マガジンのカバー画像

カーテンコールまでがフィクション

14
全部作り話です
運営しているクリエイター

#月

月に行く

月に行く

20XX年、大いに発展した人工知能研究はついに技術的特異点――シンギュラリティを迎えることとなった。そして、その瞬間から人工知能は人類に代わって地球運営を開始した。転換は人類がそれまで予想していたよりも遥かに自然に、小学生が中学生になるくらい当たり前のこととして行われた。また結果から言えば、AIはそれを受け入られなかった一部の人類を抹消したりはしなかった。彼らは派手な動きを見せずに、解決しないとさ

もっとみる
やっぱり、かぐや姫なんて知らない

やっぱり、かぐや姫なんて知らない

あたしは月を飼っていて、その上花粉症なのです。だから春は好きだけど、春が大嫌い。ね、分かるよね、そういう話をはじめます。



「昨日の話をしようか。ねえ聞きたいでしょ?」
ピンク色の子ども部屋で、もう子どもって言うには大きくなってしまったあたしと月が並んで座っている。あたしは勉強机の椅子の上にあぐらをかいていて、月は座るといっても足がないのでベッドの上に転がってる。
「朝八時ぴったりに学校の門

もっとみる
かぐや姫なんて知らない

かぐや姫なんて知らない

月が落ちてきたの。嘘だと思うかもしれないけど、これは本当の話。あたしはその月をナイスキャッチで受け止めて、ぎゅっと抱きしめたらほんのりと温かかったの。
今、その月はあたしのお部屋のベッドの上にいる。ピンク色のシーツ——これはママが選んだだけであたしの趣味ではない——の上に、真っ白な枕のお隣に、大人しく収まっている。昼間はスヤスヤと眠って、夜はピカピカと光る。飼っていた黒いウサギが落ちてくる拍子に逃

もっとみる