互い行きたくもないコンパに参加して、終電を逃して出会う。なんとなく誘われたからなんとなく参加したんだろうな。めっちゃそういうの分かるけどね...
その後の押井守が出てきた時の麦の反応が、めっちゃオタクって感じでキモ可愛かった。「神ですよ、犬と立ち食いそばが好きなんです」答え言えばいいのに。笑
サブカル好きがそうでない人たちをバカにする感じもリアルだったなぁ。彼らは彼らで他に熱中する事があるというのに。

そして2人は大卒にも関わらずフリーターになり、その後やっぱり就職する。趣味に没頭してる時間が長すぎて、それをアウトプットしてこなかったせいで面接で具体的に何をしてきたかが言えないのだろう。いや、あんま批判したいとかじゃないんだけど、大学出てるのにもったいないなって。

麦が1カット1000円を妥協してしまったのも、見てて胸が痛かった。「いらすとやで充分なので」なにが充分だ。マジであの絵描いてたなら、才能の塊なのにね。周りもそれをもっと応援してあげるべきだったのかな。

そして就職後、麦は絵に描いたような「仕事好きマン」になってしまう。本屋で前田裕二を手に取った麦を切なそうに見る絹が、なかなか皮肉効いてて面白かった。っていうか実名で出しちゃうんだ笑 意識高い系って言葉は、麦をお手本にしている。

他にも色々あるけど、2人の性格に関してはこれで最後にする。別れた後ばったり会った時、「イヤホンは片耳ずつで聴いたら違う音楽になる」とそれぞれのパートナーにウンチクを垂れていた。他人の意見を自分の意見として喋ってしまうのは、人間あるあるだよな。それもこれも、流されやすい2人がファミレスで知らんオッサンのクソリプを延々聞いてたせいで起きた奇跡だった。とはいえそれが愛おしいし、人間らしい2人の物語だ。

就職前と就職後の意見の対比

細かいセリフは忘れちゃったけど、就活中圧迫面接を受けた絹に対して麦が「やりたいことだけやればいいんだよ」と言っていたのに、就職後の喧嘩では絹が「やりたいことだけしたい」と言ったのに対し「やりたくないこともやんなきゃいけないんだよ」と麦。社会に揉まれて、現実を突きつけられてしまったが故に出てきた言葉だろうな。パズドラしか趣味がなくなってしまった、ブラック企業の洗脳のせいでもある。かなしい。

麦という男

知り合いが多く、彼女一筋、イラストレーターになれる実力を持ち、3時間のガスタンク映画を1人で編集出来る。集中力が高く、すぐに社会に順応し、結婚も含めた将来像を描いている。。。しかもイケメン。

スペック高すぎるんだよなぁ。

社会人になって仕事第一マンになってしまう姿とか、喧嘩してる時自分の非を認めて急に冷めて謝る感じとか、もうどうしようもないのに別れ際にもがいてしまう感じとか...とても共感できた。

別れた後も、麦のイヤホンだけは変わってないあたり、未練というか、思い出として尊いものになっているんだろう。男の恋愛は別ファイルに保存、ってやつ?絹が言っていた「花の名前を女の子に聞くと、別れた後その花を見るたびに思い出してしまう」というセリフ。花の名前は結局教えてもらわなかったけど、小説の名前とかイヤホンの事とか、いろんな出来事が花みたいに記憶に残っている。。まさに花束みたいな恋、って事。。。

絹という女

東京都出身、一戸建て、広告代理店で働く両親という恵まれた環境で育った絹。就職後もあまり生活が変わらない分、モラトリアムな人間になってしまっている女性。そして人脈が広いわけでもないが、西麻布のコンパに呼ばれ、コリドー街でもモテるくらいの美人。

受付の仕事をやっているときに、「いつも単独行動だよね〜」と言われ気を遣って夜の街に出掛ける描写が、女性あるあるという感じでリアルだった。(と一緒に行った彼女が言っていた)職場でハブられるのはきつい。

あと、麦が使わなくなったイラストの道具を見つめるところが切なかった。変わっちゃったなぁ、っていう。

麦とセックスレスになっていた時、転職先の社長と流れで浮気してしまうのも、「こういうコミュニケーションは頻繁にしたい方です」というセリフの答えだと思う。パートナーは放置してはいけない。花には水をあげないとね。

そして、エンドロール

エンドロールは麦が描いていた絵が流れる。出会いから順に思い出のイラストが出てくるのだが、3年目を機に、イラストが終わる。あくまで楽しかった記憶だけが、描かれているのが切なかった。筆を置いてしまったから...

まとめ

お互いを思いやり、話し合う事が出来てたら。別れず、永遠のパートナーになれていたかもしれない。一度崩れ始めた関係を建て直すのは、なかなか難しい事だろう。大学生で付き合って、同棲して、就職して、転職して...色んなライフイベントが起こりすぎているが故に、余裕がなくなってしまうのはよくある事だ。ましてや麦は上京してる分手探りで、しかも責任があったんだろう。2人とも成長して、これからいい人生を歩めるといいな。

一緒に見に行った彼女とは、帰り道コンビニエンスストアで350ml缶ビール買って夜の散歩した。ベタすぎて笑っちゃった。ミーハーって知ってる?映画を見てすぐに影響される人達のことだよ。

というわけで、超面白かったです。よければスキとフォローしてください!ではまた。


まだサポートしてもらえる様な記事を書いてないので、成長したらサポートよろしくお願いします