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30歳で3000万円を持つ人だけがみえる世界

割引あり

はじめに


 
2010年代の初頭、リーマンショックの余波が残る東京の街は、今と比べてずっと静かでした。学生だった私は、少し年季の入った西新宿の高層ビルに囲まれた空間を所在なく歩いていました。大学生の最大の課題である就職活動を目前に控えており、頭はそのことでいっぱいでした。あてもなく歩き続けていると、都庁周辺のとある公園で足がとまりました。そこは新宿中央公園でした。ブルーシートに包まれた人々が孤独や寒さと闘っていました。ふと空を見上げるとパークハイアット東京、ヒルトン東京など名だたる超高級ホテルがそびえたっていました。エントランスは暖色に光っており、幸せそうな顔をした貴婦人や無表情のビジネスマンが行き来していました。最上階で煌めくラウンジではいったい何が行われているのか想像もつきませんでした。
歩道橋の下では、生きているかわからない静けさで壮年の男性の方が横たわっていました。私は彼のいる段ボールハウスに近づき、しばらくその場から動くことが出来ませんでした。 アベノミクスの恩恵で景気が上向き、今ほどではないですが、人手不足もあいまって就職活動の展望も悪くありません。しかし、働く未来の自分の姿がどうしても想像できなかったのです。就職してもゴールはありません。毎日通勤するだけでも大変なのに、それに加えて出世争い社内政治など常に自己研鑽と成長が求められ、民間企業であればリストラもありえます。公務員として働き、深夜まで日夜残業をしていた父親の辛そうな顔がふと浮かんできました。無意識に、父親の顔と私の未来の姿を彼に重ねてしまっていました。
大学生活はよく学び、よくバイトし、よく遊ぶことが出来ていて満足していました。しかし、下宿生活のため、仕送りを加えても1日1000円以内で生活費を賄わなければならず、実家が都内の友人に比べて余裕はありませんでした。お金のない生活でも楽しむことができるのは若者の特権です。それでも東京の街の良さを知ることができませんでした。友人の多くは東京に住み続けることを望んでいます。東京はお金持ちになったらその良さがわかるのか。そしてこの息苦しい東京で一生暮らさなければならないのか。そんな不安や悩みが私にはありました。
私は段ボールハウスに更に近づきました。彼は息をしており、一安心しました。それでもしばらく動くことができませんでした。しばらくたってから、私はようやく顔をあげ、将来への不安とほんの僅かな希望を胸に抱いた重い足取りで新宿駅に向かう帰路につきました。
東京という街は、お金持ちの夢と希望が詰まった都市です。地方からの特産品を集め、質が良く鮮度が良い美味しい食材を相応の値段で食べられます。きらびやかな繁華街やおしゃれなエリアでは、コーヒー一杯にも数千円を惜しまない人々が自由気ままに過ごしています。しかし、その裏で大勢の人たちは厳しい現実と戦っています。経済的な制約の中で、最小限の生活費で賢く暮らすことが求められています。
当時、私は予備校等のバイトで時給3000円近くを貰っていましたが、社会経験のためにマクドナルドなどの飲食店をかけもちしながら最低賃金近くで働いていました。ネットの口コミで言われるほどの大変さや理不尽さは感じませんでしたが、時間を切り売りした単調なアルバイトになってしまいました。年の近い友人や彼女ができるかと淡い期待もありましたが、フリーターをしている3歳年上の男のバイトリーダーが可愛がってくれるぐらいで終わってしました。
これらの経験を通して人生設計の大切さを学びました。やみくもに行動するだけでは徒労に終わることがわかったのです。人生は効率的に攻略することができると気づいたのもこのときでした。人生設計と目標設定の大切さを学んだのです。それからというもの、私は一日中大学の図書館に籠り、株式投資から人生の教訓や恋愛のハウツー本に至るまで1000冊以上を読みました。
その結果、不安定だった20代を乗り越え、30歳にして3000万円の資産を実現することができました。ただし、やみくもに貯金をして20代の貴重な時間を無駄にしたわけではありません。最愛の人と結婚をすることもできました。20代を適度に遊びや失敗を繰り返しながら過ごし、お金や経験や知識という人生の財産を築くことができました。それらは私の人生に彩りを持たせ、貴重な資産となっています。私もまだまだ勉強中の身であり、30代の若者が偉そうに説法をするは大変恐縮ではありますが、本書で私が20代で得た知見を紹介し、みなさまの人生設計の参考に少しでもなれれば甚幸です。

内容
はじめに 1
第1章 30000万円の資産を築く人生設計 4
30歳で3000万円を持つ人だけがみえる世界 4
55歳で1億円持っているのと同じ 6
高配当が高リスクとは限らない 7
30歳で3000万円の資産を構築するためには 7
私の資産運用 9
第2章 20代の過ごし方 11
幸福の土台となる5つの資本について考えよう 11
20代はひたすら人的資本を高めよう 12
金融資本を考えるのは100万円貯めてから 13
評判資本を貯めよう 15
健康資本を一番大切にしよう 17
20代はネガティブに計画し、30代はポジティブに行動しよう 17
誰もやらない方法で収入を増やそう 19
不動産は500万円貯めてから考えよう 21
第3章 100万円を超えたら金融資本を増やそう 23
100万円貯めるまでは金融資本を考えるのはコスパが悪い 23
外国債券もポートフォリオに組み込もう 23
一生使える知識を早めに身に着けよう 24
投資のための会社法や宅建法を勉強しよう 25
第4章 素敵な人生経験をつもう 26
30代で5つの資本を活かして増やそう 26
つらいことはなるべく早く経験しよう 27
やらないことを決めよう 28
借金をして老後を迎えても良い 28
第5章 人生のゴールを決めよう 29
東京という国 29
自分では何もつくれない 30
何で覚えられたいのかを考えよう 31
社会に還元しよう 32
おわりに 33
引用文献 34

第1章 30000万円の資産を築く人生設計

30歳で3000万円を持つ人だけがみえる世界

"FIRE" という言葉が人口に膾炙する時代となり、若者たちはFIREを夢見て、若いうちに資産を構築しようとしています。20代の私はFIREという概念を知らなかったため、そういったことに興味はありませんでした。また、FIREの概念を知った現在でも興味を持てずにいます。なぜなら、もったいないからです。

物価が諸外国に比べて安く、賃金が高い日本で、消費を行うことは非常にコスパがよく、合理的な選択といえます。現在の日本でお金を稼がずに隠居生活を始めるのはもったいないことだと思います。税金は安くありませんが、日本は老後の社会保障といった面で恵まれています。老後にいくらかかるのかを調べて少し考えれば、若いうちのお金の使い方は非常に広がってきて、人並みに働けばとても幸せな生活を送ることができるのです。お金を貯める目的がFIREというだけなら、人生は懲役刑と同じになってしまいます。お金を使わず、労働するだけでは娯楽のない堀の中で生きているのと同然です。

皆さんの人生の目的は何でしょうか。人生で一番大切なことは人の数だけあると思います。しかし、世界一のお金持ちであるウォーレン・バフェットは子育てが人生で一番の経験だったと述べたことから考えると、やはり、子育ては子供を育てる以上の価値があると思います。そもそも、30歳になれば自分のためにだけ生きるということに飽きてしまいます。普通の人生を歩めば、自分のためだけに仕事をすることに飽きるのです。自分のためだけではない何かの段階に入ることこそが、この年齢では重要になってきます。事情があって子供ができない方や子育ての必要のない方と考える方もいらっしゃると思いますが、余裕が生まれると40代でやがて社会貢献か名誉欲に走っていきます。お金は二の次になっていくのです。お金を配る社長の方はその代表的な例だと言えます。

野村総研の調査 によれば、純金融資産保有額で3000万円あればアッパーマスとして分類されます。アッパーマス層以上は上位22パーセントに位置し、おおよそ4世帯に1世帯しかありません。逆もいえば、4世帯に1世帯もアッパーマスが存在するのです。
資産には様々な種類があります。総資産であれば他人から借り入れた負債に相当する部分も資産に入ります。総資産3000万円であれば住宅をローンで購入すれば簡単に達成できます。総資産が5000万円となるのも難しくありません。一方、純資産であれば資産から負債を引く必要があり、住宅ローンは純資産に参入されません。売買目的の株式の評価損益なども参入されるため基本的には時価になります。


図1 純金融資産保有額の階層別にみた保有資産規模と世帯数

それでは、30歳で3000万円の資産を持つメリットは何でしょうか。それは選択肢が無数に広がるということです。利回り5%で年間150万円を一生得られるのです。単純計算で毎月12・5万円の不労所得を得ることができるのです。10万円の家賃でも毎月2・5万円の手残りがあります。月10万円の家賃であれば、1LⅮKを東京の郊外で借りられます。これにより、家賃と生活費の一部を賄うことができるようになります。また、年間200万円の支出があるとしても、仕事で無収入でも配当と利子で35年ぐらいは資産で生活できることを考えると、この安心感は何よりも大きいです。つまり、現在の年金受給開始年齢の65歳までは細々と生きられるのです。実家に住んで住居費を削れば更に豊かに暮らせます。また、数年間であれば海外留学といった様々な別の道も考えられます。転職するにしても、思い切った挑戦をすることも可能です。

それ以上に何より、お金を使っても問題ないというお金からの後押しが大きいです。20代の頃はお金を使うことに罪悪感や恐怖心がありました。3000万円の資産がある今でも、お金を使う恐怖心や罪悪感は少し残っていますが、20代の頃に比べれば大きく減りました。金利や配当だけで、時間が経過するだけで自然とお金が増えていきます。お金を使うことが楽しくなりました。

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